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9月の俳句

季節は秋、しかし残暑

9月に入って最初にメモに残していたのは、次の句でした。

鱏一尾えいいちび陸に上がりて秋暑し

9月最初の日曜日、まだまだ残暑厳しい日でした。六甲マリンパークの日陰もない炎天下で、一人の若者が1時間半の格闘の末、エイを釣り上げました。若者の勝ち。若いって、すごい。

8月下旬から再び学校が始まり、通勤路を歩きます。「8月の俳句」にも、夏の終わりの光景を詠みましたが、空き地や道端のエノコログサが目立ってきました。

揺らぐ穂にかそけき秋の光かな

子どもたちは「猫じゃらし」と呼んでいます。穂先が日の光に透ける様子を写真に撮りたかったのですが、難しいですね。


月の秋、秋の月

9月8日は、二十四節気の「白露」でした。朝夕は気温が下がり、草の上に露が置きます。

芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。

『伊勢物語』第6段「芥川」

男に連れられてやって来た所は芥川。今の高槻市です。草の上に置いた露を見て、女は「あれはなあに?」と男に尋ねます。深窓の姫君は「露」を見たことがなかったのでしょうか。

十三夜月おぼろなる白露かな

額縁にして見る月や風呂の窓

夜、風呂に入ると、窓枠に囲まれた暗い空間に、あと少しで満ちる白い月がぼんやりと見えました。

そして2日後は、中秋の名月。夜空は晴れて、美しい満月を愛でることができました。孫が月見団子を持ってきてくれました。

皿にのる月見団子や屋根の月


秋の風

9月には狛犬巡りに3回出かけました。強い日射しが狛犬に直接あたる夏は、撮影には適しませんが、日射しが柔らかくなる秋の日は、狛犬巡りの季節といえるでしょうか。

狛犬の天を仰ぎて秋の風

9月は台風の季節でもありました。12号から18号まで、7つの台風が日本を襲いました。沖縄や九州は常に台風の進路に当たっていて、大変ですね。大阪は強い風が吹いた日もありましたが、幸い無事でした。数年前に、フェンスが倒れるほどの大きな被害があったことを思い出します。

4年前の写真です

台風14号が接近しつつあった日曜日、孫たちを連れて市民プールに出かけました。2学期が始まって、水泳のテストがあるそうです。この時期は温水で、人もそれほど多くはありません。プールのある建物の外では、強い風が吹いています。

温水のプールの外の野分かな

その翌日、9月19日は敬老の日で休日でした。

台風に明けて暮れたる敬老日

この日、海の彼方イギリスでは、8日に亡くなった女王エリザベス2世の国葬が執り行われました。葬儀が行われた日は、正岡子規の命日でもありました。

異国では女王を悼む獺祭忌


師の訃報

年に1回発行される高校の同窓会報が届きました。今年は創立120周年にあたり、この秋には大々的な祝賀会が予定されています。会報の後半には、「回生だより」があり、最後に小さく訃報欄があります。そこに私たちの学年の担任だった恩師の名前を見つけました。
3年前に開いた学年同窓会には、まだお元気な顔を見せてくださいましたが、その時に、「戦後100年たった2045年の日本を見てほしい」というお話をされました。先生には無理だから、君たちに託したい、ということでした。

2045年まで生きよと言ひし師みまかる

師の逝去は1年前、昨年10月のことでした。


彼岸花

9月は死者の月でもありました。先祖を供養する「彼岸」もこの月です。俳句の世界では、「彼岸」といえば一般的には春の彼岸を指し、秋の彼岸は「秋彼岸」というそうです。
この季節になると、燃えるような花をつける曼珠沙華の姿を見かけます。彼岸の時期に咲くので「彼岸花」ともいいます。この花にはたくさんの別名がありますが、「死人花」「地獄花」「幽霊花」「墓花」「葬式花」など、不吉な名前が多いです。しかし「曼珠沙華」だけは、華やかでいい名前ですね。

大阪桜之宮に、明治時代に実業家として活躍した藤田傳三郎の邸宅跡があります。その一部が、公園として開放されています。庭園に足を踏み入れると、曼珠沙華の道が続いていました。

曼珠沙華天高くして背伸びする

曼珠沙華見上げる先に朝の塔

今月もまた、無事に「月々の俳句」を更新することができました。
お読みいただき、ありがとうございます。

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