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日々感じたことを淡々と。人気クリエイター日野笙さんのnoteを続けるコツ

気になるnoteクリエイターに、國學院大學メディアnote担当が「お話を聞いてみた企画」第5弾は、2021年(令和3年)元日から毎日欠かさずnote投稿を続ける日野笙さんです。日々の中で出会うちょっとしたことや、ふと生まれた感情についてまとめ、フォロワー増加中の日野さんは、どのようにして書き続けるモチベーションを保ち続けているのでしょうか。

——國學院大學メディアnoteをご覧になったことはありますか?

はい。前身にあたる「キャンプを考える研究室」のときから、時々拝見していました。國學院大学メディアnoteさんのお題企画に参加したこともあります。そのときに、記事を取り上げていただきました。

そして気がついたんですが、國學院大學メディアnoteさんって、一般のクリエイターにもスキをつけていらっしゃるんですよね。私のnoteにもつけていただいたことがあって、うれしかったです。公式のアカウントって、一般クリエイターにスキをつけない印象があったので、なんだか公式なのに「中の人」の顔が見える感じがして……。きっと、このnoteの担当の方は、すごく愛情を持ってこのアカウントを運営しているんじゃないかな、などと想像していました。

——身に余るお言葉ありがとうございます! 日野さんは、毎日必ずnoteを更新されていますね。なかなか大変なことだと思います。毎日更新しようと思ったきっかけは?

いくつかあるんですけど……。当時コロナ禍で今までやっていたこと、楽しんでいたことができなくなってしまい、家にいる時間が圧倒的に増えました。その中で以前とは違う楽しみを見つけたいなと思ったことがきっかけです。noteを使ったのは、たまたまなんですけど。
 
あとは、毎日書いてみますと宣言したnote「【気がついた日】2021年、毎日noteはじめます。」に書いたように、「書き続けることで自分になにか変化が起きるか、自分を眺めてみたい」ということもありました。

——実際に書き始めてみてどうでしたか? 思ったより大変でしたか?

始めた頃はそれほど大変ではなかったです。というのは、宣言した2か月ほど前から毎日文章を書き溜めていて、いわばストックが50本ぐらいありました。
これには理由があって。以前ある創作活動をしていた友人が、「これから毎日作品をアップします!」と宣言したことがあったんです。そのとき「すごいな」と尊敬する思いで見ていて、応援の気持ちでいっぱいでした。ところが、14日~15日ぐらい経ってからでしょうか、突然「毎日チャレンジ、終わります!」と、唐突にやめる宣言をして終わっちゃったんです。

——やっぱり、大変ですものね。

そうですね。でも私はその人を尊敬していたし、応援していたからちょっとモヤモヤしてしまったんです。本人からやめた理由もいろいろ聞いたんですが、その1つ1つに「こうすれば解決できるのでは?」と心のなかで思ったりして……。

——たとえばどんなことを思ったんですか?

「毎日締め切りに追われるのがストレスだ」という理由については「前もっていくつか用意しておいて、すぐに出せるものをアップすればいいのに」と思ったり、「締め切りに追われるとクオリティに波ができて嫌だ」とも言っていましたが、自信を持てる内容のものをストックしておけば、その中から納得できるクオリティのものを出せるわけですから、締め切りに追われることとクオリティの波に悩むことの両方を解決できるのではと思いました。

——確かにその通りですね!

ええ。とはいえ、14〜15日頑張った人に対して勝手にモヤモヤするのは失礼じゃないかとも思ったんです。「じゃあ、自分はできるの?」という問いが自分の中に生まれて。だったら、自分が考えた解決法で本当にできるのか検証してみよう……ということも毎日書こうと思った理由です。

——なるほど! そして、今現在まで1100日以上達成している……! ちなみに毎日の生活の中でいつ記事を書いているんですか? 毎日のルーティンは?

ルーティンなんていうほどの大げさなものはないんです。朝起きて、ご飯食べて会社に行く。通勤途中、歩いているときなどにネタを考えたりする。私、お酒を飲みに行くのが好きなんで、飲みに行った先で人と話したことがヒントになって、ネタにしたりもしますね。

あとは帰宅後、夕食を食べたら文章を書いたり、投稿する分の記事を準備して寝るって感じです。今では「note書く前って、夜は何をしていたんだろう?」って思うほど、帰宅後は書くことに時間を使っています。ときどき、「もうだめだ、今日は書けないし、やめたい。飲みに行きたい!」って思うこともあります(笑)。

ときには屋外で飲むことも。

——記事を書くのに「◯分で書き上げる」など、ルールを決めていらっしゃいますか?

いえ、今はそういうルールは決めてなくて、結構時間がかかっていますね。1つ書き終わるのに2〜3時間ぐらいかかっているんじゃないかな。文章を書くだけでなく、見出しの画像を選ぶなど、付帯する作業が結構あるんですよね。

——平日の夜はほぼ執筆なんですね。毎日の更新を楽しみにしているファンも多く、1322ものスキがついた人気記事もありますね。

「私が『つまらなそう』と思った父の仕事」は、コンテストで賞をいただいた記事です。これについてはすごく不思議なこともあって、賞を取ってから2〜3週間後に、突然X(旧Twitter)でこの記事を拡散してくださる方がものすごい数現れて、いわゆる“通知が鳴り止まない”状態になって……。2〜3日で終わったんですけど、なにがきっかけでそうなったのか、今も分からないんです(笑)。

——注目されると、その次の記事も期待に応えよう、とプレッシャーがかからなかったですか?

いや、そういうことはなく淡々と……。本当に日々感じたことや、ふと思ったこと、身の回りのこと、銭湯とお酒という自分が好きなことを書いているので。「これを書いたらバズるだろう」とか、そういうことは全然思ってないんです。マーケティング的なこともよくわからないので書きたいことを書いています。ただ、人を傷つけるようなことだけは書かないと、そこだけは決めていますね。

よく持ち歩くお風呂セット。
「珈琲牛乳のタオルは、黒湯が売りの改正湯という銭湯のオリジナルタオル。
タオルがお湯の色に染まって珈琲牛乳になるそうです」

——誰もが共感できる文章ですよね。でも、ある境界線から先の「生の日野笙さん」は見えないようにも思えます。

どうなんでしょう? 書いていることは私生活で経験したことが多いので、プライベートではあるんですが(創作も一部ありますが)。だけど、記事として出す文章には、書いている本人の色(癖)が出すぎないほうが読む人が置いてけぼりにならないかな?とは思っていますね。

——そういう感覚は、どうやって得られたのでしょう。昔から文章を書くのが好きだったのですか?

とくにそういうわけでもないんですよ。小学生の頃って、作文や感想文を書かされることが多いですが、その時も文章そのものより、原稿用紙の最後のひとマスにぴったり「。」が来るにはどう書けばいいかという、パズルみたいなことをして遊んだりはしていました。
大学ではプロダクトデザインを専攻し、それなのに卒業後外資系の広告代理店に入社。平面のデザインをやっていましたが退職し、現在は縁があって空間デザインの仕事をしています。

——文章を書くこととは関係ないお仕事なんですね。日野さんのnoteはこれからも人気を集めると思いますが、文章を仕事にすることは考えていない?

今はあまり想像できていないという感じです。書くことを仕事にするって……たとえばライターさんなどの場合は(想像ですが)、好きなことだけを書くわけにはいかないでしょうし。今はおもに自分の生活の中でのことを書いているので、仕事にするというより書くことと、今の生活と、両方がなければならないかなと思っています。

——メンバーシップやマガジンをはじめ、読者が日野さんを応援するシステムもありますね。

メンバーシップは、読んでくださっている方にどうしたら楽しんでもらえるかなと思って、プランによってできることを色々考えてみたんです。今「眺めるプラン」「覗き込むプラン」のほか「触れ合うプラン」「包み込むプラン」などがあり、メンバーシップの方とは掲示板を使って創作リレーをやってみようとしていますが、読者の方がどんなものを望んでいるのかまだ手探りの状態です。リレーと名乗りつつ、私が一人で書き続けることになったらどうしよう(笑)。

——noteを続けてみて、ご自分に変化はありましたか?

そうですね。noteを書く前だったらどんどん忘れてしまったであろう日々の小さいことを、よく思い出せるようになった気がします。書かないと日々のことって忘れてしまいますよね。それが、文章にすることで自分の中に残っていく気がして、本当に小さなできごとを覚えているようになったかな……? 

作業をする自宅のデスクとPC。

——お話を伺って、noteだけでは見えなかった日野さんの実像も見ることができた気がします。最後に、今後の目標をお聞かせください。2月20日(令和6年)のnoteでは大きな目標を掲げていらっしゃいましたね。

あ、そうですね! 宅建(宅地建物取引士)の資格取得に挑戦しようって! 今の仕事に直接の関係があるわけではないんですが、社内にはこの資格の優遇制度があるので挑戦してみようかなと思いまして。10月に試験があるんですが、取れるかなぁ?

——1100日以上もnoteを書き続けた日野さんならきっと良い結果が出る気がします!
これからも私たち含め読者の心に残るnote、楽しみにしています。

日野笙(ひの・そう)
2021年1月から毎日noteを投稿。空間デザインの仕事をしながら、日々感じたことや身の回りのことを書いている。
好きなものは銭湯とお酒。

https://note.com/hino_sou/ (note)
https://twitter.com/sou_hino (X)

取材・文:有川美紀子 撮影:押尾健太郎 編集:篠宮奈々子(DECO) 企画制作:國學院大學