KokugoNote #25高1国語総合
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
若山牧水(1885-1928) 宮崎県出身
色鮮やかな様子が伝わってきますね。海の鳥であるカモメの「白」、青空の「青」、海の「紺」。どちらにも染まることなく、飛んでいるカモメに自分自身の姿を重ね合わせて、漂流する歌人としての生き方を詠んだものだと解釈できます。
ただ「哀しからずや」(お前は哀しくないのか?)と呼び掛けていることから、牧水さん自身はどこか寄る辺(べ)のなさを感じていて、淋しさを覚えていたのかもしれませんね。
キーワード:自然主義・旅と酒と歌を愛したこと・『海の声』・放浪歌人
夜ふかくわが庭に来てけだものの犬の水飲み身ぶるふ音す
齋藤 史(1909‐2002) 東京都出身
象徴的な短歌を詠む方なので、こちらも一語一語確認していく必要があります。
例えば、「夜ふかく」に訪れる人はよほど急用がある人に限定されますが、どうやら「庭に来て」いる段階で、そうではなさそうです。普通は玄関を訪ねますからね。「庭に来」たのは「けだもの」ですが、それが何を表すのかを確かめなくてはいけません。「犬の水」は自分の家で飼っていたペットのことなので、信頼関係にありますが、「けだもの」はただの侵入者です。その侵入者は身を潜めている訳でもなく、大きく「身ぶるふ音」を立てて、遠慮する様子もありません。それを聞く作者は、気が気でない訳です。
どういう状況下で詠まれた短歌なのかというと、これは背景を知らないと全く見当もつかない短歌です。作者の父ちゃんが、1936年(昭和2年)に2・26事件に関わっていたことが背景にあります。日本史に詳しい人は知っていると思いますが、2・26事件は皇道派陸軍将校らによるクーデター、政党政治を変えて、天皇親政に変えようとした武力騒乱です。この事件に父ちゃんが連座して禁固刑になり、他の地人も処刑されたという経験があったのです。その不安や苦悩が詠まれたものだとされています。
こちらの方のブログに詳しい。https://bit.ly/2H0VPQn
キーワード:2・26事件、象徴表現、自己内部の苦悩、『魚歌』
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