不朽の名作『ローマの休日』|映画鑑賞
言わずと知れたオードリー・ヘップバーン主演代表作、『ローマの休日』。両親がリビングで見ている中自室に戻る娘だった私も、ようやくこの映画に興味を示すようになった。
とは言えあまりに有名な作品のため、真実の口のシーンやラストの記者会見の場面は何度か見たことがあった。ただ、全編通してきちんと見たのは、今日が初めてだったように思う。
ご存じの方も多いと思うがあらすじ紹介。
大いにネタバレを含むため、万が一知りたくない方がいたらブラウザバックを。
ストーリー
王女の脱走と二人の出会い
自由のない暮らしに嫌気がさした王族の第一後継者”アン王女”(オードリー・ヘップバーン)は、滞在中のローマで、ある夜こっそりと城を抜け出す。”よく眠れる薬”を打たれていた王女は道端で寝てしまうが、そんな彼女に偶然声をかけたのが、新聞記者のジョー(グレゴリー・ペック)だった。家に帰るよう何度も説得するが、半分夢心地で家の住所も答えない彼女を、結局家まで連れて帰る羽目になるジョー。
翌朝新聞の一面を飾っていたのは、「アン王女体調不良」「記者会見中止」の文字。その横に添えられた写真で初めて王女の顔を知ったジョーは、自分の家にいる正体不明の彼女が城を抜け出した”アン王女”であることに気づく。
これは一大スクープになる、と職場で支局長と記事の報酬金額を約束したジョーは、再び自宅にいるアン王女のもとへ戻り、職を隠して、ローマの街で彼女との一日を過ごす。スクープ写真の撮り手にカメラマンの”アーヴィング”(エディ・アルバート)も連れて。
アン王女も自身を”アーニャ”と名乗り、身分を隠して自由を手に入れた時間をめいいっぱい楽しむ。
”ローマの休日”
はじめに市場でサンダルを買い、美容室で髪をバッサリとカットする。スペイン広場でジェラートを食べ、カフェでまったり。ジョーのスクーターで街を大暴走して警察のお世話になったり、真実の口に恐る恐る手を差し伸べてみたり。夜のダンスパーティーでは王女を探しに来た秘密警察に取り押さえられ、逃げ出すために乱闘騒ぎ。追っ手をギターで叩き倒す王女をアーヴィングはしっかりとカメラに収めた。
すんでのところで逃げ切った王女とジョー。二人は口づけを交わし、お互いに惹かれあっていたことを自覚する。
別れの時間
再び自宅に戻ってきた二人を迎えるラジオからは、”体調不良の王女の続報がないため、国内からは重体なのではないかと不安が広がっている”との報道が流れる。そっとラジオを切った後、戻るべき場所はどこなのか、自分の役目はなんなのか、本当はとうに分かっていたことに、再び向き合い直すアン王女。
王女を城の前まで車で送り届けたジョーは、「最後に言わなければならないことがある」と、口を開くが、彼女は「何も言わなくていい」と返し、熱い抱擁と共に切ない別れを果たす。
書けなかったスクープ記事
翌日王女失踪の噂を聞きつけた支局長がジョーの家に駆け付け、「記事はどうなった」と興奮した面持ちで訪ねてくるが、「そんなものはありません」と返すジョー。その後昨日の写真を持ってきたアーヴィングが支局長に意気揚々と写真を見せようとするが、止めに入るジョー。納得いかない様子ではあるものの、「今日の記者会見に行って記事を書いてこい。それくらいならできるだろう」と言い残して、去っていく支局長。二人は王女の”復帰”の記者会見に向かう。
記者会見
報道陣向けの会見の場にジョーとアーヴィングを見つけ、目を丸くする王女。「一番気に入った訪問の地はどこですか」との記者の質問に、仕え人が「それぞれに…」と耳打ちをするが、アン王女は用意された無難な回答をやめ、「ローマです。この日のことは一生忘れないでしょう。」と答え、ジョーの方に視線を送る。
最後に報道陣へ直接挨拶をと、アン王女は普段行わないであろう、壇上から降りての挨拶を望む。アーヴィングの番になると、「ローマご訪問の記念の写真です」と言い、スクープ記事にするはずだった写真たちを彼女に渡す。封筒の中にある”追っ手をギターで叩く自身の写真”を確認し、「ありがとう」と返す。「ジョー・ブラッドレーです」と、初めて会った時のように自己紹介をするジョー。「お会いできて光栄です」と、アン王女はそつのない返しのなかに、精いっぱいの気持ちを込める。
記者会見が終わりアン王女が去ると次々とはけてゆく記者たち。そんな中、ひとり名残惜しそうにその場に残るジョー。たった一日の彼女との”ローマの休日”に想いを巡らせ、ゆっくりと宮殿から立ち去るのだった。
感想
令和の今見ても色あせないストーリーに、白黒の画面に負けないオードリー・ヘップバーンの美しさ。不朽の名作と言われている意味をまざまざと実感しながら充実感のあるひと時を過ごした。
美容室で王女が髪を切るシーンは、綺麗なロングヘアに未練のない潔さとショートカットのお似合い具合にときめきを覚えるし、王女として城に戻った後の凛としたドレス姿はカッコよくも美しい。それにも関わらず、ジョーと”休日”を過ごす彼女は、どこからどう見ても幸せなひと時を楽しむ”少女”そのもので。見ているこちらまでも幸せな気持ちにさせてくれる。
最後の記者会見のやり取りもセリフがお洒落でとても好き。でも個人的には、車の中での別れのシーンが、情熱的でもっと好き。何と言っていいのか分からないと言って、最後のお別れの言葉を言わずに去るアン王女と、彼女がいなくなってから、すぐには車を出せずにいるジョーの切ないシーン。これこそ言葉を尽くすと陳腐になってしまうのかもしれないから、ここまでにしておこう。
とにかく言えることは、時間をおいてもう一度見たいということ。
前回見た『麗しのサブリナ』に続き、すっかりオードリー・ヘップバーンの虜になってしまったようなので、次回は『ティファニーで朝食を』に手を出したいと思う。非常に楽しみである。