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「旨味」と「らしさ」 〜 カッチビリヤニはなぜエモいのか
旨味は現在では海を超えて、「UMAMI」として世界の共通語になりました。その基本はグルタミン酸に代表されるような科学的な成分をさすことも多いのですが、素材から引き出された美味しさの元として、時には五味のような味の要素の一つとして認知されています。
しかし、私たちが特定の食材の旨味について語るときは、この「UMAMI」に加えてその素材の特徴や「らしさ」についてイメージしています。例えば「OOビリヤニ」のように名前が付いているものは大抵「マトン」や「エビ」のようなメインの旨味素材の名前が入っており、その名前から想起されるのはその素材独特な「UMAMI」であり、「らしさ」です。
基本的には「UMAMI」と「らしさ」は不可分です。調理はいかにこれらを上手に引き出しながら、表現したい個性に近づけて望ましくないものを抑えるかを考えます。
また「美味しい」と思わせるためには、ある程度「UMAMI」の密度を高めることも必要です。そのためのプロセスとして抽出・凝縮・変性・発酵などがありますが、そのほとんどが進行に従って「らしさ」にも影響を及ぼします。
以前の火入れの稿はその好例で、どの部分の「らしさ」を残したいかによって火入れ具合を調整していました。L0〜L3に進むに従って、加熱されることによる凝縮や熱変性が起こり「UMAMI」の密度が高まると共に、同時に「らしさ」もフレッシュな感じから香ばしい方向に変わります。
温度をあげて炊いてしまうと癖の出る昆布なども、その変化の一種として捉えて良いでしょう。加熱は同時に他の変化も起こすので、バランスをとるのに技術や経験が必要になり、レシピに起こすのに注意を払います。
例えばカッチというビリヤニの炊き方がありますが、この炊き方は生の状態の素材を炊き込むため、熱変性前の「らしさ」を取り込むことができます。特に血の味を軸にした素材の素の「らしさ」は熱の影響を受けやすいので、こういった調理法で工夫をしないと味わうことができません。加えて炊き上げに技術が必要なので、より尊ばれるというわけです。
パッキのようにグレイビーを作る場合は、あらかじめ火が入るので比較的自在に抽出や凝縮を行うことができます。骨を長く炊いたり筋を煮込んだりもできますし、もしくはキーマのように具材を細かくすることで火入れと抽出・変性のコントロールを行うことも可能になります。
またビリヤニはスパイスを使うので、時には必ずしも望ましくない獣臭さや生臭さのような「らしさ」をうまく抑えたり、隠すことが可能です。ここには組み合わせの妙が存在しますが、スパイス料理の最も楽しいところではないでしょうか。
さて、理屈が少し長くなったので、次はなにかレシピでも書こうと思います。