人と建築の豊かな物語 #モダン建築の京都
先日、久しぶりに美術館へ行ったが、それがもう、めっちゃ、楽しかった♪
行ったのは、京都市京セラ美術館『モダン建築の京都』展。(12月26日まで開催中⁶)
京都の近代建築に関する展示だが、図面、模型、写真だけでなく、建築時の社会情勢、施主と建築家のストーリー、当時のモノクロ映像
、そこで使われている実物の家具、建築家のスケッチブック、など盛りだくさんな内容。ひとつひとつが興味深く、じっくり見入ってしまった。
面白かったことを1つずつあげていくと····
1.建物や装飾の美しさ
明治から昭和初期にかけて建てられた、ヨーロッパの様式を取り入れた建築には、現代の建物にはない重厚感やきらびやかさがある。彫刻やステンドグラス、扉や窓、階段の繊細な曲線や直線たち。柱の彫刻の原型や、実物の瓦などもあった。
そして、その手書き図面もまた美しい。建物の彫刻模様や、格子の線が極細に描かれているのは、神の域じゃないかと思う。ずっと眺めていられる。
2.建築当時の物語
展示では、それぞれの建築当時のストーリーがわかるようになっている。平安神宮は国家プロジェクト、琵琶湖疎水や小学校建設は地域あげての近代化プロジェクト、成功した事業家の邸宅。なぜ、その建築家が選ばれたのか。例えば、建築家の伊東忠太は、アジアの旅で施主と出会った。施主と建築家との親交関係など。
当時新築された小学校を紹介するモノクロのアルバムでは、着物をきた子供達が新校舎の前で集会する様子、皆でうがいをする様子(衛生活動をアピール?)などが写されている。新校舎が誇らしげなのがよく伝わってくる。
こうやって展示を振り返ると、どれも肝いりのプロジェクト、または施主の熱い思いで作られたものが多い。だからこそ、こうやって後世に建物が残っているのだろう。
3.時代を経て愛され続けている建物
そして、そのほとんどの建物が、現在も使われている。持ち主が変わったり、用途が変わったり、改修されたりしているが(小学校→芸術センター、事務所ビル→結婚式場など)、今も物語を刻み続けているところが面白いと思う。こういうのを「生きた建築」というようだ。今もなお、利用する人々によって新しい意味や価値が生み出されている。
その建物で使われている実物の家具も展示されていて、座ることができた。親しみを感じるし、自分が歴史につながっている感じもする。
4. 建築家の趣味、趣向、人間らしさ
もうひとつ、この展示で面白かったのは、建築家のスケッチブックや日記、手紙などがあったこと。
下の写真は建築家 藤井厚二の手紙。生き生きとした絵が楽しい。
一番面白かったのは、伊東忠太の妖怪の絵で、いろんな動物を合体させたような怪物が無数に描かれていた。(これは撮影不可だった。)それぞれ愛嬌があり、見始めると止まらない。他の見学者も、そこで何十分も足を止めていた。
建築家の人間らしい部分が垣間見れてとても楽しい。
↑藤井厚二のスケッチ
5.まとめ
建物と人との物語がよく伝わってきて、面白い展覧会だった。建築に詳しくない一般の人にも、わかりやすい展示でおすすめ。
新築時が最高の状態ではなく、こうやって人に愛されることによって、どんどん魅力を増していっているモダン建築たち。
先月、オンラインで視聴させて頂いた、イケフェス大阪でも、同じことを感じた。(現在も視聴可)
モダン建築の魅力に溺れる。