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狩猟と月の女神アルテミス ~独立心、目標追求型、弱い者の味方 ギリシャ神話編②


前回の導入編に続き、早速それぞれの女神たちにご登場頂きます。トップバッターは、処女神グループのひとり、アルテミスです。

処女神たちの処女という意味はどんな男性にも自分の領域を侵されることがない、支配されることがないという意味です。自分の価値基準に従って、自らしたいことを成すという特性があります。ありのままで純粋な本質を持ち、自分にとって最も大切と思うことに集中する能力を持つ、自己充足タイプです。

【アルテミスの神話】
狩りと月の女神であり、オリュムポスの最高神ゼウスを父に、自然神レート―を母に持ち、太陽神アポロンの双子の妹です。

3歳のとき、父ゼウスから「可愛い娘よ。おまえの望むものすべてを与えてやろう」と言われ、弓矢、一緒に狩りをする猟犬たち、付き人のニンフたち、狩人の着る短いチュニックと永遠の貞節を望んだということです。ゼウスは、すべてを受け入れ、自分自身で決定するという特典も与えました。このように自由に山野を駆け巡る独立心旺盛な女神です。

自分が生まれた直後、双子のもうひとりアポロンの出産に難儀していた母を助けたという逸話があります。その後も母をたびたび助けます。また他の女たちが男性に襲われそうになると助け、襲おうとした男たちに容赦ない制裁を加えました。

アルテミスは狩人オリオーンに恋をしましたが、ある日オリオーンが海を泳いでいるとき、兄アポロンがアルテミスに「おまえには海のなかに見えるあの黒っぽいものを撃つことができないだろう」と挑発し、その挑発にそそのかされたアルテミスは、自分の恋人とは知らず、彼の頭を狙い撃ちして殺してしまうのです。

愛する人オリオーンは、アルテミスの強い競争心と狙った獲物は必ず仕留めるという強力な目的意識の犠牲となってしまいます。(のちにアルテミスはオリオーンを星座にし、自分の猟犬を1匹を与えたと言います。それがオリオン座と大犬座シリウスです)

こんなふうに、アルテミスは同性を仲間として助けたり保護したりするどこか頼りになる姉御肌の持ち主である一方、何が何でも自分の目指したものは手に入れなければ気が済まない負けん気の強さがあります。

以上が神話で語られる女神アルテミスの姿です。ではアルテミス的な元型を内に秘めた人とはどんな感じなのでしょうか、以下にアウトラインを描いてみました。

アルテミス的な元型を生きる人の特徴
小さい頃から、自分のことは自分でやりたがり、可愛い洋服やお人形には目もくれず、動きやすい服を好んで、男の子たちと外を駆けずり回っている女の子。

誰かが男の子に苛められているのをみると、たとえ自分より体が大きい相手でも向かっていってやっつけてしまうような正義感の強さを持っています。

自立心、探究心が旺盛で、なんでも自分の目で見て、体験してみないことには納得しない。妥協しない。そうした確固とした態度故に、「頑固だ」「強情だ」「女の子らしくない」と周囲から思われがちです。

10代後半から20代になると、自分が「これだ!」と思った活動には積極的に参加し、周りの目を気にすることなく我が道を行きます。バックパッカーとなってひとりでどこへでも旅に出かけたり、キャンプや山登りなど自然のなかで過ごすことになによりの精神的な満足を得て、独立独歩を好みます。

親や周りの大人が、そんな彼女の特性を肯定的に認めてくれる場合は、アルテミスタイプの少女は、自分の選んだ道をイキイキと進んでいけるのでしょうが、たとえば、親が素直で従順な女の子であることを求める気持ちが強く、子どもの独立独歩の方向性に理解を示さないとアルテミスタイプの少女はフラストレーションを感じるでしょう。親に対して反抗的態度を取りながら、内面は傷つきます。

例えば、権威的で保守的な父親とそれに従う受動的で弱い母親という家庭のなかで育つアルテミスタイプの女の子は弱い母を助ける役割を担ってしまうことで(娘の方が母親役になる)処女神的な性質を強めます。娘からみると母は弱々しく映り、母に似るまいと心に決め自立を誓います。

自身の依存感情や、傷つきやすさは心の隅に追いやられ、母を助けながらも母を尊敬することはできず、母性や女性性といったものへの拒否感を抱いてしまいます。

そもそも結婚や、家庭を持つといったことへの欲求は薄く、独り身で自由に生きていきたいという気持ちが強いアルテミスタイプがパートナーを選ぶとすれば、自分を引っ張っていこうとする男性や支配的な男性、または妻ベッタリの依存的な男性は論外で、追求する趣味や興味が一致する相手、最良の友達といった対等なパートナーシップを築ける相手でないと結婚しようとは思わないでしょう。結婚してからも相手に縛られず独り自由に過ごせることがアルテミスタイプの妻にとってはとても大事になります。あるいは結婚はせず、同棲で通す方を選ぶかもしれません。

子どもを持つと、包み込むような母性的な愛情というよりは、自立心を育てようとするでしょう。自分が守ってあげなくてはというよりも、子どもがひとりでなんでもやれるように自立性を育むというのが子育ての軸になるのです。

なので、アルテミスタイプの女性が、依存的で受動的な子どもを持つと親子関係には難しさが生じます。しがみつく子どもを受け入れられず、子どもは母から拒否されていると感じ、母子関係は葛藤含みになりがちです。

アルテミスタイプは、自分にとって価値があると考える仕事に力を注ぎ、出世欲や、金銭欲といったものは一切なく、周りの評価が得られなくても自分の仕事に充足感を見出します。

男性優位な組織の在り方や、父権的な考えを押し付けられるようなことがあれば、猛烈な怒りを抱いて、敢然と立ち向かっていくのもアルテミスの特徴です。

また、月の女神アルテミスの元型が息づいていると、陽の光の中でクリアに目標に焦点が定った意識的な見え方とはまた別に、神秘的な月の光で無意識の領域がぼんやりと照らされたようになり、より内省的になり、内なる野性が呼び覚まされ、自分が自然の一部であり、自然と一体であると感じることでしょう。
自然との繋がりなくしては、アルテミスの自己充足はないといえるでしょう。

外で活発に活動していたアルテミスタイプの人が、中年期以降、深い精神世界や内面の探求といったことに関心が向く場合もえります。いずれにしても晩年になってもチャレンジングな精神は持ち続けることでしょう。

アルテミスタイプの課題は、自分のことに集中するあまり、周りの人の感情に疎いところです。また白か黒かでものごとを決めつけて、黒と判断すると、復讐をも公正なものと考え、相手をバッサリと切り棄てたり攻撃するという極端さがあります。周りの人には冷淡さ、無慈悲さといった印象を与えます。

自分にとって重要なものを追求しながらも、一方で自身の傷つきやすさ、親密さを求める気持ち、ときには人を頼りたくなる弱さを受け入れ、自分のなかにも受容的で慈しみ深く他者と関わるという性質が内在していることにも目を向けて(アルテミス元型が強いとしても、おそらく他の女神元型もその人のなかには存在している)、その部分をも大切に守り育てること、共感の能力を培っていくことで、アルテミスの難しさを乗り越えてアルテミスをよりよく活かしていけることでしょう。

女神アルテミスの特性を持つ元型、どんな感じか掴めましたでしょうか?

あなたの中に、アルテミスはいましたか?

最後までお読み頂きありがとうございました。

次回は、同じ処女神グループの女神、アテーナについて書いてみたいと思います。お楽しみに!


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