ヘイボン
私が幼稚園児か小学校ぐらいであったか、やたら吠えたてる犬が近所にいた。
そこは一本、路地を入って裏通りになる。
くさりもしっかりついていて、絶対に自分に飛びかかってくることはない。
なのに何故か私は怖かった、恐ろしかった。
友達の家まではすぐそこ。
裏路地に入れば犬のために時間がかかる。
私は純粋無垢アホな子供であった。
何故かそこを通ると近道だと思い込んでいたのだ。時間が短くなった気がしていた。
表通りだと犬に吠え立てられることはない。
なのにわざわざ裏道を使い「わあ〜めちゃくちゃ近道みつけてもーたあ、天才〜!」と喜んでいたのだ。
くさりがついていても犬が怖いので通る時は大人が来るまで待ち来た時に一緒に通る、知り合いが来たら一緒に通る、等といろいろと工夫しては「私ってなんて賢いの!?」っとも思っていた…。
大馬鹿である…。
当時の私をもしその場で見かけたらきちんと教えてやりたい程だ。
しかし…それもしばらくすると気づく。
ある日、犬との格闘(闘ってない)を終え帰ったら、門限を越えていてえらく叱られたのだ。
門限は17時、5分前行動なので16時55分が門限である。
犬との格闘(闘ってない)の末、近道をし帰ってきたのに何故か時間が越えていた。
何故?
そして気づく…犬と格闘(闘ってない)してたから時間がかかったのか…!
親に近道して犬との格闘(闘ってない)の事情を話した。
すると更に叱られた。
そしてその道を使うことを禁止された。
自分が天才ではなく凡人だと知った瞬間だった…