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預けた手荷物が何事もなく手元に返ってくる。そんな“当たり前”を担うのが私たちの使命です

中部スカイサポート株式会社
袴田 侑里香さん

2019年4月に新卒で中部スカイサポート株式会社に入社した袴田侑里香(はかまたゆりか)さん。学生時代はバレーボールに励み、「昔も今も体を動かすことが大好き」と笑顔を見せる袴田さんは、メインの担当業務である手荷物の積み込み作業に日々向き合っています。

モットーはよい意味で「過ぎたことは気にしない」。失敗にとらわれず、目の前のやるべきことと向き合い成長を重ねてきました。

入社6年目を迎え新人教育に携わる中で、これまでの歩みを振り返ることも増えたといいます。そんな袴田さんに、グランドハンドリングのお仕事に就いたきっかけや日々のやりがいなどを伺いました。

■友人の影響で「旅行業」から方向転換。好奇心をバネに、グランドハンドリングの道へ

--- 袴田さんは新卒で中部スカイサポートに入社されたとのことですが、グランドハンドリングのお仕事に就くきっかけは何だったのでしょうか?

専門学校の同級生からグランドハンドリングという仕事があると教えてもらったのが最初のきっかけです。

旅行関連の仕事を目指して進学した専門学校には航空関連の学科もあって、そこで学ぶ同級生の将来の夢がグランドハンドリングの仕事に就くことでした。正直、グランドハンドリングという職種があるんだと、そのときに初めて知りました。

--- 「グランドハンドリング」と聞いてどんなお仕事だと想像しましたか?

同級生の話を聞いて、そういえば海外旅行へ行く飛行機で出発時に手を振っていたスタッフさんの姿を見て「かっこいいな」って思ったことがあったな、なんて記憶が蘇って。あの人たちの仕事がグランドハンドリングというものなんだと知って、どんどん興味が湧いていきました。そして、「旅行関係の仕事より私には合っているかも」と思い始めるまでになりました。

--- もともと目指していた旅行に関するお仕事とは内容がまったく異なりますよね。方向転換に対するためらいはなかったのでしょうか?

小2から高3までバレーボールをやっていて、部活でもすごく鍛えられていたので体力的な心配はありませんでした。知れば知るほど、むしろ体を動かせる仕事が良いなと思ったくらいです。

働く場所が「空港」という非日常的な点も惹かれたポイントです。空港の利用者には、私たちグランドハンドリングのスタッフが働いている現場を目にする機会はあまりありません。限られた人しか目にできない特別な景色を毎日見られるなら、仕事も苦にならないのでは…と思ったんです。

最初は漠然と、「お客さまが飛行機を乗り降りするための搭乗橋をつけれるようになりたいなぁ」、「機体を動かすプッシュバックを経験したいなぁ」、なんて考えていましたね。

■先を見通す力が求められる手荷物の積み込み作業。大変だけれど、だからこそある達成感

--- 現在はどのような業務を担当しているのですか?

専門学校2年生の後期から当社の事前就労生として勤務して、入社後は約半年間の就労を経てハンドリング1部手荷物サービス課に本配属となりました。今は主に手荷物の運び入れ作業を担当しています。

受付カウンターでチェックインを済ませたお客さまが預けた手荷物は、ベルトコンベアーに乗って私たちが作業する「荷捌き場」に届きます。それらの荷物を飛行機ごとのカートに仕分けるのが主な業務です。
1日に扱う手荷物は何百個にもなります。国内線だと荷物も軽いものが多いんですけど、国際線だと20、30kgクラスが多いのでなかなか重労働ですね。国際線の積み込み作業では、カートよりも大きなコンテナを使うこともありますよ。

--- 体力が求められるお仕事ですね。1日の流れもお聞かせください。

当社は早番・日勤・遅番の3交代シフト制で、時間帯にかかわらず流れは基本的に一緒です。出勤したら始業時にみんなで「CSS体操」という体を伸ばす運動をして、それから前日の業務の引き継ぎや今日のトピックスなどを確認し合うブリーフィングを行って、持ち場につきます。

担当するのは1日1便、日によって国内線を担当することもあれば、国際線を担当することもあります。自分の担当の作業が終わったら、状況に応じて他のチームや他部署の業務を手伝いに行きます。業務が立て込んでいると、遅番の場合は深夜に仕事が終わることもありますね。

--- 一番得意と感じているお仕事は何ですか?

限られたスペースに手荷物をきっちりと積み込むのは、結構得意ですね。いかに隙間なく、キレイに積み込められるかを研修時代からすごくこだわってきました。

カウンターでのお預かり時に付けられるタグで重いものは見分けやすいんですけれど、大きさを見極めるのは経験が必要だと感じています。同期には負けないぞ!という気持ちで目を鍛えてきたこともあって、今ではパッと見て「コレとコレはだいたい同じ大きさ」だとわかるようになりました。

(大きさを見極めて、テトリスのようにカートへ荷物を積み込んでいく)

--- 荷物を扱う際に、どんなことを心がけていますか?

当たり前ですけれど、お預かりした荷物を丁寧に扱うことですね。預けた荷物が壊れて戻ってきたら、誰だって嫌ですよね。そして、大切にお客様へお届けするためにこそ、きっちり積み入れないといけないんです。

例えば、国内線だと手荷物の重さも形状もすごくばらばらなんです。中には、お土産の入った紙袋などを手荷物として預けられる方もいて。当然、お土産の紙袋の上にスーツケースは置けません。だから、まずスーツケースをできるだけ高さに差が出ないように意識して積んで、一番上の段に軽い荷物を置いていきます。そうすれば飛行中に崩れて、お客さまの荷物がボロボロに傷ついてしまうなんてことは起こりにくくなります。

ベテランの先輩は、本当に一発で「これはここ」みたいに決めて積み入れていくんです。それがピタッとハマって、積み替えることもほとんどない。新人の頃は率直に「すごいなぁ」と思いました。先輩に早く追いつきたいと一生懸命やっていたら私もいつの間にかその域に達していましたね(笑)。

■新人サポートを通して、自分の成長も実感

--- これまで落ち込んだり反省したりすることもあったのでは?

それが、全然覚えていなくて(笑)。昔から過ぎたことは気にしない性格なんですよね。もちろん、気をつけないといけないことは覚えていますけれど、引きずることはないです。

ただ、やっぱり最初は体力的にはキツかったですね。仕事を覚えるには頭もフル回転しないといけなかったので、仕事が終わって寮に帰ったらすぐ寝ちゃうくらいでした。

--- 入社6年目を迎える中で、お仕事との向き合い方に変化などありますか?

本配属前の事前就労生に1人先輩が付く「世話役制度」というものがあって、今回初めて世話役を任されることになったんです。担当する子と一緒に仕事をしていると、危なっかしいと感じる場面も結構あって、そんなときに「昔は自分もこうだった」、「あのとき先輩にこうしてもらった」と思い出します。私も先輩に見守ってもらっていたなぁって。自分を振り返るきっかけにもなっていると思います。

時と場合によってアドバイスの仕方を変えたり、私が得意としている積み込み作業のコツなんかを伝えたり。世話役を通じて、今まで感覚的にやってきたことを言葉にして伝える経験も積めていますね。

■ひとりで抱え込まず、周りに助けを求めるのも大切なこと

--- お仕事で一番嬉しいことは何ですか?
やっぱり、「積み方がうまい」と言われると嬉しいですね。LM(ロードマスター:各便の責任者)に「これだけ入ると思わなかったよ」、「想定していたよりも多く入れてもらえて助かったよ」とか、そういう言葉をもらえた時は、「やった!」と内心思っています。

LMの想定に反して積み込みがうまくいかないと、搭載物を別の貨物室に割り振ったり、最悪の場合は荷物を飛行機に乗せられなかったりすることもあります。 それを防ぐためにも、きちんと積み込みしていかないといけません。LMから「袴田さんがいるなら今日は大丈夫」なんて思ってもらえていたら嬉しいですね。
--- 袴田さんにとってお仕事での一番のモチベーションはなんでしょうか?
何百もある手荷物が、何事もなく乗るべき飛行機に乗って、すべての荷物がきちんと乗った状態で飛び立っていくのを見ると、肩の力が抜けて気分がアガります。
その日の業務がきれいにきちんと終わるのが、次のモチベーションになるという感じですね。

--- グランドハンドリングのお仕事に必要なものは何だと思いますか?

一番求められるのはなんといっても体力です。でもそれと同じくらいコミュニケーション力も必要だと思います。

もちろん個人の努力も必要なんですけれど、現場では1人でできることには限りがあって、周りの手を借りないといけない場面もたくさんあります。でも考えていることや、助けてほしいことって、言葉にしないと周りには伝わりません。だから言葉にしてコミュニケーションするのって、本当に大切なんです。

業務では航空会社など他の企業の担当者の方とやりとりすることもあります。なのでやっぱり、コミュニケーション力は不可欠。改めて考えると、いろんな立場の人との連携が求められる仕事ですよね。

--- 裏を返せば、体力とコミュニケーション力があれば挑戦できるお仕事でもある?

そうですね。あと普通自動車免許を持っていれば、男女問わず挑戦できると思います。男性比率が高いので私も最初はやっていけるか不安でしたけれど、実際に働いてみるとそんなの全然関係ないなと思えました。実際に、私の部署では女性も3名一緒に働いています。

今私が世話役としてサポートしている事前就労生は、小柄で筋肉もあまりないタイプなので、正直なところ最初はやっていけるか心配していました。積み込みでは手荷物を自分の背丈より高く持ち上げることもあるので。
でも研修も4カ月くらい経つと、コツをつかんですごく動けるようになったんです。その子が褒められていると、私もなんだか誇らしい気持ちになります。自分が褒められるより嬉しいかも(笑)。

--- これからどんなことに挑戦したいと思っていますか?

今は牽引する車両しか乗れないので、今後は色々な車両を扱えるようになりたいですね。特に乗ってみたいのが、ハイリフトローダー。コンテナなどの貨物を飛行機に積むときに使う車両です。今の部署で扱うことはないんですけれど、やっぱりグランドハンドリングの仕事を知ったときに憧れた業務のひとつなので。手荷物の積み込み作業のスキルは、どの部署でも生かされると思っているので、これまでの経験を生かしてもっと成長していきたいです。

(2024年3月取材)

(文:伊藤成美、写真:村松宏章)

★今回のインタビュー記事はいかがでしたか?
空港でのお仕事には、他にも様々なものがあります。

職場のリアルを身近に感じられる特設サイト「だから、この仕事が好き」を公開!
SNSフォロワー約4万人の人気漫画家・うえはらけいた氏による「飛ばない空のお仕事マンガ」、全国340名の空港で働く職員を対象にしたアンケート調査をはじめ、コロナ禍の激動を乗り越えた現場の仲間たちが、今自身の仕事にどのような誇りを感じ、何にやりがいを見出しているのか、リアルな声をお届けします。

空港を支えるプロ裏方の情報が盛りだくさんのサイト「空港の裏方お仕事図鑑」では、他にもたくさんのインタビューを掲載しています。

ライター:伊藤 成美
名古屋市出身。医療系ポータルサイト運営企業への転職をきっかけに、医療従事者や行政首長などのインタビューおよびライティング業務を経験。2020年に独立し、インタビュー記事をはじめ、学会レポート記事やコラム執筆を手がける。得意ジャンルは医療、人材活用、まちづくり、伝統文化など。ライターとして活動する一方、生涯学習の講座企画・運営にも携わる。ライフワークは物事の「文脈」「つながり」をひもとくこと。
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村松 宏章(Hiroyuki Muramatsu)
大手出版社のスタジオでの経験を積み、そこで高度なテクニカルスキルとクリエイティブなアイデアを磨く。
その後、フリーカメラマンとして独立し、国内外の音楽アーティストの撮影から建築物を中心に様々な撮影を行う。

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