アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて③~
アンボンの町へ
旅の3日目。明け方から何度も目が覚めるが、だれも起き出さない。結局8時頃までベッドの中で過ごしながら、今日の予定を考える。
「とりあえずアンボンまで行こう」と考えてやって来たので、この先どんな手段でセラム島に渡るのかは、これから決めなければならない。
しかし今日一日は、このアンボンから動くことはないので、移動のないことがうれしい。まずアンボン市内にある博物館に行ってみようと思う。
9時過ぎ、ホテルのレストランで朝食。朝食付きの宿泊ではないので、それぞれ好きなものを注文する。M君はインドネシア人が朝食によく食べる「ブブル・アヤム(bubur ayam)」を食べる。buburは「お粥」、ayamは「鶏」だ。
同じテーブルに、オーストラリア人の男性が同席する。彼はマークさんという名前で、57歳。朝食後にMuseumに行く予定だという。我々もそのつもりだったので、いっしょに行くことになった。
10時にロビーに集合。ホテルの車で「Siwa Lima Museum」に向かう。何でも展示してあるような統一感のない博物館だが、それでも古くて貴重なものがたくさんあることはわかる。木彫の人形に目がひかれる。
いかにも聡明そうな学芸員の女性が、マークさんに英語で解説してくれる。ときどき日本語も交えてくれる。
庭先で女性が2人、布を織っている。即売だというので見せてもらい、1枚購入する。25,000Rpだった。
ここは州立の博物館で、入場料はたったの200Rp。
博物館の帰りに、港の近くにあるビクトリア砦(Fort Victoria)に立ち寄る。1575年にポルトガル人によって建てられたという砦で、その後オランダに引き継がれた。煉瓦塀が巡らされ、いまも爆弾で破壊された跡が生々しく残っている。
19世紀、このオランダの植民地政策に立ち向かった英雄がいた。彼は「カピタン・パティムラ(Kapitan Pattimura)」と呼ばれていた。「カピタン」は、キャプテンという意味である。港に、右手に剣を振りかざし、左手に楯を持つパティムラの像があった。
そういえば、アンボンの空港の名前は「パティムラ空港」だった。パティムラの反乱はオランダ軍によって鎮圧され、ビクトリア砦で彼は処刑されたという。
一旦ホテルに戻り、移動に使った車代を支払う。1人5,000Rp。このあと、昼食をマークさんといっしょに食べる約束をする。
荷物を置いて、再びロビーへ。中華料理がいいということになって、近所の「HALIM」という店に行く。Yはよく食べる。M君も何でも食べる。
セラム島への準備
アンボン島からセラム島へは船で渡るしかない。しかしそこから先は、個人では自由に移動できそうにない。ましてやセラム島の東部は国立公園で、入域に許可が必要かもしれない。
ここは、現地の旅行社に相談するしかなさそうだ。いいガイドがいるとよいのだが。
マークさんと連れのピーターさんの2人は、アンボン島の東にあるサパルア島(Saparua)に行く予定なので、いっしょにアンボンの町中にあるツーリストに向かう。久しぶりにベチャに乗る。1人わずか500Rpだ。
ツーリストは、「P.T.DAYA PATAL TOUR AND TRAVEL SERVICE」という長い名前だった。こちらの希望を伝えて、5泊6日のツアーを組む。巨大チョウが生息する場所は保護区になっていて、やはり個人で入るのは難しいようだ。
ガイド付きで、1人255ドル(535,500RP・29,000円)という。これが高いのか安いのかわからないが、言われるままに、支払う。
出発は明日の朝6時ということになった。
ここで一つ問題ができた。日本で予約してきたジャカルタにもどる帰りの飛行機〈AMBON~JAKARTA〉は8月11日の便だが、このセラム島ツアーからアンボンに戻ってくるのは8月2日だ。さて9日間をどこでどう過ごすか。
バリ島!
これしかない。M君はバリは初めてだし、Yも久しぶり。バリ島なら、何日でも過ごせそうだ。
ツーリストで、〈AMBON~JAKARTA〉をキャンセルし、〈AMBON~DENPASAR〉〈DENPASAR~JAKARTA〉のフライトをリクエストする。無事に3人分のチケットがとれたらいいのだが・・・。
アンボンにもいい所はたくさんあるのだろうが、まだ魅力が見えてこない。
夜の7時。ツーリストの人が、ガイドといっしょにホテルにやって来た。互いに自己紹介をする。ガイドの名前は「Johannis Augustyn」といった。短く「ジャニス」と呼ぶことになった。
ガイドも決まり、セラム島・巨大チョウ探検ツアーの見通しがたったので、一安心。さて、どんな旅になるか、楽しみだ。
ツーリストの人たちが帰ったあと、ホテルの向かいの食堂で夕食。焼き鳥のサテ、目玉焼きののった焼き飯のナシゴレン、鶏肉のスープ等々。
食堂を出たあと、明朝のパンを求めて歩く。
アンボンの夜が更けていく。
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