YKK創業者、吉田氏の哲学(読書記録)
経営者の方々というと自分とは程遠い存在のように感じる。しかし、今まで読んだ本の中でも経営者の方々の「哲学」に触れることで、多くの学びを得てきた。自分の仕事観や私生活においても、生き方そのものが変わるような考え方を養うこともできる。
今回も職場の上司におすすめされたYKK創業者の方のノンフィクション小説を読んだ。(獅子が吼える【YKK創業者吉田忠雄の生涯】という本だ)
創業者の方の想いや仕事に対する姿勢が生々しく描かれており、記憶に残っているうちにnoteに記録しておきたい。
成果三分配
色んな経営者の本を読んでいる中で、共通していることが多いのが「利他の精神」を持つということ。吉田氏も利他の精神が強烈に強い方だと本を読んでいて感じた。(私もこうなりたい!)利他の精神は大事!ってわかっていても、会社のためよりも自分のため、チームのためよりも自分のため、ライバルは蹴落とし自分といったように、自分の利益を一番に考えてしまうことがないだろうか。(少なくとも私は沢山あります。涙)自分の利益を追い求めるのは当然のことだから、決して悪いという事を言いたいわけではない。
しかし、もし大きな仕事をしたり、大きな事を成し遂げていくにあたっては、利益の幅を広げていく必要がありそうだ。自分だけが利益を得るのであれば、それなりの頑張りでも達成ができる。しかし、社会や世の中に大きなインパクトを残すとしたら、自分の利益だけではなく、他者の利益にも貢献出来るようになることが必要だ。つまり、利益の影響の幅が大きいほど、大きな事を成し遂げていくことにつながりやすいということだ。そして、自分のため以上に頑張りが必要であるため、自分のできることや能力の伸び幅も大きくなるのだろうと思う。
私は本の中ででてくる「成果三分配」という言葉が好きだ。
しかし、その六十円をお客様、関連産業、吉田工業で三等分すれば、どうでしょうか。吉田工業の利益は、六十円が二十円に減ったように見えますが、実はそうじゃない。みなさんに喜んでいただけた分は、また吉田工業の製品を使っていただけることにつながります。よいことが、循環することになるのです。
海外進出の場合は、まず相手国の産業開発に貢献し、その国の経済力に多少なりとも寄与するつもりで仕事をしなければダメだと思う。相手国の利益になることは、自分の利益にも通じるのである。
公私の切り分け
経営者ともなると休日も忙しく、働き詰めのようなイメージを持っていた。
しかし、吉田氏は以下のようなことを言っている。
たまに社員が顔を出すことがあったが、仕事の話は、ほとんどしなかった。公と私を彼は峻別していた。家庭は、あしたのエネルギーを作る再三工場と心得ているところがあった。だから、プライベートな時間のほとんど読書、洋蘭の栽培、海釣りについやしていた。翌日の仕事にそなえ、私生活はできるだけ簡素にしていたのである。
サラリーマンの自分にとってはとても共感ができる考えだ。むしろ、自分よりも何十倍も忙しい方が公私の切り替えをしっかりと行っていることは、見習うべき行動だと学ぶことができた。
昔、残業が長い人や休日まで仕事をしている人は、「仕事ができない人」だぞ、と前職の上司に言われたことがある。今、本を読んでみて感じるのは、出来る人は「休む時間の作り方」がとても上手なのだと思う。時間を作る能力があるからこそ、効率的に働くことができるのではないか。職場でも自分よりも忙しい上司が早めに帰っている姿をみると同様に感じる。
いい仕事をするのであれば、休みの日はしっかりと休む。休むことも仕事の一つ。
休みの日でも仕事のことが頭から離れないことも多いが、きちんと休めるように意識していきたい。
70パーセント主義
個人的にとても共感できたのは「70パーセント主義」の考えである。経営者の方々となると、とても仕事に厳しく、常に100パーセントの成果を求める人が多いのではないかと思っていた。しかし、吉田氏は100パーセントを狙うと持っている力の最大限が出せなくなる。そのため、70パーセントでよいし、失敗してもよいと考えている。
彼の決断の特徴は”70パーセント主義”という言葉でいあらわされている。「失敗してもよい、そのあとで成功することが大切なのだ。丁寧にことを行おうとすればミスは少なくなるだろうが、最大能力の半分しか出せなくなる。少し粗くやれば、失敗もあるが、持っている能力の70パーセントは出るものだ」100パーセントではなく、70を狙って攻める。ここに彼の経営の本質がある。
吉田氏のようにはじめから完璧を求めるのではなく、まずはやってみて、やりながら修正をしていく考えが、新しいことへ挑戦する気持ちを持ちやすくなる。はじめから100パーセントを求めてしまうと、挑戦することへのハードルが高くなり、挑戦すらしなくなってしまう。
はじめから完ぺきにできる人間はほとんどいない。挑戦し、続けるからこそ、できるようにもなるし、成果もできるようになる。そのためには、100パーセントを目指して始めるのではなく、失敗を念頭に、挑戦し続ける中で成功していく考えが大切になる。
終わりなき旅
YKKはファスナー事業が主要ではあったが、吉田氏は他の事業にも貢献しようとする。(以下引用文が参考)
銅やアルミ合金の生産からさらにさかのぼって鉱山事業にまで進みたい、綿花の栽培から農園経営までひろげたい。夢に向かって挑戦し続ける彼の意思に、みじんも衰えは伺えない。
世の中で成功していると言われる人や大きな事を成し遂げていく人は、「壮大な志」を持ち続けている。一つのことを成し遂げたら達成という概念はなく、一つが終われば新たな目標ができる。そして、自分の命が尽きるまで、その考え方はずっと続くものなのだと思う。だから、常に学び続け、自分を磨き続ける。その結果、大きな事を成し遂げることが出来る。
例えるなら、「終わりなき旅」を続けているようなものだ。それが生きがいになり、挑戦しないではいられない性分なのだと思う。
DNAの創業者である南場さんの言葉にも、「コトにむかえ」というものがある。これは、自分のことや他人からの評価を意識するのではなく、「何をするべきなのか?」といった自分の志や組織のビジョンのこと。終わりなき旅をするということは、自分の目指す「コト」に目を向けているからできることなのかもしれない。
まとめ
本当はもっと書きたいことが沢山あるけど、このnoteに書いたことは日常から意識できるようにしていきたい。サラリーマンとなると、経営者の方々とは立場が異なるかもしれないが、経営者の方々のように「仕事を楽しむ」「人生でかかせないコト」になると前向きな捉え方にもなるのだと思う。