季節の変わり目、備忘録。
ここ数日間、再びハーネスの装着に四苦八苦していている。
指先に持ったトリーツをハーネスの輪っか越しに子犬が食べている状態にして、そのまま腕をゆっくりとこちらへ引きよせながら、なるべく子犬の自らの意思で頭を輪っかにくぐらせるように仕向けていた。
最初のうちはこの方法で割と苦労もなく装着することが出来ていたけれど、毎回繰り返していくうちに段々と途中で頭を引っ込めるようになり、ついにはトリーツだけを素早く奪い去るようになってしまったのである。
ハーネスを嫌いになってしまわないよう、極力子犬に負担がかからないようにと考えてこのような方法をとっていたけれど、ついには30分くらい経っても装着することが出来なかったため、痺れを切らした私は、子犬がトリーツを食べ始めたその一瞬の隙をついて、ハーネスの輪っかを子犬の頭にササっと通した。
子犬は輪っかを通すまでは逃げようとするけれど、一旦通してしまえば観念したかようにじっとしている。しかし、いまだに装着直後の子犬の尻尾は下がり気味だ。
以前はハーネスの装着感そのものに不快感を示しているのかと考えていたけれど、実はそれ以上に輪っかを通す行為自体が子犬にとってはこちらが考えている以上にストレスを与えているのではないかと感じている。
平日は仕事があるためあまり時間をかけられないが、この押し問答のような散歩前の儀式をどうにか解決出来ないものかと絶賛模索中である。
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気温が下がってきたこともあり。休日は少し足を伸ばして普段の散歩コースでは通らない道を歩くようにしている。
そんな休日の散歩中、前方に何かしら動物の死骸が横たわっているのが視界に入った。
そのサイズ感から最初は猫かと思っていたけれど、近づいてみるとその死骸は兎だった。野兎と思われるその死骸は、肛門の位置から内臓が飛び出していたため、おそらく乗り物の類に轢かれたのだろうと思う。
地方在住者にとって、車の運転中に道路上で車に轢かれた動物の死骸を目にする機会は多いが、このような至近距離でダイレクトに対面する機会は少ないため、久しぶりに結構な衝撃を受けた。
兎は狭い歩道のど真ん中に横たわっていたため、当然のことながら子犬の注意はそちらへ向いてしまう。
普段はリードを強く引き寄せることはほとんどしないけれど、この時ばかりは兎に近づこうとする子犬をリードで制止して、早々にその場を後にした。
私は昔からこういった刺激の強いものに対する耐性がかなり低い。なるべく視界に入れないよう、なるべく焦点を合わせないようにしているのだけど、前方から歩いてきた男子小学生は、その場に立ち止まり、しばらくの間その痛々しい兎の死骸をじっと眺めていた。
以前であれば、「田舎ではよくある光景」のひとことで片づけて、そのうち記憶からも消えてしまうような出来事だったけど、今回は子犬を連れて歩いていたこともあり、野生動物と飼養動物の生命について色々と思うところがあった。
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ここのところ、子犬が食餌を残すことが増えてきた。
パピーの頃から毎回ゲップを挟みながらあっという間に間食していた給餌は、この夏から秋への季節の変わり目あたりからペースダウンした食べ方になり、日によっては半分くらい残すようになっていった。
最終的には私が皿の中に残った手べ残しを手でかき集めて、子犬の口元へ持っていくとなんとか完食することはできるけれど、渋々食べているような雰囲気をひしひしと感じる。
これは食に対する執着が薄らいできたと考えてもよいのだろうか?
かつては育犬ノイローゼになるくらいに悩まされたフードガードが鳴りを潜めるのであれば喜ばしいが、食べないというのもこれはこれで悩ましいということを知った。
ただし、食欲減退の原因のひとつに、子犬に間食をさせ過ぎているという説もある。食事中の私たちを物欲しそうに見つめながら、要求吠えならぬ、要求ハカハカ(キラキラした目でハッハッいっている)をされると、ついそれに応じてしまっているからだ。
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日に日に日照時間が短くなってゆく実感が、例年以上に強い。
このままあっという間に冬へと突入してゆくのだろう。
平日は仕事があるため、どうしても朝晩ともに暗い中での散歩になってしまう。つまり、子犬は平日の5日間はほとんど太陽の光を浴びていないことになる。
人間の身体は日光を充分に浴びないことでビタミンD欠乏症になると聞いたことがあるが、果たして犬の場合はどうなのだろうか。
また、1年の半分ほどを冬が占めていて、日照時間は約6時間とかなり短めのフィンランドの場合、あまり日光を浴びることが出来ないことの弊害としてメンタル疾患になってしまう人が少なくないとのことであるが、これは犬にも当てはまりそうな気もしている。
暗闇の中での散歩については、車のヘッドライトくらい明るい懐中電灯をAmazonで購入したのでそこまで歩きにくさはないが、子犬の糞を拾うときが少々面倒だ。
こんなとき、両手がフリーになるというショルダータイプのリードが欲しくなるが、これもきっと妻の稟議を通らないだろう。
思春期真っただ中の我が家の娘たちの元へ未だにやってくるというサンタクロースに、今年は私も手紙を添えておこうかと考えている。