【連載】家族会議『弁護人の面目丸つぶれ』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議28回目#1|弁護人の面目丸つぶれ
前日の家族会議は、母が姉への手紙をシェアする形で始まった。
母は、自分の育児が精神的虐待にあたると気づき、その苦しみを手紙にまとめて姉に伝えたのだった。その頃、母は姉とのコミュニケーションに行き詰まっていたから、まずは過去の出来事にあらゆる側面から向き合って、事の重大さを把握する必要があるよね、と話してきた。
この母とのやり取りを黙って聞いていた父が、「わが家には気持ちのコミュニケーションが一番足りてない。過去のことをひとつひとつ精査するのは大変だから、気持ちのコミュニケーションをしたほうがいい」と発言したことで、紛糾したのが前回の家族会議だった。
確かに、わが家は気持ちのコミュニケーションが足りない。しかしその一番の原因は父である。
発言が矛盾する父に、母と娘(わたし)はフラストレーションを感じつつ、父の考え方に寄り添おうと試みるが、議論は平行線をたどった。
家族会議を一時中断するべきか、あるいは続けるべきかという議論になったが結論には至らず、最終的には「現状維持」で進めることに落ち着いた。
はずだった‥‥。
しかし、次の日の家族会議は母とふたりで話している。
その経緯が定かではないが、結局のところ「一旦休む」ことを父が認めたのだろう。
前日の家族会議では、「一旦休もうか?」というわたしの提案をことごとく拒否し、虚勢を張って平気なふりをし続けていたのが父だった。それが一旦休むという展開になったのは、父が姉に助けを求めたのがキッカケだったようだ。
それはわたしが、最も「してほしくないこと」だった。
わたし:
家族の問題のこととかはひとまず、お姉ちゃんのほうに持っていくのは、今じゃないかなっていう感じ。はある。だからここでいろいろ
母:
よく
わたし:
うん。よく話し合って、お姉ちゃんがそういう話ができるようになったらしていくっていう感じがいいんじゃないかなって思う。
――この時の姉は、仕事の悩みで正念場を迎えいていた。
わたし:
だから今回のことも‥‥、お姉ちゃんに、わたしも話したしお父さんも話したみたいだけど、本当はあんまりそうしたくなかったっていうか
母:
(家族会議を)休むっていうことをね。
わたし:
‥‥まあ、そうだね。
お姉ちゃんに相談するっていうのは、ちょっと違うよなとは思ったっていうか。
母:
お母さん余計なこと言った?
わたし:
いや、あー昨日?
母:
うん。
わたし:
「泉があてられちゃってるみたい」って聞いたけどって
母:
そういうことを言って、お姉ちゃんが「そうかあ」ってため息ついて、「泉に電話してみる」って言ったのね
わたし:
うん。
母:
だから‥‥とは言ったけど‥‥そっか‥‥。
――母としては、前日のわたしの様子を心配し、姉に相談したのだろう。
わたし:
まあそれがなくても、お姉ちゃんと電話したときに言ったかなとは思うけど。まあ、ね、お父さんも電話したみたいだったから。なんか結局、そうやってお姉ちゃんの気持ち考えてないっていうかさ。
お姉ちゃん、そもそも「(お父さんとお母さんの)顔も見たくない」って言ってんだから。笑
っていうのは思ったけど。まあでも、お父さんも電話する人っていったらお姉ちゃんぐらいしかいないんだろうなとも思ったっていうか。しょうがないかなって。
まあお姉ちゃんも、「今日はとりあえず聞く余裕が、ちょっとあったから聞けたけど、無理なときは無理しないようにするから」っては言ってた。
母:
そっか‥‥。一生懸命フォローしてくれてました。お父さんを。
わたし:
うん。そう。「励ましておいたよ」ってLINEが来て。笑
そうなるだろうなとは何となく思ってたけどって、言ったけど。
でもその励ます気持ちっていうのもさ、どんな気持ちかっていうのは、考えないとねっていうところ。
母:
だから、その電話終わったあとお父さんに言ったんだけど。
今は、お父さんきついなって思って、それに対してお姉ちゃんはフォローもしてくれるけど、昔お父さんは何もフォローせずに八つ当たりしてたわけだから‥‥。しかも、今はお父さんは大人だし、昔は何の責任もない子供に対してやってたわけでしょ。だからその辺を考えてみてとは言ったんだけど。
わたし:
うん。まあ、そんな感じ。
お姉ちゃんも、家族会議のことは気にはしてるからいつも。「今日やったの?」とか、「どんな話だったの?」とかよく聞かれるから、わたしも言うは言うと思うけど。
なんか、お姉ちゃんに励ましてもらうみたいなのは‥‥、しょうがないけど、それってどういうことなのかっていうのは、わかってないとねっていう、ところだよねって。
今いっぱいいっぱいだって、言ってるわけだし。っていうのは思ったけど。とりあえずお父さんもきついだろうからしょうがないかな‥‥。まあそんなとこ
母:
繰り返せば昔の子供たちの気持ちなわけでもあるよね‥‥。
――この辺からだろうか。
わたしが父に、完全にしらけた気持ちになったのは。
― 今日はここまで ―
父がしたことは、加害者が被害者の弁護人に追いつめられ、被害者に愚痴を聞いてもらい慰めてもらったのと同じだ。
自分が加害した件について直接謝罪や弁解をしたい。
というならまだわかる。
そうではなく、被害者の弁護人に「こんなに責められた」と、被害者に泣きつき、さらに慰めてもらうという‥‥おかしな状況になっていた。
弁護人のわたしとしては、一番避けたかったことだった。
それに、わたしの立場もない。
まるで「お前じゃ話になんないから、被害者と直接話すから」と言われているようだ。
弁護人としての面目丸つぶれ。
わたしにそれだけの力量がなかったということでもあるけど、わたしは姉の弁護人である前に、父の娘でもある。
こうも見事にスルーされて、腹が立たないわけがない。
こうやって父は、家族の訴えを完全に「無視」するけど、「無視しているつもりはない」と言うから噛み合わない。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!