048ナポリタンだけど大丈夫?

食べ物は食べなくても良いけれど、体調を崩すと厄介なので何かしらを口に入れる日々。
もらったものは食べ、向かいや隣に座る人がいるから食事にする。

自身の意思で食べるときはとてつもなくお腹が空いたと感じる時か、口が寂しい時だけ。あとは、行ってみたいカフェやお店に入った時。

今日もまた、食べなくてもやっていけるが何かしら口に入れないとだめな気がするのだった。

家に帰って適当に料理をすることもできた。そうなればレトルトのグリーンカレーかほうれん草と冷凍のエビを使ったケチャップベースのパスタだろう。それか袋に入ったラーメンを茹でるか。意味もなく開けた非常食になる缶パンも悪くはない。家に牛乳があったしな。

でもどうしてか今日は上手くその気になりきれず、週末の休みに入るには何か物足りなさを感じていた。外で食べればお金が減る。貯金をしたい私には不都合だったが、よく行くbarに足を向けた。

barには3人のサラリーマンが来ていて、カウンターが男性の背中で埋まっているように感じられた。それでもカウンターは空いているので角に腰掛ける。

ここのbarでは食べ物も出してくれるので、
パスタとジントニックを頼む。
パスタは以前一度だけ食べてとても美味しかった。茄子が入ったトマトベースのパスタは当時2人で食べたがぺろりと一気に無くなった。茄子もいつからか嫌いとは言わなくなり、食べたいと思う日があるくらいだ。
ジントニックは父が昔珍しくビール以外を頼んだ時に一口もらい、目覚めたものだった。甘くて爽やかで、ジュースではないけれど飲みやすく、私がお酒を好きになった理由だった。

ここのジントニックは少しお酒が多いのか、優しくほんのり酔えたのを覚えている。それでもトニックが甘く、お酒を感じさせすぎない、絶妙な好みの味だった。
ジンは日によって銘柄が変わっていて、特段美味しく作る方法を詳しく知らない私は味だけでいうならばビフィータが好きだが、あまり好きではないボンベイサファイアの時もここのジントニックは美味しかった。
今日はギルビーだったので馴染みの味ではあったが、やはりここのbarは特別美味しく感じた。

ナポリタンには家では買わないようなベーコンとマッシュールームきのこ、ピーマンが入っていて、バターをフライパンに挽いた後にそれを腕で回しながら炒めるのだった。茹でている麺もうちとはまるで違うようで羨ましくなった。
お皿に盛られると粉チーズがかけられ、上にパセリを降る。

一口。ああ、美味しい。
とても美味しい。
誰かが自分のために作ってくれる料理はいつだって美味しいものだ。
レストランに行く時もいつも美味しい。でも、barには今私しかいなくなってしまったから、本当に私のためだけに使われたフライパンにまな板に包丁にトングだった。贅沢な美味しい優しい味を家のように安心して食べる。

食べ終わるのに時間は全然かからなくて、本当に幸せで満たされた心と胃があった。

トニックで口をスッキリさせながら、マスターとずっと話していた。
私はどうやら拗らせているらしく、色んな人にそれがばれてきている。そうして自覚もするようになった。考えすぎなのだ。でもどうしたって止めれないし、止めようと意識した時にはきっとそれについて考えているのが安易に想像できた。

2杯目は気になったベイリーズのバニラやベリーの香りがするお酒をミルクで割ったものにした。
甘くてデザートみたいに飲めてしまう。カルーアミルクと同じ部類だろう。ただ、カルーアミルクなんてものを私は自ら選びたくないので、私がその味を求めた時にはベイリーズ一択だ。それに、ただカルーアが嫌なのではなくて、ベイリーズの方がウィスキーも感じてきっとより特別に感じられるから。調べてみるとカルーアはべたべたとするような甘さもあるみたいなので、本当に私に合っているのはベイリーズなんだなと思った。

もう一つ気になった壜がある。
ボルスの黄色味のある、琥珀色に見えるボトルだ。
アプリコット、杏のリキュールで、それをそのままの味で飲みたい、知りたいという意味で選んだのだが、せっかくならカクテルにして何かしら割ってほしいと欲が出てしまい、甘い何かしらの果実風味のものとレモンで割ってもらった。
その何かしらの果実だったか、リキュールは、今値段が倍くらいになっており、もうこれが無くなったら入荷はないかな、とマスターが言っていた。タイミングが良かった。

話も尽きることはなくとも充分なくらい楽しみ、3時間ほどが経った。
3時間同じ人と話し続けるのは、自然体でいられる人に限るので、居心地の良いbarを見つけられて本当に嬉しい。

帰りは外に出た途端冷え切っていて、秋や冬の夜を感じさせた。身軽でいたいがために薄着をして来た自分を憎む。

近い家に着くとシャワーを浴びて眠るだけだった。高いものを使って満足に楽しみたいバスタイムだったが、少し妥協して買ったシャンプーとトリートメントが自分の髪質にここぞとばかりに合うので、これからずっと使い続けるだろう。

そんな事をして次の日の朝はきっかり6時間後にやってきた。6時間寝ても9時なのだから1日は長いですね、そうマスターに言って昨日は夜の挨拶を交わし、店を出た。

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