炊き立てのご飯はとても美味しく感じます。これは炊き立てに特有の美味しそうな香り、穀物の甘み、そして食感の絶妙なコンビネーションが生み出す魔法で、比較的最近では福井大学で「ビニルフェノール」や「インドール」といった香味成分の抽出に成功したことがニュースになりました。 焼きたてのパンも、とても美味しく感じます。これも焼成に伴った澱粉の変化や、お馴染みのメイラード反応とともに、小麦粉の灰分などの個性から生み出される香りが大きく寄与します。細かな分析はわからないのですが、うどんの茹
最近のアウトドアブームも相まって、昔で言うところの飯盒のような位置付けのグッズ「メスティン」が色々なところで紹介されるようになりました。メーカーやサイズはそこそこまちまちなのですが、基本的には小さめサイズの取っ手が折りたためるアルミの蓋つき角鍋で、概ね1〜2人前の調理に適したものがほとんどです。 このメスティンと固形燃料を使った「自動炊飯」というのも流行っていて、要は固形燃料の寿命ぴったりで調理が完成するので火加減を見る必要がない、というわけです。 この簡単調理はソロキャ
静岡県にある「伊豆の玄関」と呼ばれる三島市は、豊富な水に恵まれた静かな街です。水が良いせいかうなぎが有名で、修善寺まで向かう伊豆箱根鉄道の起点でもあります。 その伊豆箱根鉄道の三島の隣駅「三島広小路」の駅前に、その昔「一福」というお店がありました。40年前とはいえ1人前100円台という驚異的な低価格と、一度食べたら忘れられないその味に、三島のソウルフードとして老若男女に浸透するばかりか県外にも多くのファンを抱える人気店でした。 しかし、この「一福」は2013年に突然の閉店
人はいつしか「ビリヤニって何?」というフェーズから「ビリヤニ食べて見たい」という興味に変わり、「ビリヤニ美味い!」という経験がつのると「ビリヤニ炊いて見たい!!」という意欲に変わります。 そんなビリヤニ炊きたガリアン(BTG)達の炊飯意欲を満たしてくれるものは、これまではネット上の情報や身近な経験者からの伝授が主でした。本もないことはないのですが、ビリヤニ専門書となるとあっても外国語、もしくは日本のカレー本の中にちょんもりと憚ってる程度でインパクトにかける存在でした。 し
さて、これまで通常気にしている理屈というか、観点のようなものをつらつら書いてきましたが、せっかくなのであまり世の中にはない、狛江スリムらしいレシピとしてアゴ出汁を使ったビリヤニをご紹介したいと思います。 正式には「アゴコフタビリヤニ」という名前で、アゴの身を使ったつみれのようなものが一緒に入ります。繊細で主張の少ないアゴとスパイスという組み合わせに完成までは相当難儀しましたが、「無限に食べられる」と好評をいただいていました。アゴ出汁屋狛江スリムの完全オリジナルレシピです。
旨味は現在では海を超えて、「UMAMI」として世界の共通語になりました。その基本はグルタミン酸に代表されるような科学的な成分をさすことも多いのですが、素材から引き出された美味しさの元として、時には五味のような味の要素の一つとして認知されています。 しかし、私たちが特定の食材の旨味について語るときは、この「UMAMI」に加えてその素材の特徴や「らしさ」についてイメージしています。例えば「OOビリヤニ」のように名前が付いているものは大抵「マトン」や「エビ」のようなメインの旨味素
家庭で気軽にビリヤニを作るための「ビリヤニキット」というものが売られています。多くはバスマティ米とスパイスのセット、たまにスパイスだけ、場合によっては具まで入って値段も内容もまちまちです。 簡便さの推し方としては「炊飯器で簡単」とうたうパターンが多く、日本ビリヤニ協会さんや南インド屋さんのものなどを目にした方も多いのではないでしょうか。バスマティ米を筆頭に入手性が課題のビリヤニ界隈にとっては、入口の敷居を押し下げる一役を担っています。 そんな中、福岡のぐるぐるスパイスさん
前回の「香り」の話に引き続き、今回は「味」の話です。何をもって味とするのかは考え方によっても分かれるのですが、ここでは舌で味わう味覚を「旨味」と「五味」に分け、まずは後者の「五味」について書きたいと思います。実は五味にも解釈がいくつかあるのですが、本稿では「塩味」「甘味」「辛味」「酸味」「苦味」に分類しています。 さて、この分類された5つの味ですが、実は優先順位は同じではありません。主役は「塩味」「甘味」のツートップ、とりわけ重要なのは「塩味」になります。脇役が「辛味」「酸
狛江スリムでは、雪平鍋の他にストウブをよく使っていました。煮込み料理はもちろんですが、ビリヤニを炊く上でも鍋全体に熱がよく周り、少量でも状態よく炊けるのがとても助かっていました。 こういった鋳物ホーロー鍋は他にもバリエーションがあり、料理を楽に美味しくしてくれるのに抜群の性能を発揮してくれます。しかし、実際の調理シーンで意外に取り回しに苦労するのが蓋。重量もあり、しかも熱いので置き場を選びます。内側は食品に面しているので衛生的にも気を使います。 こうした悩みは一般的なため
狛江スリムはキッチンスペースが極端に狭かったので、店内調理は選択肢が限られていました。それでもこだわる部分はきちんとこだわりたいので、扱う素材や調味料には「違いがわかるように」と心を砕きました。ある種の悪ノリと言ってもいいかもしれません。 麺類をお出しする際にも、ねぎは刻みたて、生姜は下ろしたてでお出しします。手返しは悪くなるのですが、香りも気分も一段二段上がります。その際にはおろし金を使うのですが、狭いにもかかわらずなぜか3つも置いてありました。ちょっと紹介してみたいと思
ビリヤニに限らず、エスニック系のレシピではスパイスの話がよく出ます。どんなスパイスをどんな風に使っているのか、というのがメインになるかと思いますが、一つの料理を形作る上で「香り」を司るのはスパイス以外の要素も大きいものです。 ここでいう「香り」とは、鼻から吸い込む香り以外にも、咀嚼したり飲み込んだ後にフワッとくる「風味」のようなものも含んで考えます。あくまで主観的なものですので、考え方の一つの参考例としていただければ幸いです。 香りは音楽一口に「香り」といってもその種類
かの有名な水野仁輔氏の功績でも、最大のものの一つとして玉ねぎの火入れの6段階表現があります。それぞれ色合い的にウサギ・イタチ・キツネ・タヌキ・ヒグマ・ゴリラに例えた表現で、感覚的にとても掴みやすく、また動物に例える楽しさがあります。 ビリヤニのそれぞれの材料・要素やその組み立てを考える際にも(もっと言えばビリヤニ以外の料理を作る際にも)、この火入れというのはとても重要な意味を持っています。今後説明をする上でも言葉を揃えておいた方が良いので、本稿では火入れに関しての考え方とそ
ビリヤニが好きです。 2020年11月現在では、Googleで検索すると「ビリヤニ」は178万件、対して「カレー」は2億1600万件ヒットします。Amazonの書籍では「ビリヤニ」は9件しかヒットせず、タイトルには「ビリヤニ」の文字は含まれません。「カレー」の書籍は3000を超えており、「ビリヤニ」のレシピはかろうじてカレー本の中にそっと登場する時がある、くらいの存在感です。 経験的にも、知名度レベルをカレーと比較したらおおよそ1:100というのは、なんとなく「そんなもん
アゴ出汁を出す夜のお店では、どうも麺類が欲しくなるという法則があるようです。シメのアゴ出汁でお酒はしまるのですが、最後に少し炭水化物が欲しいというお客様が多く、店にはそうめんが常備してありました。 そうめんというと冷たい麺とツユの方を思い出しますが、狛江スリムでは釜揚げそうめんというメニューを出していました。文字通り、茹でたそうめんをそのまま茹で湯ごと器に盛り、それをおろし生姜と刻みネギを入れた熱い出汁で食べるものです。一束0.5人前からお出ししており、お店帰りの他店のママ
妙なものですが、自分のお店をやっているとそこが「居場所」になり、店が仕事を超えて居心地がよくなることがあります。もちろん居心地がよくなるように考えながら日々色々な工夫を重ねるのですが、お客様をお迎えするという使命以上に「なんかここいいなぁ」と、自分にとっての心地良さをしみじみ感じてしまうことがあるんです。 こんな時、深い時間帯にお客様がいない場合は、少しお店を早仕舞いして楽しんでしまいます。照明をいつもよりぐっと暗くして、音楽のボリュームはマシマシ。グラスにはお気に入りの一
日本ではまぁお見かけしないようなものすごい漢字が大陸にはあったりしますが、この漢字読めるでしょうか。 読めないですよね。58画もあります。「ビャン」と読みます。この文字を2回も使った「ビャンビャン麺」という料理があります。発祥は西安の方のようですが、香港で食べた時にすっかりハマりました。 狛江スリムはバーですが、基本的には2軒目・3軒目のお店なので、シメの炭水化物をご希望されるお客様が結構いらっしゃいます。アゴ出汁なんぞを出していることにももちろん起因しているかと思います