国立国際美術館 特別展「古代メキシコ ーマヤ、アステカ、テオティワカン」(その1)~展覧会#52~
古代メキシコ展始まる
昨年、東京・福岡で開催された「古代メキシコ展」が、いよいよ大阪にやって来た。会場は中之島の国立国際美術館。
そもそも、古代メキシコに文明と呼べるものが生まれたのはいつのことだろうか。
この地に人が定住しはじめたのは、今から一万三千年以上も前だという。シベリアからアメリカ大陸に渡って来た狩猟採集民が、長い歳月をかけて南下して現在のメキシコ中南部に定住し、農耕を基盤とした多くの民族集団を形成していった。この地域は南北アメリカの中間(古代ギリシア語のmeso)であることから、「メソアメリカ」と言う。
そういえば、「メソポタミア」は「meso(中間)+potamia(川)」で、チグリス川とユーフラテス川の間の地域という意味だったな。
古代メキシコで最も古いのは、前1500年ごろメキシコ湾岸部に興ったオルメカ文明である。それ以後3000年にわたって、各地に都市と呼べるものが築かれ、独自の文明が発展していく。テオティワカン、アステカ、マヤは、その代表的なものである。
展覧会では、次の4章に分けて展示されていた。
第一章 古代メキシコへのいざない
第一章では、先古典期のオルメカ文明の象徴的な作品を紹介するとともに、マヤ、アステカ、テオティワカンの文明に通底する4つのキーワード「トウモロコシ」「天体と暦」「球技」「人身供犠」について解説する。
〈オルメカ様式の石偶〉前1000~前400年
〈マスク〉テオティワカン文明(350~550年)
〈貴人の土偶〉マヤ文明(600〜950年)
〈装飾ドクロ〉アステカ文明(1469〜81年)
映像もところどころにあって展示内容の理解の助けとなる。
〈ジャガーの土器・フクロウの土器・クモザルの容器〉
〈チコメコアトル神の火鉢(複製)〉アステカ文明(1325~1521年)
〈夜空の石板〉アステカ文明(1325~1521年)
〈球技をする人・球技用防具・ゴムボール〉
〈シペ・トテック神の頭像〉アステカ文明(1325~1521年)
第二章 テオティワカン 神々の都
前100年ごろ、メキシコ中央高原の海抜2300mの盆地に築かれた古代都市、テオティワカン。ここには10万人ほどが住んでいたとされるが、確認されている絵文字は未解読で、主な使用言語もわからないという謎多き文明である。
この章では、中心地域に造られた三大ピラミッド(太陽のピラミッド・月のピラミッド・羽毛の蛇ピラミッド)に関する品々を中心に、この文明の世界観、宗教観などが紹介される。
Ⅰ 太陽のピラミッド
〈死のディスク石彫〉太陽の広場出土(300~550年)
〈火の老神石彫〉太陽のピラミッド出土(450~550年)
〈小立像〉太陽のピラミッド出土(150~250年)
Ⅱ 月のピラミッド
〈立像〉月のピラミッド 埋葬墓出土(200~250年)
〈首飾り〉月のピラミッド 埋葬墓出土(200~250年)
〈蛇形エキセントリック・ナイフ形エキセントリック〉
月のピラミッド 埋葬墓出土(200~250年)
〈耳飾り・首飾り・ペンダント〉
月のピラミッド 埋葬墓出土(300~350年)
Ⅲ 羽毛の蛇ピラミッド
〈羽毛の蛇神石彫〉羽毛の蛇ピラミッド出土(200~250年)
〈シパクトリ神の頭飾り石彫〉羽毛の蛇ピラミッド出土(200~250年)
2003年には、羽毛の蛇ピラミッドの地下に古代トンネルが発見された。
〈立像〉羽毛の蛇ピラミッド 地下トンネル出土(200~250年)
〈トランペット・嵐の神の土器・椀〉
羽毛の蛇ピラミッド 地下トンネル出土(150~250年)
Ⅳ 都市の拡がりと多様性
テオティワカンの三つのピラミッド以外の地からも、さまざまな出土品が発見されている。
〈嵐の神の壁画〉テオティワカン、サクアラ出土(350~550年)
〈嵐の神の屋根飾り〉テオティワカン、サクアラ出土(250~550年)
〈香炉〉テオティワカン、ラ・ベンティージャ出土(350~550年)
〈楯を持つ小像〉テオティワカン、出土地不明(450~550年)
〈鳥形土器〉テオティワカン、ラ・ベンティージャ出土(250~550年)
〈人形骨壺〉サポテカ文明
テオティワカン、オアハカ地区出土(450~550年)
〈三足土器〉テオティワカン、テティトラ出土(450~550年)
今回は、古代メキシコ展の「第一章 古代メキシコへのいざない」と「第二章 テオティワカン 神々の都」を紹介しました。
長くなりましたので、第三章・第四章については、次回に報告します。