ぐるぐるスパイスのビリヤニキット
家庭で気軽にビリヤニを作るための「ビリヤニキット」というものが売られています。多くはバスマティ米とスパイスのセット、たまにスパイスだけ、場合によっては具まで入って値段も内容もまちまちです。
簡便さの推し方としては「炊飯器で簡単」とうたうパターンが多く、日本ビリヤニ協会さんや南インド屋さんのものなどを目にした方も多いのではないでしょうか。バスマティ米を筆頭に入手性が課題のビリヤニ界隈にとっては、入口の敷居を押し下げる一役を担っています。
そんな中、福岡のぐるぐるスパイスさんが新たにビリヤニキットの全国販売を開始しました。4人前で税込・送料込み1000円の驚き割り切り価格です。1人前単価としてはグググっと敷居が下がりました。
実はオーナーの方はレシピも公開されていて、こちらもとても潔いものになっています。以前私が公開した割り切りレシピは頑張って1時間でしたが、こちらは頑張らずにフルスクラッチでやっても、1時間後に食べ始めることができます。どちらも米茹での鍋を別に準備する「ほんとビリヤニ」な作り方です。
ここまで割り切って、仕上がりはどんな風になるんだろう?と興味が湧き、キットを入手して早速作って見ました。
材料は鶏モモ1枚(360g)、玉ねぎ1個(280g)、あとは水・油・塩だけです。玉ねぎはスライサーを使い、鶏モモは皮付きのままカレースプーンに乗る程度の大きさ。切り物には材料の取り出しを含めても5分かかりませんでした。並行してキットのバスマティ米(300g)を水に浸けておきます。
続いて、玉ねぎを炒め始めます。玉ねぎが少し大きめですが、気にせずレシピにしたがって大さじ2の油で進みます。炒め始めは玉ねぎが少し油をまとう程度で、ジリジリ揚げ焼く感じにはならずしっとりします。中〜中強火くらいです。
玉ねぎが色づいてきたら、鶏肉を投入します。この後にも玉ねぎは火が入るので、この時点で飴色まで持っていく必要はありません。トマトやヨーグルトも入れないため、煮込みに相当するプロセスがないので鶏肉の火入れは多少しっかり目が良いでしょう。
鶏肉にある程度火が入ったら、スパイスを投入して炒め合わせます。鶏モモからは脂が出るので、スパイスをこの脂に馴染ませる感じが良さそうです。玉ねぎにもこの段階ではかなり良い感じに火が入り、旨味や甘みが凝縮します。
味見をして、酒のつまみにできそうな味の濃さが確認できたらソースは出来上がりです。塩加減はスパイスで決まっているので、鶏肉の量が大きく外れない限りは調整はあまり必要ないでしょう。その後冷めないように、保温しておきます。
並行してお湯を沸かして、30分浸水させたバスマティ米を7分茹でます。ソースの調理に30分かからないので、まったく忙しくありません。1.5リットルのお湯に大さじ1の塩なので、1%の塩水で茹でることになります。
上の写真は7分経ったあたりのものです。300gの米を1.5リットルで茹でると、これくらい膨らんでもったりした感じになります。時間の計測は、「一般的にはこう考えるだろうな?」と推察して、米投入直後から再沸騰を待たずに始めました。沸騰するまでは最強火、沸騰後は噴きこぼれないように中弱火で調整しています。
この後湯を切って、先ほど保温していたソースと合わせ、加熱せずに余熱で10分蒸します。
最後にさっくり混ぜて出来上がりです。濃いめのソースと茹で米をまぜるので、ビリヤニらしいムラもできてくれて嬉しい感じです。炊飯器パターンではない炊き方では、私が知りうる限り最も簡単な調理法です。茹で時間は測りましたが、調理中焦ったり急いだりすることもありませんでした。
肝心のお味は
湯取り法で調理したビリヤニらしさもあり、玉ねぎ・鶏モモだけでも十分美味しいものができました。もちろん、本格的な専門店で提供されるようなホールスパイスがごろごろとしたようなものとはまた別物ですが、この簡便さと出来上がりを考えると「非常にアリ」というのが感想です。
また、このキットをベースにして好きなスパイスやトッピング、具材を加えることも全く問題ないので、さらなる工夫も見据えたい方のはじめの一歩としては最適なのではと思いました。特に、まだキロ単位でバスマティを買うには尻込みしている方にはお勧めできます。
具体的には、最低限とはいえ米・具材(鶏・玉ねぎ)・スパイスを未調理の状態から、簡単・低価格・短時間で仕上げられるようになっているのが素晴らしいです。調理済みは、どれだけ保存法に工夫をしてもどうしてもでき立ての美味しさにはかなわない側面があります。
また、スパイスもパウダーかつドライな状態なため、保存性に優れています。調味も済んでいるので、塩加減を気にするのは茹で湯のみ。スパイスのレシピも公開されているので、自分好みで調合したものをストックしておいても良いなと思いました。
注意点としては、米の茹で加減というか加熱時間でしょうか。7分のカウントが米投入直後では加熱時間があまく、アルデンテの解釈によっては米が伸びきりません。可能であれば余熱調理よりは温まった鍋に極弱火の加熱の方が温度が上がり、米のアルファ化に貢献するようにも思いました。
もっともこれは調理の楽さ加減にも影響するので、レシピの思想とは反するかもしれません。米が固い場合は余熱時間を少し長めに、とありますので、そこで調整するかもしくは茹で時間のカウントを再沸騰後にするなどの調整で、ある程度の改善は可能と思います。
鶏モモ1枚250円、玉ねぎ1個50円として考えれば、材料費は4人前で1300円です。もはや自宅ビリヤニ炊きに尻込みする理由はなくなりました。「炊飯器で炊くと、スパイスのにおいがつきそう・・・」という方にもオススメです。
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