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ひとりで登れるもん!?

双石山(ぼろいしやま)を九平登山口(ここのびら とざんぐち)から登った。初めての宮崎ひとりトレイルラン。岩場のない易しいコースを、平らな場所だけ走って、それ以外はすべて歩いた。というか歩き以下だったのだが、道中で出会った方々のおかげで総じて楽しかった。

宮崎の小学生が遠足で行くとうわさの双石山。いくつかのルートのうち、アドベンチャー要素のほぼないところを選んで入山した。楽しむ以前に、初心者のわたしはとにかく道に迷いたくないのだ。

まずは登山口の鳥居で井戸端会議…いや、登山口端会議をしていた女性3人に元気にごあいさつ。山登りに慣れていそうなオーラを感じたのでアドバイスを乞うと以下の4つの助言を授けられた。

①虫が多い。長袖必須
②分岐のところで風が変わると虫は減る
③神社の参道は滑る
④ヘビも出るから竹の杖で倒せ

なるほどなるほど!よし!
ランニングの出で立ちでありながら私は竹の杖を手に取り、ヤバかったらすぐ帰ります!と心から誓って一歩を踏み出した。

九平登山口から姥ヶ嶽神社までは丸石を敷き詰めて固めたような参道が続く。直前までパラパラと降っていた雨のせいでツルツル滑って、トレランシューズを履いていてもこんなに危ないのかとびっくりした。

姥ヶ嶽神社では、山登りの格好ではない人々が社殿に座って祝詞を聞いている。わたしはそっと社殿の外から祭壇に向かって頭を下げ、続きを歩いた。そう、歩くのだ。走らずに。

社殿の背後から少し降りて、御神水の小川を過ぎたあたりからは虫がたくさん寄ってきた。虫除けをふってきたのに蚊が顔にもまとわりつく。たまに大きいアブハチブヨ系も近づいてくる。こうなると養蜂農家の帽子がほしいと思う。

走れば虫に追い付かれないだろう、そう思っていた時がわたしにもあった。しかし走ったとてすぐ止まってしまうのが現実。そして止まった瞬間に奴らに囲まれる。なので結局、持続可能な速さでサクサク歩いた。竹の杖を真田幸村の槍のごとく(注: 本人の視点)振り回しながら。

本当に暑い。ノースリーブで出てきたのに、暑くてお茶がなくなりそうだった。だが、ようやく分岐に出ると風が吹き抜けてさわやかな気持ちになり、まとわりついていた虫はほとんど散っていった。登山口の三賢者の告げた、風が変わるというのはきっとここのことだ。

そこからは登りが格段に楽になり、モヒカンの尖った部分のようなところを(これは尾根づたいと言うのだろうか)進んだ。道がわかりやすい。このルートを選んだ自分よ、ほめてつかわす。ある程度安全そうな道では、少し走ってみた。これまた爽快な…!汗だくでも気にならない。

調子よく登ったところで「双石山山頂→」の小さな立て看板を見つけた。よかった、合っていた。その先の山頂では2人の登山者がランチを始めるところだった。ここでも元気にごあいさつ。

2人は別の登山口から2時間かけて山頂へやってきたという。おそらく天狗岩のあるアドベンチャーコースだろう。こちらはアドベンチャーなしコースで片道50分くらいだったので、倍も、と思うと本当にすごい。初対面だったがためになる話題ばかり。楽しかったし、ありがたかった。またどこかの山で。

山頂で私は小さなリンゴ、ニュージーランド産のジャズという品種らしいが、それを5分ほどでかじり終え、スポーツバイオ茶を少量飲んで、また元の登山口へとんぼ返りだった。

帰りは道がだいたいわかる分、本当に気楽だ。今度はフード付きの半袖パーカーを着ているので、顔回りの虫も気にならない。時々写真を撮りながら悠々と降りていった。

行きと違ったのは、というか行きに気づかなかったのかもしれないが、動物のフンが登山道の真ん中に何ヵ所もあったことだ。コロコロ系ではないのでシカではなくイノシシだろうか。わたしが通ったあとに、マーキングのつもりでお土産を置いていったのか?わたしはすぐ出ていくので気を悪くしないでおくれ。

下りで滑りそうになりながら、また姥ヶ嶽神社に戻ってきた。参拝客はもういない。きょうは神事があったんですか、と宮司さんに問いかけると、本日は夏越の祓でした、と。しまった、こんな質問をするなんて無教養の極み。だが宮司さんはひとつも嫌そうな顔をせず、神事の内容や参拝の仕方を教えてくださった。

おどろいたのは、共通の知り合いがいたことだ。その宮司さんと、実家の近くの神社の宮司さんとが顔見知りということだ。よく考えれば神職の方同士で交流があるのは普通か。その人に会ったらよろしくと、そう託されて残りのルートを下りた。

実は実家のほうの宮司さんともこのごろお会いしないので、いい返事をしたものの、伝える機会がない。どうしたものか。まぁ、次に登ったときに言い訳を考えよう。

ツルツルの丸石地獄を終えると、待ちに待った登山口。ここでは男性がひとり、汗だくで休憩していた。佐土原から自転車で椿山森林公園に行くとかで、あまりに遠いところから来ているので「さささささ佐土原!?」と、翔んで埼玉の檀ノ浦百美のようなリアクションをしてしまった(ととととと所沢!?)。ナイスチャレンジ、ナイスファイト。本当にすごい。

椿山森林公園への道と佐土原への帰り道、どうぞご無事で。登山口から姥ヶ嶽神社に向かって一礼してその場を後にした。

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