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【センスは知識からはじまる】

「すごい企画を出すにはセンスが必要でしょう」
「結局、方法云々ではなくセンスの有無」

サッカーをかじってた身としては、センスに関して死ぬほど悩まされた僕ですが、どうやらスポーツの世界だけではなくビジネスの世界でもセンスで悩む人が多いのでしょうか。

まあ、どんなことでもセンスが寄与しないことは少ないとは思います。
そんなにゲームをやってなかったせいか何なのか、スマブラは死ぬほど弱いし、絵心も感じたことはないし、些細なことでも「センスねえなあ」と思う日々です。

しかしどうやら、先天的な要素もしくは幼少期の経験に基づくものでしかないと思っていた「センス」は、理論的であり後天的に身に付けることのできる「スキル」の一つであるらしい。この本を読むとそんな風に認識が変わります。帯の紹介でも、阿川佐和子さんが「わかりやすくて、理論的で、面白いもの」と謳っています。

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『センスは知識からはじまる』

今はビジネスでもセンスが求められる時代であり、そのセンスの獲得について方法論を中心に、具体例を交えながらシンプルに綴っている。

著者としては、センスが先天的な得体の知れないものとして扱われていることに課題感を持っていた。クリエイティブディレクターである彼には、学生からビジネスマンまで皆がセンスについて誤認しているように見えており、それを改めるのが本書の核だと述べている。

センスとは「数値化できない事象を最適化すること」と定義している。なかなか抽象度が高いが、自分の体形や場に適した服を着たりするのがそれに当たると考えれば「センス」が捉えやすくなるのでは。逆に、「センスがない(悪い)」とはどういうことか。例えば、二郎のようなゴリゴリのラーメン屋に入ったとき。床が真っ白で、照明はシャンデリアで、タキシードを着た店員がテーブル会計する店だとしたら、「いや、センス」となるのではないだろうか。
気持ち悪い例になってしまったが、要は目的に沿うか(=最適化されているか)どうかがセンスの判断基準になるということ。

ではどのようにセンスを獲得するのか。タイトルでも示している通り、センスとは「知識の集積」によるものであるとしている。もっと言うと、「精度の高い情報を基に、感覚を言語化し形にする力」。例えば、次のどれが最もセンスのいい発言だろうか。

A 「福沢諭吉はすごい」
B 「福沢諭吉は慶応大学を作ったからすごい」
C 「福沢諭吉は、“日本を変えてやる”と中岡慎太郎たちが騒いでいた頃に、“次の時代には学問というものが必要だ”と考えて慶応大学を作ったからすごい」

皆同じ意見なのに、Cの発言が一番精度が高くて信用がある。だいぶ具体化したが、このような知識の差によって生じるセンスの差は多く見られるのではないか。

商品企画のアイデアでも同じく、情報の精度がセンスの質を左右する。何が良くて何が悪いのか。判断軸を持った上で、感情に起因する要素を的確に言語化できた先にセンスのある商品を生み出すことができると述べている。感覚やセンスを期待される彼のようなクリエイティブディレクターでも、「感覚的にこれがいいと思う」は禁句だそうだ。徹底した言語化が求めら、そしてそれには「知識の集積」が必要なのである。かの偉人、ジェームズ・ヤングも言っていた。
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

センスを磨く方法は2つ。1つはこれまで述べた通り、「知識の集積」。不勉強がセンス磨きの大敵である。

そしてもう1つは、「客観的になること」。

センスの判断は相手がする以上、主観や思い込みに囚われてはいけない。しかし思い込みの魔力は想像以上に強い。普段と違うことをするとか、興味のない雑誌を読むとか、知らない世界に飛び込むことが思い込み解消に効果的であると本書では紹介している。

ここ以外でも「客観性」の重要性はいたるところで述べられている。『地頭力を鍛える(細谷功)』や『論点思考(内田和成)』というコンサル志望者に大人気の思考法の本でも、いかに客観的に物事を見ることが出来るか、「メタ」の重要性を存分に語っている。今人気のサッカー漫画『アオアシ』でも、「高い目線で捉える力」が主人公アシトの特徴だし、ビジネスでもスポーツでもなんでも、どれだけ客観的に、物事を俯瞰して見ることが出来るかは非常に重要なことなのではないか。メタ繋がりでいうと、最近文庫化された村上春樹の『騎士団長殺し』はテーマの一つが「メタファー」である。もともと彼は暗喩表現で有名だが、その要素が特に色濃く出ているのが本作ではないか。あまりネタバレになるので控えるが、途中で出てくる「二重メタファー」という表現が今もどんな概念か自分の中で咀嚼できていない。助けて欲しい。

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脱線しかけましたが、まとめます。基本的に読みやすい本ですが、結局のところ訴求するメッセージは「センスがないからとか言い訳しないで、勉強しろ」みたいなことだと思います。時代の変化に伴い、今後はよりセンスが求められるよ、と。代表格としてiPhoneが取り上げられていましたが、皆が使う商品だけでなくビジネスマンの日々の仕事一つをとってもセンスが大事。そしてそれには勉強も大事。

「本当に簡単なことを、『これが重要だ』と認識し日々実践していくこと。センスは日々の研鑽で身につくものである」

これがセンスのエッセンス。

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