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本を出してわかったこと

何事もやってみるもんだね。

賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ とか、
お前がどこにもない素晴らしいアイディアだと思っているものは過去に誰かが捨てた選択肢だ とか言いますよね。
私はガチンコの愚者なので経験しないと学べません。先人が散々やってきたことをなぞって、ここに経験知を残します。どこかの賢者の糧になりますように。

ミスはする

見本誌見て、何回も読み返して、朱入れもしたのにな~~!!!ミスってたな~~!
発売後にいちど改修をしました……些末すぎて恥ずかしいので、どんなミスかはここでは伏せます。何人かの購入者の方には、修正前のものが届いています。嗚呼……。

専業のプロならきっとやらないでしょう。私も二度とやりません。

専業のプロ、すごい

ミスの有無はもちろん、仕上がりのクオリティという意味でも、従来型の商業刊行物を作成する人たちの仕事はやっぱり凄い。
当然のことながらコストとクオリティには相関関係があり、「それだけでメシを食っている専業のプロがいっぱいいる分業体制」は馬力が桁違いです。もっとあざとく言えば札束の量が違いすぎてケンカにもならねえわ。

めちゃくちゃ恥ずかしい

これは、正直予想外でした!!
ミスしたことではなくて、「自分の本を出した」という事実が、なんとも恥ずかしい!正確には祖父の本なのに!自分で書いたわけじゃないのに!
二次創作の同人誌では感じたことのない思いでした……ねえみんな恥ずかしくないの!?

出しただけじゃ意味がない

「積まれた本の山の高さが、国の文化水準だ」なんて言っておいてどの口がとも思いますが、「本は出すことに意義がある」と「でも出したからって何かになるわけではない」は矛盾なく成り立つものですね。
また、基本的には、売ってるだけで買ってくれる人はいません。営業だいし。ソーシャルツール上での発信力って本当に大切ですね。私にとって今後の大きな課題です。

組版、超だいじ!!

電子書籍よりも紙の書籍のほうが「内容が入る」感覚の正体がやっと分かりました。
字組みの美しさ、メチャクチャ大事!!!
文章は読みやすいが正義。読みやすく、伝わりやすく、分かりやすいが基本にして王道です。
しかし、文章だけが読みやすくても、フォントや字組みが雑になっては台無しです。神は細部に宿るんです。
WEBテキストではなく、電子書籍でもなく、紙の書籍を出すのであれば、紙でしか表現できないことは可能な限り詰めるべきです。
前回のコラムで、エディトリアルデザインにInDesignを激推ししたのはそういう理由から。

祖父の自伝オリジナル版が左。フォントと行間、余白を調整したものが右です。

手前味噌ですが、読みやすくない?

今回、自分で字組みをしてから京極夏彦作品を読んで、その計算し尽くされた組版の美しさに愕然としました。
あのフォントサイズで、あの文章量で、流れるように文章が読めて、文字の濁流に溺れる快感。あれは内容の濃さと緻密さ、それに「読み味を意識した字組」でできていたんだ……

まだまだ勉強するべきことがたくさんあるようです。次の出版で活かしたい。

売れ先が見えない

専業作家さんが手売りのイベントに参加する理由ってこれかな、と思ったこと。
以前、別のメディアでBL作家・こだか和麻先生のインタビューをさせていただいたとき、「WEBマンガの良さは、読者の反応がすぐ分かること」みたいな話をうかがいました。
なるほど、紙の出版物って、購入先は感想のお手紙やエゴサーチでしか分からないんですね。同人誌即売会のように、顔が見える相手に本を手渡す感覚よりも、ずっと遠い。
また、売れ行きを知りたくても販売実績データの更新にはタイムラグがあります。「いまの時点でどれくらい売れているのか」はまったくわかりません。
コメント欄からご購入のお知らせをくださった田中里尚さま、本当に飛び上がるほど嬉しかったです、ありがとうございます……!!

一次創作の同人誌ならすべて出版可能じゃん!!

文フリに出てる本、ぜんぶAmazonで売れるじゃん。
同人誌の通信販売プラットフォームは、どちらかといえば二次創作の流通がメインになっています。でも、一次創作ならすべてAmazonから出せちゃうし初期費用もかかりません。
もちろんオンデマンド印刷のフォーマットはある程度固定されてしまうので、装丁などの自由度は下がります。でも、もし「できればたくさんの人に手にとってもらいたい」という気持ちがあるなら、販路の大きなAmazonは有効な選択肢だと思いました。

っていうか文学フリマに出店するより簡単です、多分。

専業作家さん、すごい。

多くの専業作家さんが、ご自身でSNSで広報活動をしていることが、凄い。というか、SNSでの影響力って新規参入の絶対条件になっているんじゃないでしょうか……創作をしながらソーシャル活動もできるって、マジですごいよ……

オンデマンドのまずかったところ

一点だけ、予想していなかったデメリットがありました。瑕疵になるか否かは用途次第かな。
左から「見本誌」「1版め」「2版め」、バラバラに一冊ずつ印刷したものですが……見ての通り、かなり色味が違います。

そりゃそうだ!色校正できないもんね!!!
しかし、ここまで色味が変わると、写真集なんかはちょっと辛いかもしれません。淡い色、繊細な中間色を忠実に、美しく印刷したい人には不向きかも。
図録が再販されない理由、絵本や写真集が高額な理由の一つなんだろうな。

みんな、出版しようぜ!?

シミルボン参加者の方って本読むのも文章書くのも好きでしょ!?ならその文章、本にしようよ!
何なら手伝うよ!?(宣伝です)

そんで文フリも出よ!!!!

次回は、文学フリマ出店の経緯と出店までのアレコレ、お金の話とかマーケティングについてとか。
文化事業のマネタイズとか、ビジネス論みたいな話になっちゃうかも。


投稿日 2019.04.18
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です

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