見出し画像

汚れ落としの究極の技!江戸時代の古文書『女中嗜日用宝』を訳してみた

洗濯機などない江戸時代。普通の手洗いではどうしても落ちないあれやこれ。クリーニング屋もありません。さてどうしたらいいのでしょうか?そうしたしつこい汚れ、やっかいな汚れに対処する方法が、この古文書にいろいろ書かれています。庶民の匠の技を覗いてみましょう!

染み落とし1

よろず染み落としの法

黒繻子くろじゅす黒天鵞絨くろびろうどの半襟の垢を落とすには、
 まず、たらいの上に板を渡し、襟を伸ばして
 綿種わただねがらの灰の灰汁あくを湯で沸かす。

染み落とし2

 そして、たらいへ入れて、刷毛はけ灰汁あくを浸し、
 板に乗せて襟をなで洗いにし、
 垢が落ちるまで水でしっかり洗って、
 戸張にして干す。

●梅雨に衣類にカビが生えたときは、
 梅の葉を煎じて洗う。

●衣服に墨がついたとき、木綿物の場合は
 姫糊ひめのり※を塗りつけてよくもみ、お湯で洗う。
 絹は杏仁の皮を細かくし、挽茶ひきちゃと等分にして
 墨のついたところへふりかけ、お湯でしっかり
 すりつけてもんだ後、再びお湯で洗う。
 また、大棗たいそう※を噛み砕き、
 
 ※姫糊=飯をやわらかく煮て作ったのり。
     洗い張りや障子張りなどに使う。
 ※大棗=ナツメ

染み落とし3

 すりつけよくもんで、水で洗うのもよい。

●衣服に油がかかったとき、まず紙を敷いて
 筆の磨き灰(もみぬかの灰)を置き、
 その上に油のついた場所をあてる。
 そして、布の上からもこの灰を振りかけ、
 さらに紙をあてて強く火熨斗ひのし※で伸ばす。
 一度で落ちないときは、二三度灰を替えて
 火熨斗をかければ油は抜ける。
 
 ※火熨斗=アイロン

●衣服に漆がついたとき、杏仁と山椒を等分に
 合わせてつき、たらしてすりつけて
 洗えば自然と落ちる。

●衣服に血がついたとき、きれいな水で
 よく洗う。また、大根を噛み砕いて
 すりつけて洗うのもよい。

●白無垢を洗うには、大根の煮汁か、または

染み落とし4

 菖蒲しょうぶを細かくして水に入れて洗えば
 色が白くなる。

●衣服に膿血うみち がついたとき、膠水にかわみずで洗えば
 落ちる。また、良い酒を沸かして
 かね筆※につけ、軽くなぞれば落ちる。
 あとからお湯で酒気を洗い流すこと。

 ※かね筆=お歯黒で歯を染めるときに使う筆

●衣服に泥がついて汚れたときは、
 生姜をすってつけ、もんだ後、水で洗う。

●衣服にふんがついたとき、土に埋めて
 一時(2時間)ほど経って取り出し、
 お湯で洗えばよく落ちて臭いも取れる。

●衣服に煎薬の汁がついたとき、烏梅うばい※を
 煎じて洗えば跡なく落ちる。

 ※烏梅=梅の実を加工したもの

●衣服にとりもち※がついたとき、芥子けしの粉を

 ※とりもち=モチノキの樹皮に含まれる
  ゴム状で粘着性がある物質で作られたもの

染み落とし5

 ふりかけておけば自然と落ちる。

●衣服にタバコのヤニがついたとき、
 味噌汁を沸かして洗えば落ちる。

●針が錆びない方法は、胡桃くるみの殻を灰にして
 箱へ入れて、その中へ針を入れておく。
 また、ぬかを炒って入れておくのもよい。
 ハサミや小刀なども、その中へ入れておけば
 錆びることはない。


【たまむしのあとがき】

汚れ落としにも、こんなにたくさんの方法があるんですね。

中でも一番衝撃なのは、糞がついたときの方法でした。

土に一度埋めて、時間をおいて取り出すだけでOKなんてっ!!

すごい自然の神業ですよね。

私たまむしは、プロフィールにも少し書いていますように、人間の生活は自然や大地ともっと近くなるような、シンプルな暮らしに戻っていくだろう、原点回帰していくだろう、と常々考えています。

その中でも非常にシビアな話ですが、農作物の肥料は今の人工肥料から江戸時代以前の人糞に再び戻っていく可能性もあるのではないか?という考えを持っています。

農業や社会インフラの専門家ではないので、具体的な方法はわかりませんが、一説には、汚水管から引いて散布する案もあると聞きました。

今回、こうした汚れ落としの方法によって糞と土との関係性がわかり、非常に大きな可能性を感じたのでした。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集