平成少女のタイムアタック①
私の地元は、1時間に1本の電車とジャスコと田んぼだけがある田舎であったため、小学校から家までの片道2kmという距離を毎日徒歩で通わなければならなかった。
隣のクラスの戸川さんは、ちびまる子ちゃんの登場人物である花輪くんのように、毎日爺が迎えに来ており(爺自体は白髭スーツではなく薄毛漁船チョッキだった)、なんとも羨ましいものであった。
お気に入りのシールを戸川さんに献上するという条件付きのもと、何度か乗せてもらったこともあった。歩いている小学生たちの横を勝ち誇った顔で颯爽と通り抜けていったあの感覚は今も忘れられない。
だがハッピーセットでついてくる戸川さんへのシール献上が辛くなった2年生頃からは、現実を受け止め、徒歩でいかに早く家に帰れるかというタイムアタックをするようになった。数名の体力自慢の女子たちとともに近道を開拓しまくり、生い茂る木の中や知らないおばさんの家の裏庭、用水路などを颯爽と飛び越え、とにかく最短ルートを突き進んでいった。
だがある日のタイムアタック中に、用水路を飛び越えるという比較的簡単な場面で、足を踏み外すという失態を犯した。部隊のみんなに見守られる中、用水路から這い出てきた私は、パンツまでももれなく水浸しになっていた。
春風が吹く心地よいお昼時、鳥たちは楽しそうに水を浴びる。その横で、家まで残り1kmという最悪な状況を理解した私がとった行動とは、、、
ー2に続く