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制限されると執着するし、慣れてくれば欲も出てくる

家の中を自由に行動することが出来て、自らの意思で活動と休息を選択できるような生活は、室内犬にとって理想的な環境と言えるのだろう。

室内犬=家の中で自由に生活している、というイメージを抱いていたが、いざ当事者になってみると、なかなか一筋縄ではいかないということを知った。

我が家の子犬は、迎えた当初のごく僅かな期間を除き、リビングに設置した150㎝四方のサークル内で一日のうちの大半の時間を過ごしている。

サークル内での子犬は別段外に出たがるような態度を示さないため、今後もこのままサークル飼いを継続してゆくつもりではあった。しかし、ここ最近になって少しずつ考えが揺らぎ始めている。

子犬には資源を守ろうとして攻撃行動に転じるいわゆるリソースガーディングがあり、生後三ヶ月を過ぎたあたりからその兆候が見え始めたため、その時以来サークルによる行動制限をかけることにした。

基本的には目新しいものはなんでも守り、食べ物はもちろんのこと、おもちゃを始めとした物品全般、破壊行動で出来た床の穴、しまいには自分の抜け毛や糞尿ですら全力で守ろうとする。

サークルから出てこられないとはいえ(いまのところ乗り越えられていない)、何かを守っているときは中々に凶暴なので、ほとぼりが冷めるまでは極力子犬の間合いに近づかないようにするという暗黙のルールに従って生活するようになっていった。

それでも用事などでどうしてもサークル付近に近づかなければならないとき、間合いに入られた子犬は鬼の形相でサークル越しに咬みつくような勢いで吠え立ててくる。(実際に咬む事もあるが、いまのところ大した怪我には至っていない)

そして、このような状況の事を我が家ではガウる、あるいはガウられたと呼び、「今日ガウられた?」「さっきガウられた」「ガウりそう」「今日はガウられなかった」などの会話が日常的に繰り広げられている。

また、このようなリソースガーディングに加えて、物音などで昼寝から目覚めてまどろんでいるような状態のときもすこぶる機嫌が悪く、何かを守っている時と同様に、間合いに入ろうとするものに対して攻撃的になる。

寝ぼけ眼で身体を摺り寄せてきたと思いきや、触れると唸ったり、時には咬みついてくることもあるのでタチが悪い。

こうしてみると、さぞかし凶暴で手を付けられない犬であるかと思いきや実際はそういうわけでもなく、先に述べたような状況のとき以外は、家族のことが好きな、よく懐いた犬であるとも言えるのである。

特に私や妻に対しての愛情表現はすさまじく、外出先からの帰宅時をはじめ、名前を呼べば尻尾を振り回し、耳を寝かせて足踏みしながら近づきウレションする姿は、成犬サイズになった今でもパピー期の頃からなんら変わっていない。

ちなみに、娘たちに対してはここまでの愛情表現は示さず、反対に、「ガウられる」頻度が圧倒的に高いのは娘たちの方である。

ただし、機嫌の良い時は娘たちにもよく懐いているし、娘たち自身も子犬のことをとても可愛がっており、隙あらばちょっかいをかけようとしている。

多少の難はあるものの、私たち家族にとっていまや生活の中心的存在である子犬は、決して広いとは言えない我が家のリビングのド真ん中に設置したサークル内という、物理的にも生活空間の中心部分を占拠している。

このサークルを撤去することは出来ないものだろうか?

給餌中と機嫌の悪い時さえ近づかなければ問題なく過ごすことができているため、月日の経過とともに少しずつ感覚も麻痺してくる。

子犬をサークルの外で自由にさせてみたいという欲求が、我々家族の間で徐々に芽生え始めてきたのである。

先日、夕食が終わったあとの家族の団欒タイムに子犬をサークルの外に出してみることにした。実にフードガードが出る以前の、パピー期以来のことである。

久しぶりに解き放たれた子犬が真っ先に向かった先は、ダイニングテーブルで団欒している私たちのところであり、椅子で寛いでいる妻に対し、全身を使って猛烈な愛情表現を示していた。

ほどなくして子犬をサークル内に誘導し、再びいつも通りの距離感へと戻った。キッチンで食器を洗っているとき、私の足元を掠めていった子犬の身体の感触がなんとも忘れがたい。

リソースガーディングの話に戻るが、制限されることでより執着してしまうのであれば、欲求が充分に満たされることで初めて解消されるのではないか、という思いがある。

悩みの種のひとつだった散歩中の拾い食いも、こちらが躍起になって阻止しようとしているときは向こうも必死で死守していたけれど、こちらが関心を示さず、ある程度自由にさせてみることによって次第に減っていった。

幼少期からゲームや漫画、お菓子などを際限なく買い与えられ続けていた知人の子供は、欲しいものがなくなってしまったという。
そんな状態が良いか悪いかの話はさておき、きっとそういうことなのだろう。

もしもサークルによる行動制限が執着の原因を生んでしまってようであれば、ここはひとつ腹を括らざるを得ないのかもしれない。

とは思いつつも、SNSの柴犬アカウントなどで「本気咬みされた」という傷ましい投稿を目にするたび、距離感が近すぎるのが原因なのでは?と感じ、戦慄恐々している自分もいる。

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