環境改善の概念とテクニック 美味しいお米の育てかた#032
田んぼでの直接効果を狙った肥料とは別に
間接的な環境改善を狙って
肥料資材を使用するパターンを紹介します。
え?自然栽培なのに肥料使っていいの?
と驚く人もいるかと思いますが
「イイんです!!」
肥料資材の役割と適材適所適期
日本の農地に関して言えば
明治期から戦後、現在にかけての化学肥料や殺虫剤、除草剤の使用で
土壌の生態系が崩れてしまっている圃場も多々あります。
そこで
栽培初期の状況によっては
肥料資材(特に菌や植物性有機肥料を推奨)を使用し
土壌の代謝力を活性化し
また、残留している肥料分などの代謝を促し
土壌の生命圏を再構築して地力を引き出すこともあります。
この手法は初期に限定され
そのあとで田んぼの生態系を本来のバランスに任せるという方法です。
これは一見、自然栽培のプロセスに反するように思いますが
土壌を甦らせるためには
初期の段階では必要な圃場もやはり存在します。
何も投入しないことが自然栽培なのではなく
その場の状態を把握して
自然のバランスを獲得、あるいは
保とうとする栽培コンセプトが
自然栽培と呼ばれる所以であると考えています。
また、この場合、必要なのは
土壌環境の整備のために資材の役割を限定して
適材適所適期に使用することが重要だと考えています。
構造改善と環境の呼吸
また、田んぼは元来、自然の地形に沿って作られてきました。
しかし、機械に伴う構造改善により効率を重視するあまり
用水路の入水排水口の位置が
周辺地形から見る水の流れを無視した配置になっていたり
U字溝や道路などのコンクリート、アスファルト
さらには草刈りを嫌って畦までコンクリー トにしてしまっているなどにより
その付近の土壌の呼吸が滞り
土の中の状態が湿度の高い嫌気性の状態になってしまっていることがあります。
構造改善によって機械の取り回しが楽になり
効率が上がったという点においては恩恵も非常に大きいのですが
自然の流れを無視した構造は
植物の生育や周辺環境にも影響を及ぼします。
そこに古来より受け継がれてきた治水の観点を加えることにより
滞った状態を解消し
より生態系が豊かになる田んぼにすることができます。
この方法に関しては以下の取り組みや専門家の観点が
自然栽培を実践する圃場の環境改善には非常に親和性が高く
是非とも取り入れていただきたいアプローチです。
よくわかる土中環境 イラスト&写真でやさしく解説 単行本 高田宏臣 (著)
映画『杜人 ~環境再生医 矢野智徳の挑戦』
土中環境と生物多様性を繋ぐ、坂田昌子さんの『内なる自然』の概念について
↑ こちらはすぐに読むことができます!環境改善の話より社会論ですが超超超オススメ!!
資材の位置付け
人間が社会生活を営む以上
例えば、田んぼを埋め立てた住宅地にベタ基礎の家を建てるな
とは言えません。
しかし、建てる代わりに周辺環境に配慮した治水の工夫があれば
バランスが取れるのではないで しょうか。
また、田んぼや畑で空気の流れが滞って
いつもじんわり湿って乾かないような個所があれば
空気と水の流れを意識し、溝を掘ったり
バケツくらいの大きさの点穴を掘ったりします。
ただの穴ですが、その段差によって
みるみる乾いていきます。
そのほか、畦ぎわが乾かない場所の例ですが
畦の内側を掘って、もう一つ畦を作ることで
冬によく乾く田んぼになり
土質が柔らかくなっていき
稲の生育がみるみる良くなっていくこともあります。
稲の生育に直接影響しない
田んぼの角などに炭を入れて
長期的に呼吸を保つような隙間をつくり
滞っている土壌の性質を改良する方法もあります。
これらの方法はまだ一部ですが
自然栽培以外にも活かすことができます。
そして自然栽培との相性も抜群に良いので
ぜひぜひ体得していただきたい概念と技術です。
続く
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