小説|大きな主語霊
夜道を歩いていると、あなたは老婆に引き止められます。「霊に憑かれているね」と老婆。真に迫る声です。あなたは立ち止まりました。老婆は続けます。「それも大きな霊だよ。こいつは主語霊だね。大きな主語霊だ」
聞けば守護霊とは異なる霊であるようです。この霊に憑かれた者は大きな主語でものを語るようになると老婆は話しました。たとえば自分より年下の人の行いを見て「最近の若者は」などと主語を大きく語るようになると。
男はこうあるべき。どうして女はこうなのか。あの国の人はこうだから。大きな守護霊に憑かれていると、こうした主語の大きさに違和感を覚えなくなるそうです。人は愚かだ、世界は汚い、などと平気で話してしまうと。
どうすればよいですか? あなたが尋ねると老婆は微笑みます。「大きな主語霊に気づいたことが第一歩。あとは正しい主語を使うように心がければ霊は消えるよ。私は、あなたは、彼は、彼女は、と。同じ人はいないから」
ショートショート No.351
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