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大阪市の神社と狛犬 ⑬港区 ①三社神社~月に吠える拝殿前の狛犬~

大阪市港区の地図と神社

大阪市には、現在24の行政区があります。港区は大阪市の西部に位置する東西に細長い形をした区で、安治川と尻無川にはさまれ、大阪港を擁する海の玄関口に位置しています。
この地域は、かつては淀川の河口に発達した低湿な三角州でしたが、江戸時代に入って河村瑞賢が安治川を開削し、市岡新田をはじめとする大規模な新田開発が進められました。現在も、新田開発者の名前が地名として残っています。
近年は、ウォーターフロント開発により天保山に「海遊館」をはじめとする集客施設が多数建設され、現在も開発が進んでいます。

天保山のタイル画 原画は歌川広重

港区には、神社が6社あります。そのうちの港住吉神社は、住吉大社の境外社です。港区は、新田開発の成功を祈願して神様を勧請して創建された神社が多いのが印象的でした。

三社神社は、JR環状線弁天町駅、大阪メトロ中央線弁天町駅から、南西へ400mほどの所に鎮座しています。すぐ前は磯路町通という大通り、背後は磯路中央公園です。


三社神社

■所在地 〒552-0003 大阪市港区磯路2-18-23
■主祭神 天照皇大神、豊受大神、住吉大神、熱田大神、斎主大神、秋葉大神
■由緒 元禄11年(1698)、伊勢国桑名の市岡與左兵衛宗勝がこの地に新田を開発し、工事の安全と開発の成功と地域の守護神として、天照皇大神・豊受大神・住吉大神の3柱を祭神として勧請して、社殿を建立した。これを起源として、創建当初は、三社宮と称した。後に、相殿として、熱田大神・斎主大神・秋葉大神を合祀した。
古い社殿は、昭和20年(1945)の大阪大空襲で焼失し、現社殿は昭和35年(1960)に再建された。

狛犬1

■奉献年 昭和十七年七月(1942) 
■石工  石匠  野中吉松  
■材質  花崗岩
■設置  正面鳥居前 

正面鳥居前狛犬(阿形)と社号標
正面鳥居前狛犬(阿形)
正面鳥居前狛犬(吽形)

港区の三社神社に参拝したのは初めてだったが、境内の広さに驚いた。旧社地はここより北の方にあったが、戦災後この地に再建されたという。
正面鳥居前前には、堂々とした石造狛犬が、互いに向き合って坐している。阿吽のたてがみに変化をつけ、吽形には立派な角がある。
昭和17年(1942)7月の奉献ということは、太平洋戦争の最中である。威厳のある狛犬を奉納したのはそのせいであろう。昭和17年といえば、旧社殿がまだ存在した時期だから、この狛犬は戦火を生き延びたことになる。基壇の「奉献」の文字は、当時の大阪市長坂間棟治の書である。

正面鳥居前狛犬(阿形)
正面鳥居前狛犬(吽形)

鳥居を潜って境内に入ると、「内清浄」「外清浄」と刻まれた注連柱があり、その前方に拝殿が見える。雨空のせいもあって、境内は静謐そのものである。

三社神社境内 注連柱


狛犬2

■奉献年 昭和三十七年七月吉日(1962) 
■石工  石匠  大阪天満 平清 砂田稔  刻  
■材質  花崗岩
■設置  拝殿前

三社神社  拝殿と狛犬
三つ巴に交差する2本の剣
拝殿前狛犬(阿形)
拝殿前狛犬(吽形)
拝殿前狛犬(阿形)
拝殿前狛犬(吽形)

拝殿前にも、堂々たる石造狛犬がいる。鳥居前狛犬と同じく、互いに向き合って坐している。向かって左の吽形が顔をまっすぐ向けるのに対して、右の阿形は斜め上方に顔を上げて、空に向かって咆哮するようだ。これが夜なら、まさに「月に吠える」狛犬になるだろう。

拝殿前狛犬(阿形)
拝殿前狛犬(吽形)
拝殿前狛犬(阿形)

胸を張って肢を真っ直ぐにして坐す。胴部は引き締まり、背中から胴体には肋骨が浮き上がる。尻尾の装飾も珍しい。獅子・狛犬というより狼を想像させる痩躯は、鳥居前狛犬とは対照的である。
奉献年は昭和37年(1962)、「石匠  大阪天満 平清 砂田稔  刻」の銘がある。昭和35年(1960)に再建された新社殿に合わせて造られたのであろう。「大阪天満 平清」の狛犬は大阪市内に何カ所かあるが、このような特徴的な狛犬は初めてだった。


狛犬3

■奉献年 昭和十五年夏祭前日(1940)
■石工  不明 
■材質  花崗岩
■設置  摂社 大海神社前

大海神社と狛犬
大海神社狛犬(阿形)
大海神社狛犬(吽形)

大海神社は、豊玉彦と豊玉姫をお祀りする。三社神社は住吉大神を祭神の一柱とするので、住吉大社の大海神社の神様を勧請したのだろうか。
狛犬は昭和15年(1940)の奉納。「夏祭前日」という奉納日が面白い。


狛犬4

■奉献年 昭和五十三年七月吉日(1978) 二百八十年祭記念 
■石工  不明  
■材質  花崗岩
■設置  摂社 柿本神社前

柿本神社と狛犬
柿本神社狛犬(阿形)
柿本神社狛犬(吽形)

昭和53年(1978)奉献の岡崎現代型の石造狛犬。阿形が玉取り、吽形が子取りの一対である。「二百八十年祭記念」というのは、三社神社創建の元禄11年(1698)から起算して280年目の記念祭である。
柿本神社は、万葉の歌人、柿本人麻呂を祀る神社であろう。どのような由来があるのかは不明である。


稲荷神社

稲荷神社

大海神社、柿本神社の並びに、朱の色も鮮やかな社殿がある。稲荷神社だ。社殿の前に一対の狐像が安置されている。

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