得意先とともに酒を「育てる」|私と麒麟山:常務取締役 漆原典和さん編 後編
こんにちは、麒麟山米づくり大学1期生のあさです。
日本酒がすき!という素朴な理由から入学を決意した2月下旬、入学手続き完了とともに米づくり大学広報部への案内をいただき、現在、受講生でありながら広報や企画にも関わらせていただいています。
今回は、麒麟山酒造 常務取締役 漆原典和さんにインタビューをさせていただきました。前編では、常務取締役としての漆原さん、後半では漆原さん個人の魅力に迫ります。
偶然会う人たちと関係性をつくる
――今後、どのようなお客様に商品を届けていきたいですか。
漆原さん:ヘビーユーザーの皆さんは当然ですが、日本酒を普段飲まない人たちに麒麟山を知ってもらいたいですね。いつかは阿賀町に遊びに来ていただいて、阿賀町の自然とそこで生まれるモノの営みを感じていただけるといいなと思います。
――この記事を読んで、漆原さんと飲みたくなった人はどうしたらいいですか?(笑)
漆原さん:まあ、順番待ちになりますかね(笑)。予約してもらって(笑)。
――完全予約制で、半年後あたりで日付も決めちゃいましょうか(笑)。「麒麟山米づくり大学」スピンアウト企画やりたいです。
漆原さん:最近は、新潟駅のTABI BARによくいますよ(笑)。TABI BARには、私用に伝辛カップ(※麒麟山の伝統辛口1合カップ酒)を冷やして置いてもらってますから(笑)。行くとすぐクボケン(注:TABI BAR店長)が俺を「麒麟山のヒトだよ」って紹介してくれて、コミュニケーションのきっかけを作ってくれるんです(笑)。そこからが腕の見せ所ですね(笑)
――すごく行きたいです(笑)。
漆原さん:新潟駅の改札階という場所柄、県外の人も多くて、本当にいろいろな方とご縁をもらっています。フラーっと行って、出会った人たちとおしゃべりして、その後一緒に飲みに行ったりして。
――ゼロ次会でTABI BARに行って、冷を一合空けて(笑)。えー、私も漆原さんと飲みたいな(笑)。
漆原さん:何の脈絡もなく会うじゃないですか。ああいうところ行くと。別に何か目的があるわけじゃなくて、偶然会う人たち。その関係性面白いですよね
――それは、営業時のコミュニケーションにも生かされていそうです。
漆原さん:そうですね。いろんな引き出しを持ちながら、「今日どこ行ってきたんですか」とかそういう話をね。話題をパラっとまきながら、話を膨らませていきます(笑)。
クレージーなことを正しく伝えるか、正しいことをクレージーにやるか
――県外の方は、麒麟山を知っていることが多いですか?
漆原さん:いいえ、知らないですね。知らない人たちにはTABI BARで麒麟山の伝辛カップ飲んでると「カップ飲むんですか!?」と驚かれます。実はそれが麒麟山を知ってもらう強烈なインパクトになっています。人と変わっていることをしながら、正統派なことをする(笑)。
自分が尊敬している人の言葉ですが、「クレージーなことをすごくまっとうなことのように伝えるか、正しいことをクレージーにやるか」その言葉に共感しています。ただし、一線を越えちゃうとただの変な人になっちゃうから気を付けないと。(笑)
――それこそ人の記憶に残りますよね
漆原さん:で、飲ませると「おいしい」と言ってくれます。カップ酒を飲んだことがない人たちは、大勢居るんじゃないですかね。カップ酒が生活に入り込んでくると、それだけで経験の幅広がりますよ。除雪したときに飲もうって思いますよ。ビールじゃなくてね。
――漆原さん個人のこれからについては、いかがですか?
漆原さん:今53歳なのでまだ会社には在籍しますが、基本的には次世代のバックアップに回っていきたいと思ってます。今は、営業部長としては営業方針の方向性の確認や案件の判断などがウエイトを占めています。常務としては社外との折衝、社員教育やリクルートなどにも取り組んでいます。
仕事のかたわら、会社の周辺緑化に取り組んでいます。今コキアなどの種をまいたばかりですが、会社を明るい雰囲気にして、将来的にはモミジや雪椿の苗木を育て、植えたり周囲に配ったりしたいんですよね。今、麒麟山では森づくりの活動をしてるんですけど、他から持ってきている苗木を、できれば自分たちで育てたりできたらと思っています。ブナや杉、あとはモミジやさくらの苗木を育てて地元の方々に配ったりとか。もっと緑豊かで、色鮮やかな明るい街にしていきたいですよね。
――森づくりについて詳しく教えてください。
漆原さん:麒麟山の仕込み水は、常浪川(とこなみがわ)の伏流水を汲み上げたものです。その水源は、御神楽岳(みかぐらだけ)の森です。その森を大切に次世代につないでいくため、森づくり事業を2010年から続けています。今年で14年目ですね。ここ麒麟山本社から車で40分、歩いて10分のところに、5,000本くらい杉とブナとを交互に植えました。毎年、生育確認をしに熊鈴(クマ除けのスズ) をつけていくんですけど、杉なんか小さいものから2mくらいのものまで場所によって生育状況は全然違うし、他の木が生えてしまうと日が当たらないから全然育たない。5,000本植えたうち、多分1,000本残ってるかどうかぐらいですね。道のりは長いですね。自分が現役の時には終わらない。何十年、何百年と続けないと。
あるものを活かし、酒造りを継いでいきたい
――酒づくりって自然と共にあるものなんですね。
漆原さん:そうですね。阿賀町にはそれしかないですからね。例えば、雪とかも売ってもいいかなと思ったりします。雪だるまに、真空パックした酒を詰めて発送するとか。雪を見たことない人は買いたくなるんじゃないかな。
――それは面白いですね。
漆原さん:これまで厄介物扱いだったもの、今まで捨てていたものを活かして売ったりしたいですね。麒麟山米づくり大学の学生さんと「雪を活かした売り方を考える」会をやって、そこで出たアイデアを試してみたりしたいです。
――雪かき後のワンカップも、忘れずにですね。
漆原さん:それはいつでも歓迎ですね。雪かきは重労働ですけど、最初にワンカップを雪に突っ込んでおいて、汗かいた後にワンカップをキューっとね。
――それはぜひやりたいです。米づくり大学で呼びかけてみますね。
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編集後記
漆原さんのお話一つひとつが魅力的で「一緒にやりたい」と感じました。
得意先と一緒に酒を育てる話、自然とともに森や苗木を育てる活動や、麒麟山酒造だけでなく阿賀町全体としてどのように酒造りや森づくり、そして暮らしを継いでいくのか。それは自分が現役の時には結果はわからないかもしれないけど、という話が非常に印象的でした。
私たちも麒麟山米づくり大学1期生として、何かあるものを活かした売り方や活動を考え、実践していこうと思います。まずは真冬の雪かき+冷酒ワンカップの回を企画します。
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