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JICA海外協力隊 土壌肥料隊員ー佐藤 博友さん・岸本 明莉さん

みなさんこんにちは!国際協力サロンの渡邉です!

今回はJICA海外協力隊 土壌肥料隊員としてカンボジア、ボリビアに派遣された佐藤さん、岸本さんをお招きした勉強会の様子をお送りします。


佐藤 博友(さとう ひろとも)
1990年宮城県仙台市生まれ。弘前大学大学院農学生命科学研究科修了。同大学院修了後、国内肥料メーカーにて、研究・技術担当者として4年半勤務したのち、青年海外協力隊員として、カンボジア・バッタンバン大学農学部で講師・学生への技術支援・技術指導を行う。復職後、海外営業を担当し主に東南アジア向け肥料市場の開拓を推進中。

岸本 明莉(きしもと あかり)
1992年生まれ、奈良県出身。帯広畜産大学 資源環境農学専攻 修了。民間企業で勤務後、2019年度2次隊JICA協力隊として、南米ボリビアにて土壌肥料隊員として活動。新型コロナウイルスの影響により帰国後、帯広畜産大学にて、技術補佐員として勤務し、土壌調査や研究を行う。専門は土壌学。


JICA協力隊でも募集自体がかなり少なく、レアな職種と言われる”土壌隊員”。2019年2次隊として派遣されたおふたりの協力隊での活動内容や、途上国での土壌肥料を通じた支援(農業開発)についてお話いただきました。

🇰🇭自分が何屋であるか、忘れない🇰🇭

2019年12月、カンボジアへ派遣された佐藤さん。現地では、カンボジア地方国立大学 バッタンバン大学にて、学生向けに実験機材管理や機材操作指導を実施しました。

まず第一の要請は実験機材、特に原子吸光光度計を立ち上げ、稼働させること。

*原子吸光光度計:土壌中のカルシウムやカリウムなど、金属元素の濃度を測定するを分析する機材。土壌調査において、頻繁に使用される。

しかし、現地で目にしたのは想像を超える驚くような環境下で保管されていた機材たちでした。

剥き出しになった電子基盤は、セロハンテープで補強された箇所も。そして分析時に使う、発火性があり危険なアセチレンガスのボンベさえもポツン...と置かれている状態で、現状は想像以上に酷く、暗い印象を覚えたと言います。

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原子吸光光度計の修理依頼を出したりするも業者との連絡も繋がらず、前に進めることは難しいものでした。

実は、これらの原子吸光光度計は中国から届いた支援物資だったとのこと。現地では機材を扱える者もいないため、使用されることなく空き部屋に片されてしまう一方、現場での状況が把握できずただただ提供が続く支援物資。途上国支援の実態を目の当たりにすることとなりました。

他にも、土壌博物館の開設準備・作業環境整備としての3S 活動・日本語教育 と幅広く活動された佐藤さん。

「この土って良い土ですか?」
「肥料って何の為にあるんですか?」

シンプルであるが故に回答が難しいこれらの質問をたくさん受けてきた協力隊期間。自分の専門に対する意識が更に強くなったとお話してくださりました。

🇧🇴珍しい”土壌肥料隊員” 
ボリビア全土で活動して欲しい⁈🇧🇴

土壌学を専門とする岸本さんは、2019年2次隊としてボリビアへ派遣されました。

ごみの量が増えていること、その処理に関することなど、”ごみ”の問題が深刻化しているボリビア。岸本さんが受けたのは生ごみを使って作る”コンポスト”に関する要請でした。

事前にコンポストの質の改良や適正管理の指導、コンポストの利用普及について活動を準備し、いざボリビアへ!しかし、いざ任地に到着すると、「土壌肥料隊員は珍しいから任地だけに留まらず、ボリビア中で活動して欲しい!」「農業に関する機関やプロジェクトにも参加して欲しい!」とのお話があがってきました。

「土壌肥料隊員って、ほんとにレアな職種なんだ」と実感した瞬間だったと言います。

とは言ってもまずは、任地での活動を専念すべく、任地での生ごみの種類や分別状況を把握するために市場へ調査へと向かいました。

しかし前にしたのは、分別どころか、収集用コンテナに捨てられていない状態の生ごみたち。毎朝市場に向かっては、まずは生ごみをコンテナに移す清掃作業から始まったのでした。

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次に、コンポストを作るための環境整備を実施。活動先で紹介された”コンポスト”は、コンポストと呼べるものではなく、実際のところただの腐敗した生ごみだったと言います。

作成において、水分管理が最重要である中、実際は雨ざらしの場所に広げられていた”コンポスト”。雨が当たらない場所で作成できるよう、場所の確保を提案していきました。

しかし、迎えた2020年3月。活動がこれから波に乗っていく矢先に起きた、新型コロナウイルスの蔓延。岸本さん、そしてカンボジアで活動中だった佐藤さんも同時に、一時帰国を余儀なくされ、その後も現場復帰が叶わず協力隊としての活動を終えることとなりました。

”焼畑農業”と聞いて何を想像しますか?

突然ですが!土壌学を専門とするお二人から問題です!
「どの土壌がどの国のものでしょうか⁉︎」

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正解は、、、左から北海道十勝、マラウイ、インドネシア、北海道十勝、マレーシアの土壌でした!

国、地域によってこんなにも違うんですね。”人間”と一言で言っても顔や性格が違うように、”土壌”と一言で言ってもその色や含まれている養分は全く違ってくるのです。

今回は一番右の土壌を持つマレーシアの農業、”焼畑農業”について詳しくお話いただきました。

多種多様な動植物が生存する、マレー半島南部及びボルネオ島北部からなるマレーシア・サバ州。そんなサバ州山間部では、数百年も前から、短い作物の栽培期間と、長い休閑期間を併せ持つ焼畑農業、「伝統的焼畑農業」が行われています。

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畑となる場所に火入れを行いますが、その際、森林や山全体に火入れを行うのではなく、山の一部にしか火入れを行わないのが伝統的焼畑農業の特徴。

火入れを行なった1年目に陸稲栽培、2~3年目に野菜栽培を実施し、その後10年以上の休閑期間を経て再び緑あふれる森林に戻します。作物栽培においては化学肥料を一切使用せず、休閑期間を経て植生の養分を再生させ、再び行われる火入れによって養分を土壌に供給するのです。

「焼畑農業」と聞くと、森林伐採、森林火災などネガティブ印象を持つ方が多いのではないでしょうか。実際に現在では焼畑農業を行わないように呼びかけているマレーシア政府ですが、しかし、化学肥料を使わず、自然の力を循環的に利用して効率的に栽培を行う伝統的焼畑農業は、果たして本当に環境に悪い農業なのでしょうか。

特に先進国で需要が増加傾向にあるパーム油。熱帯雨林の伐採や焼払いによって栽培面積の拡大等懸念されていますが、その際の”伐採”や”焼払い”と伝統的焼畑農業が混合されてしまい、一般的に「焼畑農業」=ネガティブな印象が浸透しているのです。

みなさんは「焼畑農業」についてどう考えますか?

おわりに

最近では環境保全型農業、持続的農業、有機農業といった言葉をよく耳にするようになりました。しかし、これらの農法を行うにあたっても、土壌の性格や性質をよく理解しておかなければ、農業、環境、そして人間にもネガティブな結果をもたらす可能性が十分にあるということを、私たちは知っておかなければなりません。

土壌専門であり、”土壌肥料隊員”という珍しい経験を持つお二人をお招きした今回の勉強会。農業・農村開発に関心を持つサロンメンバーも多く参加し、胸が高まる貴重な時間となりました。

それでは次回もお楽しみに!

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