赤い実青い実
クロガネモチ
隣家の庭木が成長して、我が家の庭のほうに枝を伸ばしてきた。特に邪魔にもならないので、そのままにしている。濃い緑の葉の常緑樹で、この時期に小さな赤い実をたくさんつける。ヒヨドリがよくやって来て実を食べている。木の名前がずっと気になっていたが、Googleレンズで調べると「クロガネモチ」という名前だった。
わかってみると、この「クロガネモチ」という名前が気になる。「クロ+カネモチ」なのか「クロガネ+モチ」なのか。中国名は「鐵冬青」というそうだ。「鐵」は「鉄」の旧字体で、訓は「くろがね」である。若い枝や葉柄が黒ずんでいることから「クロガネ」となったそうだ。「モチ」は、この木が、モチノキ科モチノキ属に分類されていることによる。「クロガネ+モチ」である。
ところで、なぜ「モチノキ」と呼ばれるのだろうか。漢字で書けば「餅の木」であるが、食べる餅ではなく、樹皮から鳥黐(トリモチ)が採れることに由来するらしい。鳥黐(トリモチ)はゴム状の粘着性の物質で、鳥がとまる木の枝などに塗っておいて、脚がくっついて飛べなくなったところを捕まえたりしたという。
子どものころ、細い竹の先にトリモチを塗って、蝉やトンボを捕ったことを思い出した。竹の先にトリモチをつけて、手にツバをつけて竹をクルクルと回しながら塗った。あのトリモチは、どこで買ったのだろうか。小学校の前の駄菓子屋で売っていたような気がする。
ところで、僕はこのトリモチで蝉などを捕るのは好きではなかった。高い木にとまっている蝉を捕るには、捕虫網では無理なので、トリモチを塗った細い竹は役に立った。しかし、粘着力の強いトリモチに美しい羽を絡められて暴れる蝉が哀れに思えた。
話を「クロガネモチ」に戻そう。中国名の「鐵冬青」の「冬青」とは何か。常緑樹で冬でも葉が青々と茂っていることから、この字が当てられたのだろう。日本では信号の緑も「青」だし、木々が茂る様子も緑ではなく「青々」と表現する。中国でも同じなのかな。
ソヨゴ
ところで、「冬青」と書いて「ソヨゴ」と読む樹木がある。やはりモチノキ科モチノキ属の常緑樹で、風にそよいで葉が特徴的な音を立てることが名前の由来とされる。やさしい命名だ。
僕の住んでいるマンションの中庭に、この「ソヨゴ」の木がある。この木も秋になると赤い小さな実をつけるが、今年は夏が長かったせいか、まだ緑のままだ。
ネズミモチ
「ソヨゴ」のそばに、「ネズミモチ」という名の木がある。こちらも「ソヨゴ」とよく似た緑の実をつけているが、よく見ると楕円形で、実の数も少ない。この緑の実はやがて黒ずんできて、鼠の糞に似てくるというので、「ネズミモチ」という不名誉な名前がついたという。
名前の最後に「モチ」とあるので、同じモチノキ科モチノキ属かと思ったが、 モクセイ科イボタノキ属の樹木だった。全体がモチノキに似ているので、「ネズミモチ」と名づけられたそうだ。ややこしい。木の名前はなかなか覚えられない。
ヒメリンゴ
我が家で赤い実をつけているのは「ヒメリンゴ」だ。春には可憐な白い花を咲かせ、秋には赤い実りを見せてくれる。
「ヒメリンゴ」の実は渋いのか、秋にはあまり鳥が食べに来ることがない。しかし季節が進んで葉が落ちた後、枝に残った実を食べに来る姿は時々見かける。
やって来るのはヒヨドリやムクドリにハト。メジロやスズメのほか、名前のわからない小鳥も食べに来る。熟した実は少し甘くなっているのだろうか。
秋は彩りの季節。これから紅葉や黄葉が進み、木の実が色づいていくことだろう。季節の移ろいを楽しみたいものだ。
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