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書き始めて分かった、自分の中にあった「表現したい」マグマ。書いていないと爆発してしまうかも

気になるnoteクリエイターに、國學院大學メディアnote担当が「お話を聞いてみた企画」13弾は、「本を出すの!」という強い意志がそのままアカウント名になっている、本田すのうさんです。3人のお子さんを育てながら、毎日のようにnoteに投稿を続け、フォロワーからの評価も高い本田さん。書くことへの思いや、noteとの関わりについて伺いました。

——國學院大學メディアnoteのお題企画「#私のコレクション」にご参加いただき、ありがとうございました。そして受賞おめでとうございます。

ありがとうございます。でも、noteに書いたとおり、真の受賞者はコレクションをしている息子だと思います。

——今日は、息子さんのKくんも来てくれました。せっかくなので、お母さんを受賞に導いたコレクションについてちょっと聞かせてください。Kくん、鳥が大好きなんだよね。

はい。でも、いつから鳥が好きになったのか分からなくて、たぶん1年生の終わりぐらいかな。羽根を集めるようになったのは、2年生の後半ぐらいからだったと思います。

「#私のコレクション」に登場した鳥博士!? Kくんも同席してくれました。

——集めた鳥の羽根を、どのように管理しているんですか?

羽根を拾ったら、鳥の名前や羽根の種類を図鑑で調べて、拾った場所と日付を書いて、紙に貼って標本のようにしています。

Kくんが整理した鳥の羽根の一部。1枚1枚ていねいに台紙に貼り付け、データを書き込んでいる。


Kくんが鳥について調べたことをまとめたノート。すでに8冊!

——夏休みの自由研究も鳥をテーマにしたってお母さんから聞いたけど、どんな内容?

去年の自由研究で、カラスの生態が分かる絵本を作りました。カラスって、好きじゃない人が多いので、どんな鳥か知ってもらえば、カラスを好きになる人もいるかなと思ったんです。同級生の何人かは、絵本を見て好きになってくれたみたい。
……でも、今は鳥は一番じゃない。歴史が好きになったので、今年の自由研究は小田原城のジオラマを作りました。

——次は歴史! それもすごいね。
(本田さんに)コレクションするだけではなく、分類して整理する能力も含め、小学校4年生とは思えないです。「#私のコレクション」というお題なら、このことを書かずにいられませんね。

親ながら、好きなことに対するKののめり込み具合と集中力には感心してしまいます。私の人生であまり出会ったことがないタイプです。Kのコレクションは、「#私のコレクション」というお題にはぴったりでした。うちは男の子が3人いるのですが、それぞれに個性があって、その発言や行動に「そういう考え方をするんだ!」と教えてもらうことも多くて、noteに書いています。

——3兄弟だと書くことがたくさんありそうですね。ではここからは本田さんに伺っていきます。本田さんは「文章を書くことを仕事にしたい」とnoteに書かれていますね。

はい。最初の動機は「収入を得たい」でした。だからどこかに働きに行くことも考えたんですが、子どもが3人、しかも一番下はまだ2歳で、外に働きに出るのは難しい。家の中でできる仕事はないだろうかと考え、文章を書いてみようと思ったんです。

私の友人に、過去に書いたブログがずっと読まれ続けて、毎年数万円の利益があるという人がいるんです。その話を聞いて「私もブログで収益を」と、あるブログサービスを利用して毎日更新しました。ところがほとんど収益など上がらなくて……。収益以前に、ブラウザで検索しても私のブログが出てこないんです。タイトルや、キーワードを入れて検索してもヒットしない。私のブログに誰もたどり着けない! これではダメだ……と思っていたときに「noteは検索にヒットしやすい」という話を聞いて、2023年12月からnoteを利用するようになったんです。


——当初、収益を目指し、ブロガーになろうとしたんですか?

いえ、最初は商業ライターになろうと思いました。ですが、募集が多いSEOライティング(※注)はテクニックが必要そうで、とても自分にできるとは思えませんでした。いろいろと調べていくとライターは企業から依頼を受けて、企業の希望する内容を書くことが多いと知り、はたして自分にできるだろうかと不安になったんです。
そこで、試しに「ある企業から依頼が来た」と架空の設定を考えて、文章を書いてみたんですが……書けなかったんです。自分は、自分の好きなことを書いていきたいんだと改めて分かって、noteで書いてみようと思いました。

——noteではどんな記事を書き、どのように仕事にしていこうと考えているのでしょうか。

自分が書くジャンルは「子育て・家族」「発達障害・凸凹」「書くことについて」の3つです。noteでは、いくつか設定している有料記事で収入を得たり、コンテストに応募して賞金をいただけたらと思っていますが、まだまだです。ちなみに國學院大學メディアnoteのコンテストでいただいた賞金は、書く材料を提供してくれた息子の鳥に関する活動に使いました。

——競合も多い内容かと思いますが、書くときに、本田さんらしさを出すために工夫していることはありますか?

自分の意見を押し付けるようなことは書かず、見たまま、現実に起こったことをそのまま書くようにしています。

私はいろいろなSNSを見て、たくさんの記事を読みます。たとえば子育ての記事があって、そこに「子育てはこうしたほうがいい」と、書いた方の意見が入っていると、「私はこんな風にできない……」と自分を責めることが多いんです。
だから、私自身は起こったことをノンフィクションのように書くにとどめて、ちょっとここにひとこと入れたいなと思っても、意見は入れないようにしています。
読む人に「自分にはできない、自分はダメなんだ」という気持ちを持ってもらいたくないので。


「人を傷つけたり、嫌な気持ちにさせる文章は書きたくないです」と本田さん。

——本田さんのnoteのトップ画像に「1mmだけ気持ちが上向く文章を」と書いてありますが、そういう思いがあるんですね。

そうですね。読む人の気持ちが、1mmでも上向けばいいなと思って書いています。
だから書いた原稿は何度も読み返します。書いてすぐにnoteにアップすることはなくて、最低でも3日は寝かせて、読み返し、自意識が出ているところや、つい余計な一言を書いてしまっているところがあったら消してからアップするようにしています。そして、どんなに暗いことや悲しいことを書いても、最後は明るく終われるように気をつけていますね。
あ、でも、「書くということ」について書くときは、感情入れまくり、もう情熱だけで書いている感じです!

——確かに、「からす なぜ鳴くの この童謡の作者は」の記述は、本田さんが文を書くことに凄まじい情熱を注いでいることが伝わってきました!

いやもうあの文章は、書きながら悩んで、一か月ぐらいずっと推敲し続けて、最後は正解が分からなくなるぐらい読み返したあげく、思い切ってアップした文章です。

——書くことについての記事は90以上のスキがついている記事も多いですね。そのほか、お子さんの行動を書いた記事も人気です。

今日同席しているKが長男で小学4年生。次が小学1年生、1番下は2歳です。次男はサッカーが大好きで、三男は……今のブームはおにぎり(笑)。
それぞれ個性がありますが、子どもたちと「やってみた」シリーズみたいな記事を書いていて、それもよく読んでいただいているみたいです。

——本田さんの視点が親の心情寄りにならず、観察・分析している客観的な書き方であることも人気の理由かと思います。
ところで3人のお子さんを育てながらの執筆は、かなり大変だと思いますが、それでも本田さんが書き続けるのはなぜでしょう?

文章を本格的に書き始めたのはnoteを始めてからですが、そこで分かったのは、文章が自分の考えていることを一番表現できる方法だということです。

私、話すのは得意じゃないんです。それに、今の生活だと仕事にも出ていないし、友達とちょっとした立ち話をする機会もありません。家族としか話していない日が多くて、考えたことや話したいことが体の中に溜まっていく感じなんです。

noteを書き始めてから、「ああ、自分の中には表現したいこと、人に聞いてほしいことが、じつはいっぱいあったんだ」と気がついたんです。体内に、マグマみたいに溜まっていたんですね。その出口が、書くことだと分かったので、もし書くことをやめたら自分が爆発してしまうかもしれません(笑)。
だから書かずにはいられないんです。


——書きはじめて、自分の中のマグマに気がついた。

はい。最初は収入を得たいという動機でしたが、今は自己表現の大切な手段だと思っています。
もちろん、今も自分が書きたい世界を誰かが求めてくれるのなら、要望にお応えして、仕事として文章を書いていきたいと思っています。それと同時に、今はとにかくnoteを書き続け、出せるコンテストには出す、それが自分の軸になっています。

——ほぼ毎日、noteを更新されていますが、どうやって書く時間を確保しているんでしょう。

朝5時ぐらいに起きて、7時まで書いています。
「あっ、このことを書こう」というアイディアは、浮かんだらすぐにスマートフォンのメモ帳にメモします。なぜか、布団の中にいるときに思い浮かぶことが多いんです。布団から出てしまうと子どもたちが起きてしまうので、布団の中でひたすらスマホで書いています。原稿自体もスマホで書くことが多いですね。自分のパソコンを持っていないので。

布団の中以外でも、ネタが浮かんだらまずスマホのメモ機能に書いておき、それをもとにnoteに書いて、いったん下書き保存しておきます。下書きだけで100本ぐらい溜まっていますが、アップできるのはほんの一部……。なるべく毎日更新できるようにがんばっています。

——それであれだけの更新が可能なのですね。noteではほかに得られたもの、学んだことなどありましたか?

noteのクリエイターさんたちとつながれたことが大きかったです。コメントをくださったり、私の記事を紹介していただいたりなど反応をいただけることが本当にありがたくて。これがなかったら心が折れていたと思います。私の方も「素敵だな」と思ったクリエイターさんの記事を紹介したり、一緒にnote上で企画を考えて実行したりしています。

また、尊敬するクリエイターさんにもたくさん出会えて、そんな方の文章を読んで打ちのめされたり、励まされたり……。すごく大切な空間ですね。noteがなかったらこんなにがんばって文章を書き続けていられなかったと思います。

——商業ライターからnoteを主戦場にと形を変えた“書くことを仕事にする”目標、最終的なゴールはどんな風に設定していますか?

うーん、今は眼の前の、noteを書き続けること、そして創作大賞での入選を目指すことですかね。また、note以外にも文章のコンテストがあるので、どんどん出していければと思っています。

本出すの! がペンネームですが、それが最終目標というわけでもなく、人に求められて認められる内容を、ずっと書き続けていきたいです。

——ありがとうございました。
1mmでも気持ちが上向く文章をというモットーの通り、読む人の心をあたたかくする、“愛”にあふれた本田さんの文章、これからも楽しみにしています。

※SEOライティング……ユーザーがネットで検索したときに情報が上位に来るようにキーワードや構成を考えた文章の書き方のこと。WEBサイトへの流入数を増やすためのテクニック。

本田さんとKくんは、大学構内を歩きながら次々と興味があるものを見つけ、観察していた。   好奇心は親子とも強そうだ。

本田すのう(ほんだ・すのう)
書いて読む主婦。夫が単身赴任中のため、3兄弟をワンオペ育児中。「書くことを仕事に」を目指して日々、noteの更新に励む。note✕國學院大學メディアnote公式「#私のコレクション」で受賞。

note https://note.com/sanji_cinderella/

取材・文:有川美紀子 撮影:押尾健太郎 編集:篠宮奈々子(DECO)  企画制作:國學院大學