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「超入門失敗の本質」から見る役所内(その1)

おはようございます。
北海道で地方公務員をしています。

今回は鈴木博毅さんの著書、「「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」を読んだ感想とまとめを書き綴ります。

失敗の本質は、第二次世界大戦の戦い方から日本軍の組織的な問題点を分析した本で、今回の本は「失敗の本質」をポイント毎にまとめ、読みやすく整理されたものです。

現代の日本企業にある「共通の構造」に視点が置かれた内容ですが、読んでいると自分が所属する行政組織が当てはまる内容が多く、現代まで日本組織の構造の問題点が継承されていると感じました。

失敗の本質では、日本軍と現代組織とでは、失敗につながる組織構造が重なるように見えると指摘されています。
繰り返される失敗には、共通する点があり、それが組織構造となっている問題は根深いものだと感じます。

目まぐるしく変化する現代においては、変化に柔軟な組織、人材が求められますが、本書を読むと、役所内の慣例や従前から変化のない考えに染まってはならないと危機感を感じます。
公務員は必読です。

戦略とは目標達成につながる勝利

第二次世界大戦で日本軍は、各戦線では米軍に総力戦で勝ることに成功していますが、目標達成に繋がらない勝利が多く、一方で米軍は目標達成につながる勝利の重ねて、劣勢をひっくり返すことに成功しています。
個々の戦線では大量の勝利を収めても、大局的な戦略を持てずに、最終的に米軍に敗れるという結果を招いています。

現代では、日本製品の独自進化を「ガラパゴス化」という言葉で表現されますが、有名な話ではガラケーの性能を競っていた日本に、アップルのスマホが来日して一気にシェア競いに敗れた話があります。
日本製品が高度な機能を備えていても、海外製品に規格を独占されてしまう。

著者は、戦時の日本軍が数多くの勝利を集めて最後に敗れる姿は、現代の日本企業がグローバルで敗れてきた姿にも重なっていると言っています。

戦略とは追いかける指標のことで、その指標設定こそが勝敗を決める重要な要素だと指摘されています。

型のみの伝承

日本軍の精強さは、日本の武道と同じく型の反復練習で脅威的な技能を育つと考えられていますが、戦略自体が高い技能を持つ達人を育てるという方向に向いていたと指摘されています。
そして日本軍の強みは体験的学習によって偶然生まれたイノベーションだとされています。

一方で米軍は、夜間でも敵を捉えられるレーダーの開発や命中精度を追求しなくても追撃できる砲弾の開発など、高い技能を持つ達人を不要とするシステム思考的な方向へ戦闘を転換させていっています。

役所においては、前例主義の意識からか、前任から引き継いだ業務を同じやり方、あるいは少し資料を見やすくして作るような型の継承で仕事をする方が少なくないと感じます。
型の継承では、業務の目的や業務を始めた情勢を考えずにただただ続けられる状態に陥りがちです。
この役所内の姿は、失敗の本質で言われる「日本的思考」は変化に対応できないという指摘と重なって見えてしまいます。

本の中でも、重要なのは型の伝承ではなく、「勝利の本質」とされています。
日本は、成功体験を「虎の巻」にし、型と外見だけを伝承することが多く、それでは過去の方法が通用しない場面では適用できず、さらには本質が劣化して伝承されていると指摘されています。

現場への無理解

日本軍と米軍とでは、現場の能力を活かす仕組みに違いがあるとされていて、現場の自主性や独立性を認める米軍に対して、日本軍の指示系統は上層部の独断で決める権威主義であると指摘されています。
このため、上層部が現場を理解していると思い込んでいても指示が優先される構造となっています。

役所でも、特に私がいる技術職の職場ではまさにこの状態です。
現場で動く職員がぶつかっている壁に対して、管理職が同じ立場だった20年近く前の経験則で指示を出す傲慢な場面も散見されます。
情勢が違うことは棚に置き、現場の状況を確認もせずに軽視しているように感じることもあります。
本来ならば、現場の意見が尊重されて作られた仕組みで現場が動く方が効果的なものになるのは理にかなっています。
役所の場合、例えば政策の基本方針など、業務の大きな方向性を決めるものは、市民参加の視点や議会への説明があるため、管理職がその調整をする役目は必要と考えます。
ただ、現場の動き方までに口を出すのは、行き過ぎだと考えます。

こうした組織運営は、その後の分析で失敗だったとされつつも、現代の組織にも根深く残っている問題なのかもしれないですね。

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