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気質の異なる兄弟犬

寒さにめっぽう弱い私は日々の散歩が億劫になりつつあるが、ここ最近の気温の低下と反比例するように、子犬の散歩時間はどんどん伸び続けている。

毎日欠かすことのない朝晩の散歩は、平日は1回約1時間、休日は約1時間半を目安に出掛けているが、これらは私が散歩を切り上げている状態であるため、これを子犬任せにしてみるとまだまだ散歩時間は伸びるのだろう。

実際は歩き続けているわけではなく、所要時間の三分の一くらいは匂い嗅ぎをしている。
以前は住宅街を極力歩かないようにしていたが、季節の変わり目あたりから子犬は住宅街を歩きたがるようになった。
幹線道路沿いの道よりも興味が向くのは自然なことであるが、倍速再生の動画の如く高速で匂い嗅ぎしているような落ち着きのない犬は、我が家の子犬以外はまず見かけない。

平日は仕事があるため、朝晩ともに日照時間外の散歩が通常運転になっている。田舎道なので街灯は少なく、懐中電灯の明かりを頼りに歩いているが、山へと続く藪に隣接した道などを歩くとき、藪の中から時折聞こえてくる物音に毎回ちょっとしたスリルを味わっている。

先日は、そんな藪の中から飛び出してきたタヌキと対面した。
車に轢かれたタヌキの死骸を目にすることは多いが、生きているものと遭遇する機会は珍しい。
こちらの様子を伺っているタヌキをロックオンした子犬は、じわじわと前方へ距離を詰めようとするので力づくでリードで制御し、そそくさとその場を後にした。

その翌日は別の場所で、何かしらの野生動物に遭遇した。
坂道を猛スピードで駆け下りてきたと思いきや、こちらの存在に気付いた途端に道の脇にある速攻へと飛び込み、そのまま姿を消したためはっきりとした姿は確認出来なかったが、おそらくはタヌキ、もしくはイタチやハクビシンの類であると思う。

少し前に近所で大きな猿が出たときに全国ニュースになったし、市内では年に数回熊の目撃情報があったりするため、散歩中に遭遇しないように、ただただ祈るばかりである。

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警戒心の強い我が家の子犬に、"友達"といっても差し支えがないくらい安全に遊べる仲の良い存在が出来た。近所の大型犬である。

再会してひとしきりじゃれ合ったあと、子犬は相手の陰部を舐め始め、相手は舐めやすいように片足を挙げるのがお約束になっている。ちなみに双方雄犬である。

以前からお互いの散歩の時間帯が近いため、こちらが勝手に親近感を抱いていたが、ここ最近では暗い中で犬の散歩をしているのは我が家とその大型犬のお宅くらいだけということもあり、常に時間に追われているフルタイム共働き子育て世帯の身として、余計にシンパシーを感じている。

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我が家の子犬は四兄弟で、そのうちの一匹を職場の同僚が譲り受けたという話は以前の記事にも書いたが、本日初めてその兄弟犬と対面した。

休暇を取った同僚が職場に兄弟犬を連れてきたため、子犬同士の再会にはならなかったけど、写真や動画ではない目の前にいる兄弟犬のその姿は、我が家の子犬とあまりにもよく似ていたため非常に驚いた。
同僚からリードを渡されたので軽く一緒に歩いてみたところ、まるで子犬と一緒に歩いているかのような錯覚を起こした。思わず名前を呼び間違えてしまったほどである。

同僚は、常日頃からからこの兄弟犬の素行についての悩みをこぼしているため、さぞかし手の掛かる犬かと思いきや、実際に感じた印象としては我が家の子犬とは比べ物にならないくらい穏やかで大人しく、人懐っこい性格の持ち主だった。

初対面の人間複数人に囲まれても全く警戒するような素振りを見せず、誰がどこを触ろうとも唸りも吠えも全くしない。
仮に我が家の子犬が同じ状況下におかれたとしたら、唸る・吠える・噛むの3コンボを確実に繰り出すことだろう。

同じ両親から生まれた兄弟でここまで違うものかと驚いたが、犬種や血統からだけでは判別出来ない、個体そのものの気質の違いを目の当たりにした出来事であった。

ちなみに、このとき同僚から渡されたリードはショルダータイプのもので、以前にハーネスとリード選びを相談された際に、私が薦めたものである。
実際に使わせてもらったところ、両手を開放できる快適さは想像以上のものであった。
先日、例の如く暗闇の中での散歩中に糞を拾う際に手が糞まみれになってしまったこともあり、余計に羨ましくなってしまった。

しかし、天邪鬼な私はあえて今の手持ちスタイルを貫こうと密かに決意したが、実際はドラえもんに泣きすがるのび太のような心境なのである。

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