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価値観の置きどころの違い

ハーネスと同時に購入したダブルリードが、実はオーバーサイズであったことに今更ながら気が付いた。

改めて公式サイトを見返すと、購入したLサイズのリードは、体重15㎏~25㎏が適正とされており、約12kgの我が家の子犬には6~18㎏が適正とされるMサイズを選ぶべきであったのだ。

Mサイズのものに買い換えたいとは思いつつも、それなりの購入価格だったため躊躇している。
もう少し正確にいうと、妻の認可を得ることに躊躇しているのである。

このダブルリード、使い始めた当初からその重さが気になっていた。
体感的にはそれまで使っていたリードの10倍近くあるように感じ、特に先端についている鉄砲ナスカン2個については、体重12kgの子犬の身体にはちょっと大き過ぎるのでは?という疑問を抱きつつも、安全性を考慮したとかの、まあそういった類の仕様なのだろうと思う事にした。

散歩中、子犬は基本的に私の左側を歩く。
私が左手でリードを持っていることと、散歩コースの進行方向の左側に草が生えている箇所が多く匂い嗅ぎし易いからというのが理由だと思うのだけど、最近ではこれらに加えて、子犬の右半身に二つのナスカンが垂れ下がっているというのも、左側を歩く理由の一つになっているように見て取れる。

右側に子犬の興味を引くものがあった場合、当然のことながら子犬は私の右側へと移動するわけであるが、その際に身体の右半身にあるナスカンが左半身へと移動しない様に、ゆっくりと並行移動するその姿はどこか「欽ちゃん走り」を連想させる。
そして、ホームポジションである左側へ戻る際も同じように並行移動し、再び前進を再開する。

恐らく、ナスカンが身体の反対側に移動する際に起こる衝撃を避けているのだろうと思うのだが、1個50gあるというナスカンは、例えばリードを振り回して相手に直撃させれば、ちょっとした武器になるくらいの重厚感がある。

また、いわゆる「柴ドリル」が発動する際は、子犬はナスカンの存在もお構いなしに全力で身震いしているが、振り回したナスカンが首や脇腹を打撲しないか毎回少し心配になったりする。

適正サイズのナスカンの重量は1個22gであり、現状の半分以下の重さであればその辺りの心配は随分と軽減されるはずだ。

先日、妻と長女が夕方の散歩に出掛けたことがあったため、その時にリードを持っていた長女に重さについて訊いてみたところ、私と同じような印象を受けたようで、体重12kgの子犬にとっての100g(ナスカン2個)は、私に体重に換算するとおよそ6倍の600gであり、毎回約600gの重りを首の右側にぶら下げて歩いている状態だという、実にロジカルな指摘までしてきた。

ちなみに、子犬を迎える前の家族会議で「絶対にちゃんとお世話をするから飼って」と主張していた次女は、最初の数回だけ妻の散歩について行ったきりで、その後は一度も行っていない。

子犬の朝晩の散歩の99%を担当する私としては、散歩に出る度に毎回アンバランスな歩き方を目の当たりにするわけで、なんだか不憫に思えてくる。

成犬サイズになったとはいえ、1歳になるまでのあと4か月間はまだ成長段階でもある子犬の事を考えると、身体への過剰な負担は極力少ないに越したことはないはずだ。

以上のような考えのもと、意を決して妻にリードの買い替えを提案してみたところ、一瞬で却下された。実に予想通りの反応である。
「そのうち15㎏になるかもしれないし」という妻の主張により、この話は即座に終了した。

ちなみに、オーバーサイズのリードを購入した張本人は妻であるが、そんなことは口が裂けても言えるはずもなく、我が家のパワーバランスを再認識した次第である。

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ハロウィンにちなんで仮装した犬の写真を見せられた。

夫婦で協力して自作した昔のアニメキャラの衣装を、愛犬に着せたという妻の友人のSNS投稿の話である。

正確に採寸し、型紙から製作したというその衣装は、非常に手の込んだ力作であり素晴らしいクオリティではあるとは感じるものの、こういったものを目にするたび、犬にとっては結構なストレスを与える行為なのではないかと感じてしまう。
私はといえば、いつからか極力犬にストレスを与えずにすむ方法を模索するようになっていった。

ひとえに犬を飼養すると言っても、人それぞれに価値観の置きどころの違いがあるということを知る。

閑話休題。

先に述べた妻とのやり取りの一部始終を横で見ていた長女に「重たいナスカンも、少年漫画の修行みたいにトレーニングになるのでは?自分なんて10㎏近くあるリュックサックを背負って毎日坂道を登下校しているけど、全く問題無い」と、たしなめらた。

10㎏の中身の正体は、使わない教科書も一切合切詰め込んだ只のモノグサであると突っ込みたい気持ちを抱きつつも、なんとも頼もしく成長したものだなと感慨深く感じた、今朝の出来事である。

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