【連載】家族会議『誘導尋問』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議8日目#4|誘導尋問
――母に子供のころの思い出や、そのとき感じていた気持ちを聞いてきたところで、突然父がインタビュアーを始めた。
それがなんとも、誘導尋問のようである。
父:
おばあちゃんからの温かい、なんて言うの、いい思い出っていうのかな、あとどんなものがありましたか。
母:
あった気はするんだけど、
わたし:
抱きしめてもらえるようなこともあったのかな?
母:
あった、あった、、あった、、かな?
わたし:
あんまり思い浮かぶシーンはないんだね。
父:
それは後からでいいとして、おじいちゃんから嫌なイメージを、持たれるようなことはありましたか。
母:
おじいちゃんから?おじいちゃんに対して私が?
父:
うん、やって欲しくない、これやだなって
母:
嫌だなっていうのは、この間も言ったけど、友達に意地悪されて、それをおじいさん(父親)に勢い込んで言い始めたら、「人の悪口は言うんじゃない」って言われたのが、小学校、低学年の頃だと思うんだけど。もう場所も覚えてるよ。道路でなんだけど。
わたし:
うん
母:
なんでおじいちゃんと2人で歩いてたんだろう。なんか授業参観とか?わかんないけど道路で歩いてて、田んぼのところで。それまでも何か一緒に話しながらいたと思うんだけど、その話を始めた途端それを言われてやめたっていうのが、なんかずっと覚えてるな。っていうのがおじいちゃんにされて嫌だったこと。
父:
あとはあまりまだ
母:
すぐには出てこないな
父:
ということは、母親に対してのイメージは、嫌なことが結構出てくるんだ。
母:
そうだよね。
父:
おじいちゃんにはあんまりない。逆におじいちゃんからいいイメージは、ちょこちょこ出てくるんだけど、おばあちゃんからあまりない。この差って何だろう。
母:
なんだろう?なんだと思う?
――父の着地点は決まっている。父は「会話すると軋轢が生まれる」と思っていて、基本的に業務連絡以外の会話をしたくない。家族会議で本音を話そうなんて、父にとっては軋轢しか生まれない場なのである。
だから父は、母の子供のころの親との関係も、それに当てはまっているだろう?ほらみろ。と誘導したいのだ。
父:
なんだって思うと、勝手な想像なんだけど関わりじゃない?
母:
おばあちゃんとずっと一緒にいる。おじいちゃんとあまりいない?
父:
いるかいないかっていうよりも、
母:
接触する時間みたいなこと?
父:
口出しの接触する時間、
母:
うん、そうだね、おじいちゃんからはそんなに、、、おじいちゃんってそういえば注意するとき、優しく注意してくれて。
わたし:
すごいねおじいちゃん。
母:
なんか遠慮がち。そんな感じで、あまり注意されたことはない。
父:
おばあちゃんはストレート
母:
お母ちゃんはストレートというか、自分のイライラを乗っけてくるっていう感じ。
わたし:
結構怒る感じ?
母:
怒るというよりは、愚痴るみたいな感じかな。
わたし:
ぐちぐちブツブツ言うみたいな。
母:
そういう感じかな。で、人と比べるっていうのは、よくおばあちゃんがやってたと思うんだけど、おじいちゃんはそういうの、「あんまりよくない」ってことは言ってた。
父:
で、なんで俺こういう質問したかというと、
母:
なんでそれを先に言ってよ。答えさせてからじゃなく。
――祖父はあまりものを言わず、祖母はぐちぐち口数が多い。口数が多いほど、つまり会話が多いほど、その相手とは軋轢が生まれているだろう?だから余計な会話はしないほうがいい。余計なことは言わないほうがいい。父はその持論を展開したかった。
だけど母に「それを先に言ってよ」と、不快感をあらわにされたことで言及を避けた。
父:
いや、ヒントいっぱいいただいたんですよ。おじいちゃんの文句言うにしても、何するにしても、自分の意見はこうだっていうのを、ストレートに言わずに柔らかく言うと。いうのがいいやねぇ、それね。
――父が質問した目的は、ヒントをいただくためではない。証拠集めをするためだ。それをヒントなどと美化するから、話がややこしくなる。
- 今日はここまで -
父は会話の主導権を握っていたい。そして自分の思い通りに誘導したい。
ひと昔前までは、思い通りにならなければ怒鳴って威圧すれば、妻も子供も思い通りになった。けど、わたしたちは知識を得た。一筋縄ではいかなくなったのだ。
だから論破テクニックを使おうとする。けどそれには、膨大な知識と確固たる自信が必要である。浅はかな論破テクでは、すぐに揚げ足をとられる。口を開けば開くほど、墓穴を掘るのが父なのだ。
確かにそんな会話では、軋轢しか生まれないだろう。わたしたちは、父の本音を聞きたいだけ。共鳴したいだけなのに。
<次回に続く>
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