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【連載】家族会議『記憶にございません』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議6日目#5|記憶にございません
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
――自慢話をして満足した父は、「悪いところを言って欲しい」と歩み寄りの姿勢を見せた。
父:
あのね。これ言ってほしいんだ。今日で言えねならいつでもいいんだけど。「お父さんのこういうところが上から目線だよ」っていうところを言ってほしいのよ。あまりわかってないんだ。
母:
なんか、私思ったんだけど、ずっとお父さんに対して、不満とかモヤモヤが溜まってたのは、ずーっと今までのいろいろ嫌だなと思うことは、上から目線だったのかなってちょっと思ってる。そう思ってなかったから前。
とにかく一番最初は、「私が働いてないからこんなこと言われんだ」みたいな感じだったな。だから私も働いてればよかったのかなと思ったけど、上から目線のせいだったのかなって。
ひとつ言って欲しいって言ってたけど、とにかく結構、それがずっと続いてたっていうことかな。
わたし:
そうだと思うよ。
父:
そういう、漠然としたやつだとさっぱりわかんないのよ。
母:
なんか、ひとつ思い出したのは・・・言っていい?
結婚してどれくらいだったときかな、数年か。おばあちゃんが1年に2回ぐらい来てたでしょ?うちに。
父:
うちのお袋?
母:
うん。そのときにお父さんがね、おばあちゃんに向かって、「みえこ(母の名)が作るきんぴらごぼうって色が白いんだ」って言ってたのね。「ダメなんだみえこは。みえこの作るきんぴらごぼうはダメなんだよ、おばあちゃん」って言ってたときがあって。ああいうのも思い出すと、「私を何だと思ってるんだよ」って感じ。
わたし:
それ、上から目線もちょっと入ってると思うけど、上から目線っていうよりはデリカシーがないってことだよね。
母:
そっか・・・。なんか、おばあちゃんの作るきんぴらごぼうが正しいっていうか、一番なんだって、まずは思ってる。そのときになんか、なんだろう「料理人と結婚したつもりなのかしら?」とかさ、あとになって思った。あれ思い出すと「お父さんってだれと結婚したつもり?料理人と結婚したつもりなの?」「家事がちゃんとできて当たり前と思ってるの?」とか。
父:
全っ然記憶にない。
――自ら具体例を言って欲しいという割に、エピソードを話すと「全然記憶にない」と返すのが父の常套句。
覚えていないことは謝罪の必要もない。と言わんばかりだ。
それこそが誠意が感じられない態度だというのに…。
母:
おばあちゃんが来たときそんなことを言うのもさ、そこがデリカシーがないっちゃないよね。
父:
今、そういうことは全く言わないと思うよ。だからその頃もわかんなくて、今自分はそうじゃないと思ってるから、何かわかんねんださっぱり。どこが上から目線なのか。
――「今そういうことは全く言わないと思う」と言う父は、おそらく自分の発言が「まずかった」と認識しているのだろう。謝ればいいものを、自分の罪を認めることはしない。
そんなことを言う自分をまるごと消し去ってしまうから、結局のところ「なにがなんだかさっぱりわからない」のだ。
わたし:
なんか、お父さんはおばあちゃんを持ち上げたかったのかなって感じ。今の話聞くと。「おばあちゃんはすごいけど、みえこは全然ぺーぺーだよ」みたいな。
母:
あとになっていろいろ「料理人と結婚したわけじゃないのに」とか出てきたけどね。ずっと後からね。やっぱり結婚した奥さんは自分の配下みたいな感じだったのかな、とか。
今思うと、お父さんがその当時から対等とか尊重するとかそんなんじゃなくて、自分の家族が自分のものって感じかな。
わたし:
家政婦みたいになっちゃうみたいなね。
母:
自分も、自分の悪かったところも確かにあるよ。そういうときに何も言えないとか、だから「お金稼いでないから悪いんだ」っていうほうに行っちゃった。だからただ沸々と、悔しい思いをして溜め込んだみたいな。
わたし:
気を遣えない。デリカシーのないことを言っちゃう。っていうこと自体が上から目線の気持ちがベースにあるってことなんだよね。
父:
うーん・・・。
――父にとって人間関係は、強者か弱者かしかない。弱者であるときは弱者であることを自ら受け入れ、強者であれば強者らしく振舞う。
人は平等であるという価値観がないから、上から目線という考え自体が存在しない。
わたし:
あと今、「全然覚えてない」って言ったじゃん?
父:
覚えてないもの。
わたし:
それね、確かだと思うんだけど「ぜんっぜん覚えてない」「全然記憶にない」って言われると、それでさらに傷ついてるっていうことは知った方がいいと思う。
父:
あ。そうですか。
わたし:
お父さんは覚えてないけど言ってて、こっちはずっと、こうやって残ってるわけだよね?覚えてて。お姉ちゃんもそうだけど。
お姉ちゃんもやっぱ、「覚えてない」って言われること多いんだよね。お父さんに。
母:
うん。
わたし:
お父さんの発言に傷ついたからずっと心に残ってるわけだけど、「覚えてない」って。
父:
なるほど~?
わたし:
そう言われると傷つくわけ。余計に。
記憶にないのはしょうがないんだけど、もう、「ごめん」なんだよね、それって。覚えてないからいいっていうことじゃなくって、「覚えてなくてごめん」っていう気持ちを持てない時点で、まあ上から目線かもねって感じかな。
父:
いや、泉にはまいったな。
わたし:
だって傷ついてるんだもん。お父さんが何も考えずに発した一言で傷ついてる人がいるわけで。
父:
おっしゃる通りです。
わたし:
お姉ちゃんもそうというか。忘れちゃうっていうのも仕方ないけど、忘れちゃったことを、何で忘れちゃったのかを考えてほしいっていうか。
父:
「ごめん悪いけど、忘れちゃった」っていう感じか?
わたし:
そうだね。言葉だけじゃあれだけど、意識的には、そういう意識がないと余計傷つける。
お父さんには何の気もなくて、もう忘れちゃうほどどうでもいい言葉に「なんでずっと傷ついてきたんだろう?」って思っちゃうんだよね。
多分お父さんもそうだと思う。お父さんが逆の立場だったら、おそらく、お父さんが根に持ってることをお母さんがもう覚えてないって言ったら、何とも言えない気持ちになると思うんだよね。「あんなひどいこと言っといて覚えてないの?」みたいな。おそらくそれ、納得できないと思う。「覚えてないならいいや」ってなるわけがないっていうか。
母:
覚えてないからってなかったことではないしね。
父:
わかりました。ほんで、だからといってやめないでパート2パート3を言ってください。
母:
わかりました。
わたし:
そういう場だからね。
――「だからといってやめないで」という父は、理解しようと努力している姿勢を見せることで納得してもらおうとする節がある。
わたしたちは「わかってもらう」ことが最終的な目的なのに、父は姿勢を見せることが最終目的だから噛み合わない。むしろ期待させられるだけ、ガッカリ感も倍になる。
- 今日はここまで -
今読んでみたい本がある。『山の上の家事学校』という本だ。読売新聞の書評を読んで興味を持った。
仕事さえしていれば家事に無関心でも許されると思い込んでいる夫が、いかに了見が狭く、妻のことを理解していないかを見事なまでに描写しきっている。
わが家の父のことだと思った。了見が狭い。
それどころかナメている。妻や子供を。
だから「覚えてないなぁ」と平然と言えるのだ。
悲しみや痛みを訴えている人に向かって「記憶にございません」は禁句である。さらに傷つけたいなら効果てきめんだけど。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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