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短い箒

城下町を歩いていると家の前の落ち葉を箒で履いているおばあちゃんがいた。
古き良き日本家屋の佇まい。
素敵な門扉の前の道路を丁寧に丁寧に。
見るからに品が良さそうで身なりもきれいでうっすらお化粧をしていた。
手に握る箒の先端は箒の毛が見えないほど使い込んでいる。
箒カバーから少しだけのぞいている箒の毛で丁寧に道路を掃いていた。

いつから使っているのだろう。

その箒で道路の隅々まで丁寧に丁寧に履いている姿が素敵だった。
日本人はものを大切に長く使うことを考えてきた。

結婚して丁寧な暮らしを気にかけはじめたころ
棕櫚の箒を購入した。
一生使える箒だそうだ。

畳を撫でるだけで掃除機以上に埃が集まり綺麗なる。
音も立てないし、埃もたたない。
「はりみ」というちり取りは丸みがあり
一度掃き込むだけでゴミが入る。
素敵な道具たちだ。

日本家屋もそうだ。
100年以上住み続けられる家がたくさんある。
そして月日を重ねることに焼杉がいい味を出し
瓦のコクが増していく。
木や畳は人の心を和らげる力がある。
コンクリートやタイルは人を緊張させると言われている。
心安らぐ素材を使った日本家屋は日本の気候によく合い、
直しながら使えばいつまでも住むことができ、
日本人の心を穏やかにしてくれる。

日本にはいろいろな道具や建物にそんな工夫が詰まっている。

おばあさんが使い込んだ箒を使っている姿をみて
私もそんなふうにものを大切にして
丁寧に優しく生きていきたいと思った。

プラスチックや集成材などすぐに壊れる安価なものを手に入れるのではなく
長く続いている伝統的なものを少し高くても自分のお家に迎えて
大切に使いたいと思っている。

私たちだけで終わることなく、子から孫へ受け継げるような
丈夫で修繕しながら使うことのできるものを。

子供達がプラスチックで遊んでいる姿をみていると切なくなる。
でも家に出来るだけ手触りの良い素材のものを置くようにしていたら
きっと気がついてくれるはずだ。

こっちがきもちいいと。
そんな風に感じてほしいと。

あのおばあちゃんのようにいいものを大切につかい続けられる
素敵なおばあちゃんになろうと思う。

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