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[アポ1人目] 建築士志望のSYくん


初アポまでの経緯

マッチングアプリを利用し始めてから数日後、同い年のSYくんとマッチングした。

SYくんは建築関係の仕事をしており、資格を取るために仕事の傍らビジネススクールに通う努力家な人だ。

特に趣味が合うわけではなかったが、同い年ということもあってか、不思議とメッセージの交換をするのが楽しかった。

友達以外の男性とこうして連絡を取り合うこと自体かなり久しぶりだったため、彼のちょっとしたジャブにもいちいち心を躍らせていた。

SYくんの提案でLINEに切り替えてからは、より頻繁に連絡をとるようになった。順調に距離を縮めている感覚があり、毎日が楽しくなった。

とある日、お酒の話題になり、その流れでSYくんから「飲みに行こう」と誘われた。当然二つ返事でOKし、数日後に会うことになった。



SYくんの第一印象

当日を迎えるまでの間も変わらず連絡を取り合い、あっという間に当日を迎えた。

仕事が終わるなり急いで化粧を直し、待ち合わせの場所へ向かうが、SYくんはまだ到着していないようだった。

普段は人見知りをしない私もいよいよ対面するのだと思うとさすがに緊張した。帰りたいとすら思った。

スーツの男性がこちらに近づいてくる。

「万願寺ちゃん?」

SYくんだ。アプリに登録してあった写真よりも格好いい。さわやかで綺麗な顔立ちをしている。

挨拶をかわし、さっそくSYくんの予約してくれた店へ向かった。

店に着くと、SYくんが予約していた旨を少々雑な物言いで店員に伝える。店員からの問いかけにもくい気味で相槌を打っている。

私は店員に高圧的な態度をとる人が苦手なため、SYくんの第一印象はあまり良くなかった。


楽しい食事

何点か料理を注文し、お酒を飲みながら話をする。第一印象とは打って変わって、話し始めると怖い印象は全くなかった。


その店は日本酒の種類が豊富で、利き酒ができた。利き酒などまったくできないのだが、その場のノリで注文して利き酒に挑戦することになった。

目の前に置かれた5種類の日本酒を一口ずつ飲み、その後目をつむった状態でSYくんから渡される日本酒を飲んで当てる。これはすごく盛り上がった。


このあたりから酔いが回ってきて、お互いボディタッチもするようになり、距離感がぐっと縮まったような気がした。いたずらっぽく笑うSYくんがとても可愛く見えた。


別れの時

結局、夜遅くまで同じ店に滞在したが、時間も時間なので店を後にして駅へ向かう。

電車までまだ少し時間があるので、駅近くの植え込みの縁に二人で腰掛けて風に当たっていた。さっきよりもSYくんとの距離は近い。

人の流れを眺めながらこの後どうするかを話す。

泊まる か 帰る か。

だが、真面目な私の性格上「泊まる」という選択はなかった。

ただ、もう少しSYくんと一緒にいたい。

別の店に行くかとも聞かれたが、二軒目に行けば終電はなくなる。タクシーで家へ帰るには遠い。

悩んでいると、SYくんは私の肩に寄りかかってきた。今日一番の距離感にドキドキする。

初めて経験する『いい雰囲気』だった。

今、私たちは恋人同士に見えているのだろうか・・・そんなことを考えながら、幸せな気分に浸っていた。

帰る時間が迫り、私は何を思ったのか、隣に座る彼に「また会ってくれる?」とLINEを送った。

今考えると死ぬほど恥ずかしい。中学時代に書いた自作のポエムを人前で読み上げる恥ずかしさに匹敵する。

そんな恥ずかしいLINEにSYくんは「もちろん」と返してくれた。嬉しかった。

これでまた会える。

少し安心した私は、離れがたいが帰る決断をして彼と別れた。


それから

彼との食事から数日後も、LINEのやりとりは続いていた。

私はこのときかなりSYくんのことが気になっていたので、毎日のLINEが本当に楽しみだった。

そんなとき、SYくんから「どれくらい彼氏いないの?」と聞かれた。

返答に困ったが、これから距離を縮めていこうとしている以上嘘をついても仕方がないので、正直に「彼氏いたことがない」と答えた。

「そんな気はした」と返事がきた。

「引くよね」と言うと、「引いたりはしない」と言ってくれたが、「そんな気はした」という言葉にとても恥ずかしくなった。

自分の言動に喪女感が出ていたのかと思うととてもいたたまれない。

その後のLINEでSYくんから「他に会う約束はしているのか」と聞かれた。「していない」と答えると、「もっと数打たないと」と言われた。

ショックだった。自分に脈が無いのが分かった。

その後もLINEはしばらく続いたが、段々と返事がこなくなった。飲みに誘っても煮え切らない様子だったので、これはもう無理だと思い、私もLINEを送らなくなった。


初めてのアポで感じたこと

SYくんと会ったあの夜はとても楽しく距離感も非常に近かったので、また会えるものだと本気で思っていた。

・・・が、SYくんはただ単に『うまかった』のだ。

話し上手で格好良いのだから、女性から放っておかれないわけがない。私は経験豊富なモテ男の軽いジャブを本気にし、勘違いしてしまった。


もうひとつ、気付いたことがある。

自分にこれまで彼氏ができなかったのは外見のせいだとばかり思っていたが、原因はそれだけではなさそうだということだ。

思うに、男性への接し方が問題なのだ。

私は男兄弟がいることと男友達が多いことから、男慣れしていると思っていた。

だが、男性経験がないことをSYくんに悟られたように、私の言動の随所にそれが表れていたのだ。

それを物語る最たる例が、SYくんの隣で送ったあのLINEだ。

私の中の恋愛のイメージは少女漫画のみで構成されており、リアルな恋愛のイメージができていなかったことを痛感した。


この気付きを糧に、また次のアポを取り付けるのであった。

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