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住まいの耐用年数と古民家の残存数

 住宅の耐用年数とは一体何年なのでしょう。耐用年数には、考え方により物理的耐用年数、法定耐用年数、経済的残存耐用年数などがあります。また売買時には一般的に固定資産税の評価で建物の価値が評価されます。古民家の残存数については5年毎に実施されている住宅・土地統計調査によると約100万棟の伝統構法と720万棟の在来工法、併せて820万棟程度が残っているのでは無いかと思います。

 物理的耐用年数とは、品質を正常に維持できる年数のことです。木造住宅の物理的耐用年数は、立地やメンテナンス歴によって大きく変わってきます。築年数の古い木造住宅でも環境やメンテナンスをこまめにおこなうことで長く使えます。法定耐用年数という考え方は立地やメンテナンスによらず不動産の減価償却費用を算出するために国が決めた年数です。建物の構造や用途によって分けられて決められており、木骨モルタル造のもので20年木造・合成樹脂造のもので22年とされています。あくまでも耐用年数なので、この年数を超えたからといって住めなくなるわけではありません。物件の資産価値がゼロとみなされるのが築20〜22年ということです。建物の耐用年数はどれくらいの期間で資産価値が無くなるのかという減価償却を計算するための指標です。逆に言えば20年を過ぎれば建物の固定資産税は安くなります。固定資産税の評価は新築時と同じように建て替えをする場合の再建築費という考え方により計算されます。建築費が高額な家屋は20年後の固定資産税は新築時の43%程度、建築費が安価な家屋は新築時の20%程度まで下がります。古民家などを上手にリフォームして住み続けることで節税も可能となります。ちなみにマンションなどの鉄筋コンクリート造の家屋は再建築費に関わらず20年後の固定資産税は新築時の55%程度となります。

法定耐用年数 出典:耐用年数(建物/建物附属設備)国税庁

 木造モルタル造とはモルタルによる外壁仕上げを施した木造の建物のことで、木造・合成樹脂造とは木材で造られた構造ガラス・プラスチックなど人為的に製造された物質、合成樹脂造で造られた構造のことです。

 経済的残存耐用年数とは、対象の不動産が今後どのくらい使用できるかという不動産的価値がなくなるまでの年数を示したものとなります。建物の価値は法定耐用年数だけでは判断できず、建物の使い方や周りの環境によって変わってくるからです。経済的残存耐用年数は建物の劣化だけではなく、今後見込まれる修繕や補修費用などを考慮して今後どれくらいの期間価値があるのかで判断されます。実際に住むことができる期間の目安である家の寿命は、木造や鉄骨構造といった住宅の構造によって異なり木造は30〜80年です。ちなみにマンションなどの鉄筋コンクリート構造は40〜90年が目安とされています。日本の住宅は欧米と比較すると寿命は短いとされます。これは湿気と雨の多い気候風土も関係していると思いますが、それよりはメンテナンスしながら維持するということをあまりおこなわなくなってきたのでは無いでしょうか。戦後の高度経済成長でスクラップアンドビルドという、造っては壊すということが経済発展のために必要なこととされ、車やスマートフォンなどの工業製品と同じように住宅も新しい方がいいという考え方が広まったためでは無いでしょうか。昔、住まいは造るものでしたが、現在は買うものという意識になってきているのでは無いでしょうか。

 また、減価償却での計算方法もあります。減価償却とは、建物などの固定資産を取得する際にかかった費用を数年に分けて費用計上する会計処理の考え方です。一戸建てやマンションなどは、時間の経過と共に価値が減少するのが一般的です。このように時間の経過とともに劣化していく建物は、資産として価値が減少するため、減価償却という考え方が用いられます。あくまでも会計処理上のルールなので丁寧に使うかは関係なく、等しく資産価値を下げる計算をします。

 新築してから何年住めるかはメンテナンス次第で伸ばすことができます。一方で建物の評価はどんどん下がります。評価のない建物に経済的価値は無いかもしれませんが居住できないわけではありませんので逆にそれを上手く使い住むことが賢い住まい方かもしれません。一般的な感覚からすると現代の木造住宅はメンテナンスをしながら80年程度では無いでしょうか。しかし、伝統構法の建物の場合は当然メンテナンスもされていますが100年150年程度は普通に現存しています。250年を超えるものも居住の用で使われていたりします。この違いはどこにあるのでしょうか。構造の違いもありますが自然素材と工業製品の違いにあるのではと思います。

 古民家のストック数(残存数)については正確な調査はありませんが、5年ごとに政府が実施している住宅・土地統計調査のデータから推測することが可能です。住宅・土地統計調査は世帯の居住状況、保有する土地等の実態を把握して現状と推移を明らかにするための調査です。結果は、住生活基本法に基づいて作成される住生活基本計画土地利用計画などの諸施策の企画、立案、評価等の基礎資料として利用されています。

築年数 出典 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計

 最新の調査年度は令和5年でこれによると全国には6500万の住宅があり、空き家が890万棟あります。空き家の数は年々増加傾向です。古民家となる住宅の残存数は5年ごとの集計なので多めになるのですが、1980年までの残存数は持ち家で約820万棟程度あると推測されます

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