#53. お引越しの日
今日はお引っ越しの日。
ー福島での最後の朝ー
朝目が覚めて、トイレにムクっと起き上がる。
いつもと何ら変わらない朝なのに、
なんだか今日は心寂しいような、でもどこか晴れ晴れした気分でいる。
カーテンを開けると、見慣れた田んぼと朝焼けがふわっと私の心を包み込む。
そう。私が1番最初にこの部屋に住むと決めたのも、窓越しに見える田んぼがとても美しくて、一瞬にして心惹かれたからだった。
朝四時に起きた時の田んぼに差し込む陽の光も、夕方から夜にかけて、水色と黄色の空からピンクのグラデーションが生まれる夕日も、
私の背中をそっと押してくれた。
ー引っ越しで1番困ることー
そして、
引っ越し準備をする中で1番困るのが、
"物を減らす"作業。
私は昔から根っからの「もったいない!」精神が強固に備わっていて、中々物を捨てられない性分だ。
そして、物への愛着が半端ない。
私が今密かにリュックの中に入れて持ち歩っているキーホルダーは、
今年で20年目になる。
6歳の時に母に買ってもらった、
とうもろこしのキーホルダー。
緑の葉っぱを剥くと、中から顔が描かれた黄色いとうもろこしが出てくる。
その様子が何とも可愛くて、
ずっと肌身離さずに持っている。
26歳になった今でも6歳の時から大好きなものが変わっていない、というのは、もはや誇らしいのか、ちょっと恥ずかしいのか分からない。でも、こんなに長く愛せるものがあるって、ちょっとした幸せなのかもしれない。
でも、、このような物たちは、このとうもろこし君だけに及ばず、ほかにも沢山いる訳で…
友達から小学生の頃にもらったプレゼントも、その時の嬉しかった気持ちがずっとその物に宿っていて、絶対に捨てられないし、
だからこそ物が溢れかえってきてしまう。
ただ、最近よく本屋さんで見かける、
"シンプルな暮らし"というテイストの綺麗でさっぱりとしたお部屋に憧れて、断捨離をすることを決意した。
ー断捨離に挑戦してみるー
まずは断捨離をするために、
断捨離の本を2冊購入。(こういうとこ)
そこに書いてあった一つの方法にすぐさま心惹かれる。
「15分間で27個捨てよう!」というものだった。
27個?!?
そ、それはいくらなんでも無理じゃ…???
と思いつつも、ひとまずやってみる事に。
まずはタイマーを設置。
15分から次第に時間が減ってくるタイマーを横目に、焦り散らかす。
あ、やばい時間ない。早く捨てていいものを見つけなきゃ。。
ゴミ袋を片手に持ちながら、
捨てられそうなものを探す。
ゴミを見つけなきゃ、と思うと全く見つからないのに、捨てて良さそうな物を探そう!と思うと効率よく捨てるものを見つけていける。
そうして、15分間で捨てた物は、なんと…
45個だった。
やるやん、私。
と少しドヤりたくなった。
いつか使うかもしれない。
大切な思い出が詰まっているからまだ捨てたくない。
そんな気持ちになって、中々物を捨てられずにいたけれど、
「もう十分よく頑張ってくれたよね」「ありがとうね」と思いながら物たちとお別れをしていくと、次第に気持ちも落ち着き、満たされた気持ちで断捨離をする事ができた。
ー引っ越しで気付いたことー
断捨離は「寂しい作業」だと思っていたけど、実際には「感謝を思い出させてくれる時間」なのかもしれない。
新しい生活を迎える前に、今までの物たちにそっとお別れをして、ありがとうを伝える。
その一つ一つが、自分の中の「手放す力」を育ててくれているような気がする。
与えられた物たちが、こんなに温かい気持ちをくれるとは思わなかった。
今日は、自分が積み重ねてきた小さな思い出たちに、そっと感謝を込める一日だ。
ーお別れと共にー
荷物を運び終え、がらんとした部屋にひとり立つと、不思議と心が温かくなった。
この部屋で積み重ねた日々とたくさんの思い出たちが、私をここまで支えてくれたんだな、としみじみ感じる。
「今まで本当にありがとう。」
そうつぶやき、最後に静かに一礼する。
これからの道には、まだ見ぬ景色や新しい出会いが待っている。
だけど、ここで過ごした時間も、そして一緒に歩んできた思い出たちも、ずっと私の中に生き続ける。
少し身軽になった分、
もっと軽やかに未来へ向かっていけそうだ。
心の中で、そっと背中を押してくれるような温かさを感じながら、
私はまた、新しい一歩を踏み出した。