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#4 公民の授業困っていませんか?  準備編③

日頃の校務お疲れ様です。こんにちは。けーすけです。

授業をつくり方について発信をしています。
前回の記事は、こちらから。

My 授業のつくり方
【1】知識の確認
【2】MGを考える ← 今ココ
【3】MQを考える
【4】想定される解答を何パターンか考える
【5】MQまでにたどりつくためのSQ・知識を導き出す
【6】MQにいたる導入を考える
【7】教材の作成



前回の続きの②です。が、今回は自分の意図をわかりやすく伝えるため、過去に実際にあった経験談をストーリー風にしてみました。

授業の終わり、私はいつものように生徒たちに今日勉強したことのまとめを、プリントの所定の欄に書かせていました。「まとめを書かせれば、生徒たちの理解が深まるはず」と思っていました。指示は「このプリントで習ったことをまとめなさい」でした。

ところがある日、クラスで一番成績の良い佐藤君(仮名/後に東大に進学しました)が、授業後に私のもとへやってきました。

「先生、毎回のまとめ、何のために書いているんですか?」
「えっ?それは...君たちの理解を深めるためだよ」
「でも先生、ただ書かせるだけでは理解は深まらないと思います。必要ないと思います。」

この言葉でハッとさせられました。確かに、毎回、習ったことのまとめを書かせてはいるものの、生徒たちが何を理解すべきなのか、どのように考えを整理すれば良いのか、具体的な指針は示していませんでした。もとより授業の目標(MG)も提示もしていませんでした。それで理解を深められるか、自分でも不安になりました。

この後、改めて生徒たちのまとめをじっくり見直してみると、確かに書かれている内容は実に様々。ある生徒は要点を簡潔にまとめ、またある生徒は感想だけを書いています。生徒たちは何を理解したのでしょうか。さらにこれを評価しろって言われても、無理ですよね…。


②達成状況を評価できるように具体化させること

 こういった経緯から、「理解を深める」という漠然とした目的を提示したり、単なるまとめ書きをさせたりするだけでは、具体的な学びや適切な評価にはつながらないと確信しました。

 生徒が何をしたら「理解した」、「できた」、「生活を送ることが可能」と評価できるか。もしMGを見直してみて、評価できないのであれば、達成状況を評価できるように目標をさらに明確化する必要があります
 教員は生徒の頭の中を盗み見ることはできません。知識・行動・生き方について生徒が今どういう現状にあるのかはわかりません。なのでそれぞれがどう外部化されるのかを考える必要があります。

たとえば民主主義の時間だったら、次のようにになります。

【知識】
どうすれば、生徒が「多数決だけが民主主義ではないということ」を理解したことになるのか
➡まとめで、多数決以外の民主主義における合意形成の方法が書かれているか否かで判断。または小テストを行い、多数決以外の合意形成の方法が挙げられているか否かで判断

【行動】
どうすれば、生徒が「どうすれば政治的な決定に民意が反映されるのかについて自分の意見を持つことができた」ことになるのか
➡まとめで、正しい情報を根拠として自分の意見を書いているか、否かで判断。またはグループでの話し合いの中で、自分の意見を伝えたか否かで判断。

【生き方】
どうすれば、生徒が「何か物事の決めるときには、話し合いやくじ引きも選択肢に入れる」生活を送ることができるようになった」ことになるのか
➡まとめで、これからの人生の中で、責任ある市民として何ができるのについて、書いてあるか否かで判断。

 これら3つに共通していることは、成果物や議論など外部から評価できるものとなっている点です。このような場合はルーブリック評価をうまく活用できるとよいでしょう。
 あくまで、これは一例でしたが、このように評価が可能な段階になってはじめて目標がつくれたということになります。


 今回の授業の場合は、次のようにMGができるでしょう。

・多様な民主主義の在り方を理解し実践するために、
・多数決以外の民主主義を挙げながら、
・どのような合意形成の方法が良いか自分の意見を、根拠を持って他人に説 明することができる。

長い…ですが…「多様な民主主義の在り方を理解しよう!」よりも、明確になりました。こうなれば、生徒たちは何をすればよいかがわかった上で授業に臨むことができます。ただこれだけでは、いけません。目標とあわせて評価も、生徒にも事前に共有しましょう!



ラーニングコンパス(学びの羅針盤)

過程はわかったけど、目標をどんな内容にすればいいか心配がある人は、OECD Education 2030の「ラーニングコンパス(学びの羅針盤)」を参考にするのも良いかもしれません。

ラーニングコンパス

https://www.oecd.org/en/data/tools/oecd-learning-compass-2030.html


この中で、「変革を起こす力のあるコンピテンシー」を次の3つの要素から成るとしています。

・新たな価値を創造する力
・対立やジレンマを克服する力
・責任ある行動をとる力

https://www.oecd.org/en/data/tools/oecd-learning-compass-2030.html

これからのVUCAの時代は、「先生が正解を教える」授業ではなく、「生徒が正解を創る」授業にしていく必要があります。その中で多くの意見の対立が起こります。しかし、われわれはたとえそうであっても、公正な合意形成をはかり、イノベーションを起こす人材を育成する必要があります。この目標というか使命に対して、ラーニングコンパスの示すコンピテンシーは非常に参考になります。


ただ、上記の長い長いMGについて、毎回毎回プリントにのせたり、ノートに書かせたりして、生徒たちと共有するのは時間がかかります。ですので私は、さぼって本時の目標にもとづいて、簡素化した本時の問い(MQ/Main Question)を提示しています。

次回の記事は、MGをMQに落とし込む方法、生徒をひきつけるMQをどう考えるかを書きます。

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