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日本のCXを世界へ──ロイヤル顧客から逆算するCS起点の顧客体験設計

こんにちは、白塚です。今回は、私自身がコールセンターで働いていた経験とカスタマーサクセスの業務設計・BPOの経験から、「これからのCX(顧客体験)はどう変わるのか」「日本ならではの強みをどう活かせるのか」について、考えていることをまとめました。


デジタル起点とヒト起点、それぞれの強み

デジタル起点のCX

近年のアメリカをはじめとする海外の企業では、デジタルテクノロジーを全面に活かしたCXが強く唱えられています。AIやチャットボットなどを活用し、大量のデータを分析して一人ひとりの顧客に最適な体験を自動で提供しようとする例が多いと感じます。

ヒト起点のCX

一方で、日本ならではの強みとして私が注目しているのが「ヒト起点のCX」です。もちろん日本でもデジタルはどんどん取り入れるべきですが、アメリカと比較するとITを活用できる人材がまだまだ不足しているのも現状。その反面、日本企業に根付く「おもてなし」的な文化は、ヒトだからこそ実現できるきめ細やかな顧客接点を得意としています。テクノロジーで補いつつも、最後はヒトが“温度感のあるコミュニケーション”で最適なCXを提供する──このヒト起点のアプローチこそが、日本のCXを支えるコアだと私は考えています。

CXによる事業貢献を可視化することの難しさ

コールセンターを中心にCXを支援する事業に携わってきた私が、常に課題だと感じているのが“事業貢献の可視化”です。
「顧客が喜んでくれた」「ブランドロイヤルティが高まった」といった定性的な成果はあっても、それを定量的に証明するのは難しいとされてきました。成果をKPIに落とし込んで数値化できなければ、経営層への説得材料として不十分になりがちです。

そのため、私の周りにも「自分たちのやっているCXの価値を理解してもらえない」「予算が出ず、やりたいことが出来ない」と苦悩する人がたくさんいました。何度も歯がゆい思いをしたことは私自身、強く記憶に残っています。


いまCXに起きている変化:データ量の増加と定量化の可能性

ところが最近、IT技術の発展によって取得できるデータの量が格段に増えたことで、CXの成果を定量的に示すことが可能になってきました。

アクセス解析ツールや顧客管理システム(CRM)を導入し、顧客の行動データや契約データ、満足度調査などの情報を統合すれば、「何を行った結果として顧客満足度が上がり、売上・利益にどれだけ貢献したのか」を数値で把握できるようになりつつあります。
我々が事業を展開している「カスタマーサクセス」という領域もまさにこの変化の一つだと考えています。

これによって、CXが“ただのコスト”ではなく、“売上や利益を伸ばす投資”であると説明できるようになってきました。私が昔コールセンターにいた頃に実現したかった世界観が、今や当たり前になりつつある。

事業貢献の可視化ができる様になったことで、今後はSaaS領域だけでなく、通信・人材・電機メーカー等様々な領域で、製品だけでなく、ヒトによるオペレーションにおけるCXへの投資がより加速していくと考えています。


LTVの高いロイヤル顧客を軸に設計するCX

従来は新規顧客を多数獲得するのが最重要というイメージがありました。もちろん新規開拓も欠かせないですが、2:8の法則もある通り、実は企業の利益に大きく貢献しているのはリピーターやロイヤル顧客であることが多い。

更に、前述したデータのリッチ化により、ロイヤル顧客を定量的に把握できる様になってきた中で、LTV(顧客生涯価値)の高い“ロイヤル顧客”を軸としたCX設計が求められる様になってきています。

ここ数年でこの認識が広まり、ロイヤル顧客が一体どんな体験を重視しているのか、その顧客体験を他の顧客へどう展開していくか、といった観点でCXを再設計する流れが明確になってきました。これは、営業やマーケティングが中心となっていた従来の手法から、CS(カスタマーサクセス)起点へとシフトする大きな変化でもあります。
これにより、「本当に長くお付き合いできる顧客をより丁寧にサポート」できる時代になったと感じています。


CS起点でLTV向上を目指すフロー


AIがもたらすCXのグローバル化

AIは今や世界規模で進化を遂げています。音声認識や機械翻訳の精度も向上し、遠くない未来に言語のハードルはなくなっていくと考えています。
日本の企業が提供するCXを、海外ユーザーも母国語で利用できるようになれば、グローバル市場への参入ハードルは一気に下がります。
これにより、日本で積み上げてきた“おもてなし”の文化やヒト起点の細やかなサービスが、言語の壁を超えて世界で評価される様になると考えています。


日本をCX大国に

最後に、これは私個人の野望ですが、私は日本を“CX大国”にしたいと本気で思っています。
コールセンター時代、海外ベンダーと比べて顧客体験の品質は圧倒的に高いと自負していたのに、それがなかなか認められないもどかしさを何度も感じてきました。
ただ、今はデジタルとヒトの融合により、CXが売上や利益にも大きく貢献することを証明できる時代になってきました。

私たちが世界に誇る“おもてなし”とデジタル技術を組み合わせ、高度経済成長期のように、日本を世界中のビジネスパーソンが学びに来るような“CX大国”にすること──これが、私の持つ大きな夢です。

日本企業は今こそ、デジタルの力を借りながら、ヒト起点の強みを活かした顧客体験を設計していく時。遠からず訪れるCXのグローバル化を見据え、各業界の方々と新しいCXの成功事例を創りあげていけると嬉しいです。


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