アジア紀行~インドネシア・タナトラジャ~サバイバル家族旅行note⑩~
岩窟墓巡りの午後
〈午前のコース〉
〈午後のコース〉
我々が泊まっていた「WISMA LEBONNA」は、RANTE PAOの南の ANGIN-ANGIN村にあった。地図でやっと確認することができた。
午前は、ガイドのGENTOと私の2人で回ったが、午後は初めて家族みんなで出かけることになった。子供たちの体調もかなり回復してきたようだ。
LONDA
最初に向かったLONDA村の岩窟墓は古いもので、このトラジャでは有名である。
1人Rp.500 の入村料を払うと、カンテラを持った少年が案内をしてくれる。長い階段を下りていくと石灰岩の洞窟に着いた。洞窟は2ヶ所あった。岩壁に穿たれたテラスからタウタウが見下ろしていた。亡くなった人の生前の姿をかたどった木彫りの人形である。
岩壁の下には、ミニサイズのトンコナンが2つ並んでいた。棺を収めるもので、これに入れて村から墓地まで運んでくるようだ。
入口付近にある舟形の棺には、遺骨が並べられていた。
奥の洞窟の入口から中に入る。棺がいくつもあり、髑髏が並べられている。開いた棺の中に、たくさんの骨が無造作に入れられている。一人分の骨とは思えない。洞窟内の岩棚のような場所や隙間にも頭蓋骨が置かれている。遺族には、どれが自分の家族や親族のものだと判別できるのだろうか。
頭蓋骨が2つ並べて置いてある場所があった。案内の少年が「ロミオとジュリエットだ」という。2人は首をつって亡くなったというのだ。本当の話だろうか? 骨になってしまうと男女の区別もつかない。
朝から死者の骨ばかり見ていて、だんだん感覚が鈍くなっていく。病み上がりの子供たちは、やはり気味悪いようだ。
二つ目の洞窟も似たり寄ったりで、奥の方までは入れない。
LONDAの岩窟墓はかなり昔からあるようだが、現在もまだ使われている。洞窟内には、古くなった棺が岩の隙間に斜めに押し込まれているかと思うと、トラジャ独特の幾何学模様がまだ新しい棺もあった。
LEMO
LONDAの村を出た車は、次にLEMOに向かう。この村にも岩窟墓があって、ここのタウタウは有名らしい。しばらく外出していなかった子どもたちは、車に揺られるだけでもしんどそうだ。LEMOに到着したが、ガイドのGENTOが子どもたちを見ていてくれるというので、妻と2人で岩窟墓に行くことになった。
崖のような岩壁に数十の横穴が穿たれ、棺が収められている。かなり高い場所にもあるが、どのようにして横穴に棺を入れるのだろうか。タウタウも、かなり高い所に並んでいる。昔は下の方にもたくさんあったが、盗み出してジャワやバリで売る者がいるそうだ。罰当たりな行為だ。
ずらりと並ぶタウタウを見上げると、実は彼らが高見の見物席から我々を見下ろしているのではないかと思えてしまう。
子どもたちのことが気になるので、村の方に戻る。黄色く色づいた稲穂の向こうに村のトンコナンが見える。
車に戻ると、子どもたちはGENTOにバナナと飲み物を買ってもらって、思ったより元気だった。
今日はここまでにして、ANGIN-ANGIN村の宿に引き返す。高校生の女の子LINAがコーヒーを持ってきてくれる。トラジャのコーヒーにも慣れてきて美味しい。彼女は英語が少し話せるので、インドネシア語を教えてもらう。
日が暮れて外が暗くなったので、みんなで花火をする。この家の子どもたちも集まって来る。
花火のあとは、食堂で遅めの食事。子どもたちの体調が万全ではないので、夕食はお粥にしてもらった。
みんな疲れたのか、早く眠りにつく。灯りを消すと静寂が忍び寄ってくる。虫の声と蛙の声、どこからかヤモリの鳴くチュッチュッという声も聞こえる。空では大きな星がまたたき、木々の間に蛍が明滅する。
この地で暮らす人たちの日常が、自分たちにとっては別世界なのだ。一日の出来事が、やがて夢の中に消えていった。
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