トラウマケアの方法論⑤ IFSと防衛パーツ
今回は、カウンセリングの方法論、
とりわけ「パーツワーク」と呼ばれるもののひとつである
内的家族システム療法(IFS)
のつづきについて書きます。
今回は基本コンセプトである、
・防衛パーツと
・追放者パーツ(傷ついたパーツ)
の分類について書きます。
IFSの概要については
こちらの記事もご参照ください。
今回の内容はいろんな本にも書かれているので、
すでに知っている人は
読み流してもらっても構いません。
パーツという考え方について
内的家族システム療法では、
という発想があります。
・頑張り屋さん
・のんびりさん
・なにもしないで休んでいたいさん
・怖がりさん
・イライラさん
・パリピさん
・恥ずかしがりさん
…など、いろんな種類の自分がいます。
これらを「パーツ」と呼びます。
パーツ同士はうまく協力し合っていることもあれば、
他のパーツを支配したり、追いやったりしていることもあります。
そうしたパーツ同士の関係性が、
いわば個人の内的なシステムの特徴をつくっています。
パーツ同士のチームワークがしっかりしていれば…
・毎日の出来事に柔軟に対応できるし、
・意思決定に迷わない
・普段パーツについて意識する必要もない
・こころのシステム全体の安定
パーツ同士のチームワークがうまく取れていないとき…
・一部のパーツが出ずっぱりになる
・不安や悲しみ、怒りなど感情に圧倒されることが増える
・環境への対処に消耗する、迷う
・こころのシステム全体の不安定さ
などのように現れます。
このような不安定な状態のシステムを再調整して、
新しく適応的なチームワークをつくっていこう、という
考え方とアプローチが、
「内的家族システム療法」です。
主なパーツの3種類
IFSでは、多くのケースの臨床例の蓄積から
パーツの分類を3種類に分けています。
パーツとセルフはひとつの家の中に住む「家族」
まず大元にはすべてのパーツを見守る「セルフ」がいます。
そのセルフのもとに、いろんなパーツがいて、
大きなひとつの家の中に、みんな一緒に住んでいます。
それぞれのパーツには役割があって、
そこに良い悪いはなく、
必要でないパーツは1人もいません。
セルフについては次回まとめますので、
今回は家の中の住人である、防衛パーツたちを中心に説明しましょう。
1、「管理者パーツ」(中央)
メインとなる防衛パーツのひとつ。
不安、悲しみ、など苦痛な感情が出てこないように、
普段からフタをしたり、
触れないようにするために気を遣っており、
こころのバランスを保とうとしているパーツのこと。
困ったことが起きないように、
周りをよくみて判断したり、日常のタスクをこなしたり、
身を守るためにうまく立ち回ってくれています。
管理者パーツのあらわれとしては、たとえば
・完璧主義さん
・責任感つよいさん
・疑り深いさん
・八方美人さん
・先読み先回りさん
・危機察知さん
・気遣いさん
・世話焼きさん
・潔癖さん
・辛口批判さん
…etc
などがいます。
彼らは、日々、自分を守るために奮闘してくれていて、
その役割は「かつて」「いつかあのとき」の
しんどい場面を乗り越えた経験の名残り、であるとも考えられています。
そのとき役立った対処を、
今も大事に続けてくれているのかもしれませんね。
2、「消防士パーツ」(右側)
防衛パーツのひとつ。
苦痛な感情が生じたときに、それを上回る刺激を自分に与えて、
「火消しの役割」をするパーツです。
具体的には、
・やけ食いさん
・やけ酒さん
・スマホ触って現実逃避したいさん
・急に眠くなるさん
・ボーッとするさん
などは消防士パーツの担当しているものです。
この役割は行きすぎたときに
・アルコール依存、
・過食・拒食(嘔吐)、
・恋愛依存
・仕事依存
・自傷行為
・薬物
・抜毛
・盗みなど一部の非行、
などとしても現れることがあります。
消防士パーツさんの目的は、
などを目的とします。
ここで大事なのは、
これらはそのパーツにとっては前向きな意味を持った行動である点、です。
弱さのためではありません。
やり方がときに極端なだけで、生体としての防衛手段のひとつです。
ともすればやっかいな存在として誤解されやすいパーツなだけに、
「生き延びるために必要でとっている行動」
と周りも理解と共感をもって声かけしていくことが大切です。
3、「追放者パーツ」(左側)
追放者パーツは、防衛パーツではなく
トラウマの記憶断片や痛みを抱えている、傷ついた幼いパーツのことです。
昔の言葉では
・インナーチャイルド
・アダルトチルドレン、
とも呼ばれてきました。
しんどくて余裕がないときなどに、
みなさんの中に急に湧いてくる
「涙、悲しさ、怒り、おそれ、虚しさ」などは
このインナーチャイルドの気持ちが蘇ってきているものかもしれません。
追放されている、という表現の通り、
他のパーツの意思で遠ざけられていたり、
いなかったことにされていたりします。
それはなぜかというと、
このパーツの気持ちに触れることは、
他のパーツたちにとって動揺を与えるものであることがあるからです。
なので、普段は封印されています。
追放パーツへの取り組みは、特に専門性が必要とされるところなので、
1人ではやらないようにしてください。
(なので、ここではあまり詳しくは述べません。)
4、覚えておいてほしいこと
さて、防衛パーツについて書いてきましたが
ここで一番覚えておいてほしいことは、
冒頭にも書いた通り
「必要でないパーツは1人もいない」
こと。
もっと言えば
「悪い私はいない」
ということです。
みんな大切な自分の一部です。
癖のつよいパーツも人によってはいるかもしれませんが、
必ず何かしらの、いる必要があってそこに存在しています。
それはなぜなんだろう?と
「?」を自分の中で温めておくのもいいかもしれません。
また、もうひとつ大事なのは、
「どのパーツも、基本的には
自分の心配や不安ごとをセルフに聞いてもらいたがっている」
ということです。
どんな人にとっても、孤独はつらいものです。
パーツたちにとってもそれは同じで、
「自分の精一杯果たしている役割を知ってほしい」
「自分がなぜここにいるのかを理解してほしい」
と願っています。
何かに対して、パーツなりに必死なのです。
それについて
「どうしたんだろう?」「なぜなんなんだろう?」
と関心を向けたり、知ろうとする
私たち自身のセルフの力がとても大切です。
そこについては次回また説明しますね。
以上、今回は
ということについて解説しました。
今回は、ここまでにします。
次回はセルフ、について。
参考文献
ココロンでは、IFSを用いたパーツワーク・カウンセリング治療を、
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