色鉛筆が教えてくれた、彼が見ている世界。
月曜日。臨時休校中の息子の小学校から、1週間分の課題を受け取った。1週間の時間割表、国語、算数などのドリルに、歌の教科書。そして、アサガオの栽培キット。
懐かしい。今の小学生も、やっぱり最初はアサガオなんだ、と思った。
初めてのアサガオ栽培と観察日記。
まずは一週間。時間割に沿って課題をこなして、次の週の月曜に課題提出。すると、また新しい課題が出るらしい。学校も大変だ。
到底、1年生なりたてほやほやの息子に、
時間割通り計画的に課題をこなす、なんてことは難しい。
先食い(おもしろそうなのを先にどんどんやる)、塩漬け(苦手なのはずっと置き去り)、お替わり(やったのをまたやる)…、何でもありだ。
いい、それでいいよ。自分のペースでやって、最後に全部とりあえず終わっててれば、と思う。彼を見ていると、つくづく、小さい形をした自分そのものだな、と思う。
その課題の中で、彼が並々ならぬ興味・関心と情熱を注いでいるのは、やはりアサガオの栽培キットだ。
早く種を蒔きたい、水を毎朝あげたい、明日には芽が出てほしい(出ません)。
育てるのが、楽しみで楽しみで仕方ないようだ。
一昨日は、土づくりと種の観察。
まずは、その様子を「あさがおにっき1まいめ」と書かれた紙に、書いていく。
「なんか、みかんの粒みたいな形だねぇ」
「黒じゃないな、なんか灰色?青?」
「匂いはしないみたい」
紙には、観察した種の絵をかくようになっていて、息子は、石ころみたいな種をじーっとみながら、鉛筆で絵を描いていく。真剣だ。
というのも、その前の晩に、恐竜博士になるのが夢の息子(憧れは、ダイナソー小林こと北海道大学の小林先生)へ、主人が言った「恐竜博士は、ただ発見するだけでは、ダメなんだ。見つけた骨の観察をじっくりして、それをきちんと記録に残すのも恐竜博士のしごとなんだよ」の言葉に、早速触発された様子。
息子の色彩感覚。
その後に、色をぬっていく。
その時、わたしは、彼が選んだ色鉛筆を見て、
はっとした。
あぁ、彼にはこの種が、こんなふうに見えているんだ。
灰色、濃紺、薄紫。そのあとに、赤いのも見えると言って、朱色と橙色の間みたいな色鉛筆も持ってきた。おもしろい。同じ種を見ているのに、こんなにも捉え方が違うんだ。何となく、わたしにもそんなふうに見えてきた。
うちには500色の色鉛筆がある。
色が好きで、わたしが独身時代にこつこつ集めて、もともと部屋に飾っていたもの。
でも、いつか子供ができたら、プレゼントしたいと思っていた。
その細やかな夢が叶い、この色鉛筆たちは、息子の5歳の誕生日にプレゼントしたものでもあった。
種まき。
翌日、目覚まし時計よりも早く、息子が起きてきた。
「お水をあげなくちゃ!」
土が乾かないように、と説明書きに書いてあったことを覚えていたようだ。寝癖あたまが、妙にかわいい。
朝ごはんを食べた後に、種を蒔くことに。
着替えをしてきた彼が、今日選んだ服は、保育園の「アサガオ組」の時に、クラスのみんなで作ったアサガオTシャツだった。
こういう、こだわりもやっぱりちょっと自分に似ていて、つい笑ってしまう。
元気に咲きそうな種を5つ選ぶ。土にかわいい指で、5つの穴をぽつぽつ開けていく。ころんと、ひとつずつ種を蒔いて、ふんわり優しく、上から土のふとんをかぶせて、お水をあげて出来上がり。
「明日には、芽が出るといいなぁ」
そして、その様子を「あさがおにっき2まいめ」の、紙に書いていく。
今日、彼が選んだ色も、やっぱり好きだな、と思った。
どんな色を見せてくれる?
夏を迎える頃。どんな色のアサガオが咲くだろう。わくわくする。
わたしは、青紫がいいな、と言った。
息子は、赤か緑(あるの?)がいい、と言った。
その時、彼はどんな色の鉛筆を選ぶのだろう。