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本に救われた過去の私へ

秋と本が、どうしようもなく好きです。読書の秋と言いますが、秋でなくとも本は好きですし、本がなくとも秋は好きです。

昨日、秋の高い空の下で街を散歩していて、私はお気に入りの古書店へ向かう道中、花屋さんに寄りました。自然を眺めながら読書をしたいと思ったからです。

photo by Komaki Kosuke

買ったのはユーカリ・グニーの枝物です。ドライにすればきれいなまま長持ちするので、おすすめですよ。やさしいグリーンが好きです。見ていて心が落ちつく色合い。

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あわせてガーベラを買ったのですが、花屋さんがバラもおまけで差してくださいました。いつもおまけをつけてくださり、ありがとうございます。

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まずはユーカリを生けます。部屋が明るくなりますね。午前中の日差しに葉がきらめきます。花瓶のガラスと水にゆらめく光も、秋らしく爽やかに思われました。

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ガーベラとバラも生けました。おまけでいただいたバラのほうが色が強く、主役のようです。これはこれで、よいではありませんか。

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古書店で買ったのは、リルケとブレヒトの詩集です。ふだん詩はあまり買いませんが、なぜだか読みたくなったのです。

私はジャンルを問わず、心赴くままに本を手に取るのが好きです。じぶんが知らない分野の本ほど、心が踊ります。頁を繰るたび、知らない世界に色がついていくような感覚が、どうしようもなく好きなのでしょう。

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ちゃっかり、おやつも買っております。カルディで買いました、NOUGATELII COOKIES というオランダのお菓子です。私はお菓子を「ジャケ買い」しがちです。パッケージに惹かれて買ってしまうことがよくあります。思えば少しだけユーカリの色に似ている気もします。

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小分け包装などという小細工はしません。どかんとでっかいクッキーが袋にそのまま入っているあたりの外国のお菓子らしさが、またよいのです。

photo by Komaki Kosuke

甘いチョコクッキーがあるのですから、コーヒーを淹れましょう。抽出を待ちながら、これから読む本に思いを馳せる時間が、私にはとても大切です。

かつて、朝も夜も、平日も土日もなく働いていた頃、じぶんの時間は通勤電車のなかにしかなかったようなものでした。終電で帰り、朝早く出社するので、家は寝るだけの場所だったのです。

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電車に揺られながら、私は本を読みました。文学や哲学、歴史や心理学、経済学やノンフィクションなど、さまざまな分野の本を読み漁りました。

地下へ閉じ込められたような日々の中で、読書は光でした。まだ知らない世界がどこまでも広がっていることが、私にどれだけ希望を与えてくれたことでしょうか。いまの暮らしだけが全世界ではないと、本は若い私に教えてくれました。

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いま、こうして草花を眺めながらながら、明るい時間に家でゆっくりと本とコーヒーを楽しめることの幸せを思います。

あのとき、まだ私が知らなかった世界が今日ここにある気がします。

リルケ詩集の「秋」という詩に、このような一節がありました。

そして空はわれわれのことを知らない。

ライナー・マリナ・リルケ「リルケ詩集」小沢書店 161.

果てしない秋の空が私を知らないことに、なぜだか救われる思いがします。空が私を知らないのに、私が空を知っているわけがないからかもしれません。

まだ、私たちの知らない空はどこかにあります。消えてなくなりたくなるほど辛い夜がまた来たとしても、それを忘れずにいたいと思います。

本があれば、私は大丈夫です。

みなさまも、読書の秋をご一緒に楽しみませんか?

まだ見たことのない空を探しましょう。

ではまた!




photo by Komaki Kosuke

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