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トラウマケアの方法論④ オンライン・内的家族システム療法について(トラウマ治療 沖縄県 臨床心理士)

こんにちは。
うるま心理相談室ココロンのとねがわです。

今日は、私がトラウマ治療で用いている、パーツワークについて、最近読んでいて良い本があったので、こちらから少し紹介します。

(書籍紹介のつもりで軽く書き始めた記事のため、パーツワークそのものの説明については多少端折った記事になってしまいました、ただご覧いただけばどんな療法なのかはわかると思います。ご了承ください)

「悪い私」はいない / リチャード・C・シュワルツ著 / 後藤ゆうこ他 訳

この本は、内的家族システム療法を開発したシュワルツ博士自身の著書であり、その翻訳本です。

翻訳者の後藤ゆうこ先生は、私もオンラインで内的家族システム療法の研修を受けた方でもあります。

内的家族システム療法については、これまでもいくつか本はありました。

出たばかりの頃はすぐに在庫切れになって、
入手が大変だったのを覚えています。
ちょっと読みづらい。
こちらは研修で存在を知り、
ライトな内容で私は今でも気に入っています。

それで今回の「悪い私はいない」のこちらの本なのですが。

個人的にこの本は、今後のIFSの決定版なんじゃないか?という気がしています。
その理由と、読み途中の感想を徒然と書いてみます。

この本のいいなと思った点は、

・内的家族システムの成立背景について、
 シュワルツさん自身がせきららに語っている点

・その後のIFSの発展から、博士自身が今どういう見解を抱いているのか、
 について伺える点

・エクササイズ集が巻末にまとまっている。

の3つです。
(ちなみにまだ前半しか読めていません)

ずっと気になってたネーミングの謎

実は前々から気になっていたのですが、
「内的家族システム療法」のネーミング。
一体なぜこの名前なのだろう?と素朴ながらずっと思っていました。

この本を読んでわかりました。

シュワルツさん、元々は普通に家族療法士でした。
しかもこの分野で博士号まで取られています。

そしてサルヴァドール・ミニューチンをリスペクトしている、と書かれている。

一般の方には馴染みのない話で「?」だと思いますが、
家族療法(という心理療法の一種)には、構造派という学派があり、ミニューチンは、その構造派家族療法を代表する天才的と評されるセラピストの一人なのです。

しっかりした系統の中で臨床をされていたセラピストの方なのだな、と知り、私は俄然この人に興味を持ちました。

患者から学ぶ

本書によると、ある意味、シュワルツさんの内的家族システム療法は、100%臨床実践の中から生まれた、「クライエントから学んだ」ものといえるようなのです。

印象的なケースがいくつか紹介されています。
1つは、過食症で来談したクライエントとの話です。

私は過食症の患者を対象に家族療法の効果を調べる研究調査を行いました。
その結果、家族の関係がよくなったにもかかわらず、彼らの過食嘔吐が治まらなかったことを発見しショックを受けました。

その理由をクライアントに尋ねたところ、彼らは自分の中のさまざまなパーツについて語りはじめたのです。まるで、そのパーツたちが自主性を持っているかのように、または、そのパーツに乗っ取られてやりたくないことをやらされているかのように、彼らはパーツについて話したのです。

最初は、多重人格障害(*訳注:今でいう解離性同一性障害)が発症したのかと怖くなりました。しかし、私自身も自分の内面に耳を傾けてみると、自分にもパーツがあることに気がつき、衝撃を受けました。
実際、私の中には、かなり極端なパーツもありました。

p.34

私は興味を持ちはじめました。そしてクライアントにパーツの説明をしてくれるよう頼んでみると、非常に細かく説明してくれました。

それだけでなく、パーツ同士がどのように作用しあい、どのような関係を持っているのかも教えてくれました。あるパーツは互いに争い、あるパーツは同盟を組み、あるパーツは他のパーツを守っていたのです。

やがて私は、自分が今までセラピーで扱ってきた「外的」な家族関係と親和性のある、ある種の「内的」なシステムについて学んでいることに気づきました。そこで私はこれを「インターナル・ファミリーシステム(内的家族システム)」と名付けたのです。

p.34

したがって、文字通りの意味で、彼の実践は
「外的家族システム療法」
   ↓↓↓
「内的家族システム療法」

に移行したのだと。
だから「内的」なのか!と、これはなかなか衝撃でした。

もしかしたら家族療法的なエッセンスで、IFSを眺め直すことができれば、より深い理解が可能なのかもしれません。

パーツには意味がある

最初はシュワルツ博士も、難しいパーツに対しては締め出したり、やめさせるようなやり方でクライエントにパーツと関わらせていたそうです。説得やあるいは議論をさせて。

もう一つ印象的なケースがあります。自傷行為にまつわるパーツです。

また別のクライアントは、自分の手首を切るパーツを抱えていましたが、私にはそれは耐え難いものでした。
あるセッションで、クライアントと私は、そのパーツがもう手首を切らないことに同意するまで、数時間かけてそのパーツを説得しました。私は疲れを感じながらも、戦いに勝ったという満足感でそのセッションを終えました。

p.36

しかし…

しかし次のセッションの日、ドアを開けると、なんとそのクライアントは顔に大きな切り傷を負っていました。それを見た私は、愕然とし、崩れ落ち、とっさにこう口にしたのです。

「もう降参だ、君には勝てないよ」。

すると、それを聞いたパーツは態度を変えて、こう言いました。
「私だって、本当はあなたを負かしたいわけじゃないわ」。

それを聞いたとき、私の中に変化が起きました。パーツに対する支配的な関わりから、より好奇心に満ちた関わりに変わったのです。そして、こう尋ねました。

「なぜ君は彼女にこんなことをするんだ?」この瞬間が、IFSの歴史における大きな転機となりました。

するとそのパーツは、クライアントが過去に虐待を受けていた頃に、苦痛な感情や感覚を感じないために、いかに彼女(の意識)を身体の外に追いやる必要があったか、そしてさらなる虐待につながらないように怒りをコントロールする必要があったかを語りはじめました。
それを聞いて、私の中で、自然に感謝の気持ちが湧き起こり、そのパーツが彼女の人生で果たしてきた英雄的な役割について感謝を伝えました。

そのパーツは涙を流しました。今まで、みんなそのパーツを悪者扱いし、排除しようとしてきたからです。そのパーツは、このとき初めて、その物語を語る機会を持つことができたのです。

p.36  太字はとねがわによる

最後の部分はパーツワークをしていると、本当に分かりみしかない、
今となってはパーツワークの常識となった視点なのですが、
これを一人で発見し、起きている事実を起きているままに受け入れた瞬間のシュワルツ博士の心境はいかほどのものだったろうか。

やはり良いセラピストはクライエントから学ぶ、という言葉が脳裏によぎるとともに、この本のことも頭をよぎっていました。

出たばかりの本なので、引用ばかりしすぎてもちょっとアレなので、ここまでにしようと思うのですが、思ったより本記事はIFSの紹介としても適した記事になった気もします。

内的家族システム療法は、元のシュワルツ博士自身が家族療法をやってきた人なだけに、そのアプローチをさらにエッジを効かせて、臨床に則したものに深化させたものに私には見えます。

今や、複雑性PTSDのクライエントにEMDRを行う際、私はパーツワークなしでは考えられません。
そして私自身も、自分の中のパーツを大切にしています。

パーツワークの適用範囲

パーツワークの適用は以下にも及びます。
・自傷行為
・摂食障害
・嗜癖、依存症(アルコール、ゲーム、ギャンブル、性、薬物、など)
・解離症
・心身症
・抜毛症
・強迫
・アンガーコントロール(怒りの制御)
・自責が止められない
・過覚醒になって頑張りすぎる癖
・その他感情コントロールの問題

(というより一般の人にも広く適用可能)

どれも薬物治療では効果が得られづらい(主に衝動制御の障害なので、精神症状とは微妙に異なる)上に、家族療法的な視点が必要な症状群です。

強いていうなら自傷行為への対応において、パーツの理解はとりわけ重要な要素を持ちます。

私のオンラインセラピーでも、実際にはパーツワークから入ることが多く、
感情調整が整理されるだけで、本当に自分を責めることが減ったり・止まったりしますし、EMDRが不要になったケースもあります。

内なるパーツと繋がることは、本当にパワフルな影響をもたらしますし、
何よりその人の人生と、過去を(未来を)、豊かにしてくれます。

私はかなりリスペクトしている治療法です。

(外的な家族療法を同時並行する時もあります。)

以上、書籍の紹介のつもりでしたが、図らずも内的家族システム療法のコンセプトを紹介する記事になりました。

幾分かイメージが伝わっていれば幸いです。

1人でも多くの方が、トラウマケアにつながっていけることを祈っています。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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