4回の転職、メンタル不調を経て起業。「組織が変われば人も変わる。その確信が持てるからこそ、やりがいを感じています」福島知加/テン職の光 #2
「転職=ネガティブ」なイメージを変えるべく、ポジティブな転職や、働き方チェンジで人生が好転した人を取材する企画「テン職の光 ~今を黒歴史にするためのワークライフストーリー」。
今回取材したのは、株式会社ワダチラボ代表取締役の福島知加(ふくしまちか)さん。「誰もが可能性を信じられる社会づくり」を経営理念に、企業のコンサルティングやコーチング、育成、採用支援など様々な角度から働く人を笑顔にするサポートを行っています。
いつも笑顔で朗らかな福島さんですが、実は過去には仕事がうまくいかず精神状態が不安定になったことも。紆余曲折を乗り越えて、どんな場所に辿り着いたのでしょうか。早速、福島さんに転職のお話を聞いてきました。
〈取材・執筆:三好優実〉
30歳目前でメンタル不調に。ドラマを見ても無感情に
ー新卒入社してから今まで、転職回数は4回ですよね。それぞれどんなお仕事をされていたんですか?
福島さん:1社目は教育関連企業の営業職。2社目はWebのコンサルティング営業。3社目はIT会社で人事職。最後は公共の就職支援機関です。全て人と関わる仕事ではありますが、業界は全部バラバラですね。
ーたしかに全然ちがう。選ぶ基準ってありました?
福島さん:いろいろやってみたかったんだと思います。興味があるジャンルにひとつずつ手を出した感じかな。
ーMY STORIESでは、メンタル不調になったことが描かれていました。社会人になってから一番きつかったのはこの時期ですか?
福島さん:そうですね、この時期が一番きつかった。人事職は憧れの仕事でしたが、いざやってみると自分の未熟さを痛感しすぎてきつかったですね。
ー人事という職種はとても向いているように感じますが、どういうところがきつかったのでしょう。
福島さん:私自身がその当時、人事未経験で新設部署のしかも1人担当。というツッコミどころ満載のポジションについてしまい、他部署からの風当たりがかなり強かったんですね。でも人事の仕事は採用や人材育成と、他部署の連携がないと始まらない仕事でもあるのでどう成果をあげていけばいいのかずっと悩んでいました。
ー相談できる方はいなかったんですか?
福島さん:新設部署で前任がいなかったのでガッツリ業務内容の相談ができる相手はいなかったかな。いや、ただただ、その当時の私は「助けて」と言える勇気がなかったんだと思います。助けと言ったらこの部署がなくなってしまうかもしれないとまで思いこんでしまい、一人で何が何でもこの部署を軌道にのせると決心し、2年半ずっと邁進していきました。その結果少しづつ連携ができる部署も増えて、採用人数や人材育成の目標を達成し順調にいっていると思っていたのですが、一人で無理をしすぎました。気づいたら夜眠れなくなっていたんです。
ーそれはメンタルが不調になる予兆だったんですか。
福島さん:そうですね。予兆だったと思います。
ーどんな症状から始まったんですか?
福島さん:まず夜眠れない。かと思えば、過呼吸になるぐらい泣いてしまったり、手が震えたりすることもありました。あとドラマを見てても無感情なんです。普段はドラマが大好きなのに、まったく感情が動かなくなってしまった。
ーそれはやばい。
福島さん:やばいですよね。その症状が半年ぐらい続いて、でも周囲にバレないように笑顔で接していましたし、明らかに生産性が落ちていましたがその埋め合わせを自宅に帰ってやっていました。ある意味、一人部署だったから周囲が気づくことはなかったんだと思います。
ー病院で病名を聞いた時はどう思いました?
福島さん:安心しました。私の場合は病気と言われた方が楽だったんです。先生に会社を辞めるか1回距離を置くかしなさいと言われて、休む選択をしました。
ー休んでいる間はどう過ごしたんですか?
福島さん:最初は周囲への申し訳ない気持ちでいっぱいで、休んでいるのにしばらくは引継ぎ書を作成したり、応募者へメールを送ったりして普通に在宅勤務しちゃっていたんです。でもそれが会社にバレて「お願いだから休んで」と言われて、そこからようやく休むようになりました。しばらくすると、夜寝れるようになって、感情も正常になり、もともとのポジティブ思考が舞い戻ってきて、今後の人生の選択肢を模索するようになります。
ー模索した結果、どんな選択をしたんでしょう。
福島さん:会社に戻る選択肢も考えましたが、結果、退職する選択をしました。あれほど部署を軌道にのせると鼻息荒かった中その選択ができたのは、入社した当初、会社の役員と約束をしていた新設部署のミッションを休職する前に達成できていたことと、この状況を予想していたのか休職する1か月前にバリバリの人事経験者を採用していたからです。振り返るとやりきったという思いが強かったんだと思いますね。次のステップとして考えたのが求職者の支援でした。実際に多くの方と面接をする中で「この方の経験や特性だったらうちじゃなくて他の会社の方が活躍できそう」って思うことが多々あったんですよね。どっぷり、人の人生を切り開く支援をしてみたいと思いました。
組織の大切さに気付いた4社目。「こういうチームを他の会社でも作れたらいいのに」
ー4社目はまさに求職者支援のお仕事ですよね。
福島さん:そう。若年者向けの就職支援機関で、求職者の相談にのったり、就職セミナーをやりました。
ーやってみてどうでしたか?
福島さん:「キャリアって面白い」って思いました。可能性だらけの求職者の方に、私たちが少し関わることで、その人のキャリアの彩りが少しだけ鮮やかになっていく。その瞬間に立ち会えることがとても嬉しかった。あとね、一緒に働くチームがとってもよかったんです。
ーどんなチームだったんですか?
福島さん: 自己理解・他者理解をとても大切にするメンバーだったんです。お互いの強みを活かしながらも、弱みは補い合う。それぞれの個性を尊重し合える、最高のメンバーだったんです。チーム力ってこういうことを言うんだな、って思った。
ーエネルギーの循環が気持ちいい、みたいな感覚ですか。
福島さん:そうそう!めちゃくちゃ気持ちよかった。そこで「こういうチームを他の会社でも作れたらいいのに」ってことを思うわけですよ。
ーなるほど。それが今に繋がっていくんですね。
福島さん:そうなの。本当は居心地がいいから、ここでずっと働きたいと思ってたんだけどね。だけど公的なお仕事なので、予算の都合でメンバーが解体になり、それを機に独立しました。
ー独立後、最初はフリーランスでしたよね。
福島さん:そう、フリーランス。最初の3年はなんでもやりました。基本的にすべてイエスで、それこそライターの仕事もやったけど、1記事1000円とかもあったな(笑)。実は独立後1年くらい、売上の大半を担ってくれた案件があるんですけど、その案件を紹介してくれたのが小宮さんでした。
ー小宮さん!
福島さん:独立当初、とりあえず色んな経営者の方に「私、こういうことを考えてるんですけどどうですかね」って聞きに行ったんです。6~7人くらいかな。その中で2人だけ「いいね」って言ってくれた人がいて、その内のひとりが小宮さんだったんです。具体的にお仕事をくれたのは小宮さんだけだったな。
チームが変われば人も変わる。「誰もが可能性を信じられる社会づくり」を目指して
ーその後、法人化されて今年で8年目になりますよね。法人化されてから今にかけて、どうですか?順調ですか?
福島さん:順調の定義にもよりますが、法人化する当初から比べると順調と言っていいですかね。もちろん課題ややりたいことも沢山ありますが、目指しているところにメンバー全員で向かっていてその過程にいる実感が持てています。
弊社は「誰もが可能性を信じられる社会づくりを」という理念を掲げているんですけれど、組織に入り込んで人や組織をいい方向に変えていくお手伝いができていることに、とても喜びを感じているんです。実体験として、4社目でいいチームに出会えたことで私自身も変わった実感があるから。組織が変われば人も変わる。その確信が持てるからこそ、やりがいを感じています。
ーなるほど。真逆のチームを経験した知加さんが言うと、とても説得力があります。それにしても大変なこともあった中、ずっと前向きでずっと進んでいるのが本当にすごいなと思います。その前向きさとか、立ち止まらなさって元々の性格ですか?
福島さん:私の特性としてポジティブとか楽観性はあると思います。それでもメンタル不調になった時は「私って本当に楽観的な人間だったっけ?」って疑うくらい、落ちまくって自分が分からなくなってた。でも真逆の環境を経験して、また様々な求職者の方と出会う中で「助けて」と言える環境をつくること、自分自身を深く知ることの重要性に気づくことができました。
ー助けてと言える環境と自己理解は大事ですね。
福島さん:そうですね。私たちの仕事もまさに、助け合える環境をつくり、社員一人ひとりが深い自己理解を通して「自身の強みを最大化し、弱みに対処できるような状態」を作り出すお手伝いをさせて頂いております。偶然にも真逆の環境を経験させてもらえたからこそ、コンサルティングや人材育成においても根底に「絶対に変われる!成長できる」と心から信じられて伴走できているのだと思います。
ーなるほど。最後にワダチラボは知加さんにとってどんな存在か教えてください!
福島さん:なんだろう。私は経営者ではあるけれど、トップにはいないんですよね。どちらかというとメンバーの真ん中にいる感じかな。みんながスター選手で、対等で、みんなの人格が反映されてるのがワダチラボだなって思います。今はまだ6名ぐらいの組織なのでコミュニケーションをとりやすいですが、今後、人数が増えていったらもう少しピラミッド型にはなっていくと思います。
私自身、人に頼れなくて辛い思いをしたこともあったけど、今はみんなでワダチラボのゴールに向かって一生懸命働けるのが嬉しい。ただ仕事をこなすわけじゃなく、みんながそれぞれの強みや個性を生かして頑張ってくれている今の状況は、すごく私が求めていた環境だなって思います。最後に、こんなベラベラに過去の話をしてしまいましたが、今後の皆さんの人生や働き方のヒントになるものがあれば嬉しいです。
ー素敵なチーム作りを自社から築いていて本当に素敵です。ありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?