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ミックステープ 03 B面:4曲目 Easy Fun / gglum(イギリス) The TAPE 03 - side B

ミックステープ:パート3、B面の4曲目。

https://www.mixcloud.com/kiichi-ogura/komemx-the-tape-03-side-b/

  1. My Dear Pig / Cocco

  2. Radio Puppet Show Love / Pete Willson & the Rooks

  3. What Were We Thinking / Tyvek

  4. Easy Fun / gglum

  5. Party / Prophet

  6. Sex, Violence, Suiside / Amaarae

  7. Remember / TNT

  8. Black Cloud / Converge

  9. For Tomorrow / Doug Tuttle

  10. ghosts / yeule

4. Easy Fun / gglum

私のプロフィールでも触れているが、この note は千葉県の房総半島から発信している。房総半島と聞けば温暖なイメージを思い浮かべるだろうが、初冬となればグッと冷え込む。特に内陸にあっては風の影響を受けにくいため、放射冷却現象が起きやすい。だから、房総の低い山々も一丁前に紅葉する。

昨日、仕事で幕張へと車を走らせた。富浦インターチェンジをくぐり、ほどなくして有料道路の外にある色づき始めた山々が見え始めた。紅葉といっても房総の山にはモミジが少ない。マテバシイの緑をベースに、既に真っ赤になっていたり、まだ緑と赤のグラデーションになっているモミジが点在していて、それがまたいい。

そんな景色を眼前に広げつつ、ドライブのBGMという理想的な環境で、今回紹介する gglum のデビュー作を改めて聴いてみた。

gglum ことエラ・スモーカーはロンドン出身。若干21歳でデビューアルバム「The Garden Dream」をリリースした才能溢れるインディーポップ・ミュージシャンだ。様々なスタイルのモダンロックを取り入れて、時にダークに、時に繊細に、実験的な要素も取り入れながら耳アタリの良い楽曲を書くのが特徴だ。

そして何より私が好きなのがボーカルスタイルだ。楽器を引き立てる声、もしくは、演奏を引き立てる声、と言ったら良いだろうか。自然体の発声で、演奏陣の前へ出てくることはまれ。まるで紅葉のモミジを際立たせる緑の木々の役割をメインボーカルが担っているかのようにも思える。

ミックステープの4曲目に選んだ「Easy Fun」という曲はその特徴が際立ったパターンと言える。終始、エラ・スモーカーのつぶやき声が、抑制されたメロディーに乗り淡々と進行する。コーラスで音圧がかかる時ですら本人は同じ調子を保ったまま、バックコーラスが前に出てきてメインフレーズを替わりに歌うという、ちょっと珍しい構成の曲だ。こんなちょっとした実験精神に、ロックを愛する者は惹かれてしまうことになる。

ところで、近年、女性のロック・スターが花盛りである。全世界での人気を誇るオリビア・ロドリゴ。マタドール・レコードから期待の新星としてデビューしたスネイル・メイル。どちらもパッと聴きポップに近い印象を受けるが、ルーツにはパンクとオルタナティブ・ロックがある。一方、オーストラリアではストレートなロックンロールが席巻していて、なかでもエイミー・テイラー率いるアミル&スニッファーズが新作でメジャー・ブレイクの兆しだ。


音楽史を振り返ってみても、ここまで女性アーティストが女性性を売りにすることなく、またはイコンとして担がれることなく、ロックの強度を持って自らの音楽性を追求し、なおかつ大きな成功を収めていることが当たり前になっている時代はあっただろうか。

スリッツが台頭したポストパンクの隆盛や、スリーター・キニーやビキニ・キルを発掘した90年代のライオットガール・ムーブメントも思い浮かぶが、メインストリームの音楽に対するアンチテーゼとして、アンダー・グラウンドのうごめきの中から表出された現象であっただろうと認識している。(もちろんそっちの方がカッコいいし、大好きではあるが)

今後、gglum が、この大きな波に乗って、どの様な強度でスターダムへと登ってゆくのか。このままでいてほしい気もするし、また違った殻の破り方も期待してしまう。次作以降が早くも楽しみで仕方ないアーティストである。


次回は5曲目、新旧ブギーレジェンドのコラボ曲。

ミックステープはMixcloudで公開中。

The TAPE 03 side B


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