
【連載】家族会議『妻の実家を馬鹿にする夫』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし(泉):性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
前回の記事はこちら。
家族会議34回目#5|妻の実家を馬鹿にする夫
この日は、母とふたりで家族会議をしている。
わたし:
このあとは違うエピソードの話する?それとも手紙?今日木曜日でしょ
――母は、面と向かうと父の論点ずらしに巻き込まれるから、手紙を書くことにした。
母:
次の家族会議は日曜日だよね。金、土と‥‥。2日でできないかもしれないんだけども。うーん、他の話‥‥。
わたし:
まあ、無理に2日で書かなくていいと思う。
母:
うん。書けないと思う。検証とか。
わたし:
じゃあ、他の話する? 気になってること。お椀の話とか。
――「お椀の話」とは、お味噌汁にお椀を使うか茶碗を使うかの話だ。
母の実家は茶碗派。
父の実家はお椀派。
味噌汁が茶碗になるかもしれないと思った父は、「うちは味噌汁はお椀にしたい」と母に言った。
…なんてことないエピソードにも思えるが、こうした些細な習慣の違いでよく言い合いをしていたらしい。
わたし:
お椀の話もさ、お母さんは「別にそれほど嫌って思ったわけではない」みたいな感じで話してたけど
母:
そうだね。前ね。
わたし:
だけど何度も言われると、やっぱり嫌だなって思ったってことだよね。
――母は当時、父から「うちは味噌汁はお椀にしたい」と言われて、「(どっちでも)いいよ」という気持ちだったと言う。
実際、正解も間違いもないし、ふたりの好きなようにすればいい。
だけど、ここにふたりの気持ちのズレがある。
母は味噌汁の器にこだわりがなかった一方、父は「味噌汁の器が茶碗というのは変だ」と思っていたのである。
つまり、「うちは味噌汁はお椀にしたい」という言葉には、味噌汁に茶碗を使っていた母の実家を馬鹿にするニュアンスが含まれていたのだ。
母:
うん、当時はとくになんとも思わなかった。けど、最近その話をしてるときにお父さんが、「本当にびっくりした」って言ってるから、「まだ言うの?」みたいな。あれから何十年経ってるけどまだ? そのびっくりは、お父さんにとって、未だにびっくりなの?みたいな。
――結婚当初、自分の実家の習慣を馬鹿にされるなんて思ってもみなかった母は、父の言葉に潜む悪意には気づかなかった。まあ、気づかないほうが幸せでもある。
だけど、その話をいまだに「(味噌汁に茶碗を使うなんて)びっくりした」と言われれば、いい加減、腹も立ってくる。味噌汁にお椀を使うのがそんなに偉いの?と。当時は気づかなかった悪意(見下し)にも、気づいてしまうというものだ。
わたし:
お父さんって、価値観が全然変わってないってことでもあるよね。
なんか、結婚して人んちの家庭に入り込んで、「他の家ってこうなんだ」とか、「こういう家もあるんだ」みたいに、びっくりすることってあるとは思う。だけど、「うちはこうだよ」って「違うんだね」で済む話。
それに、そういう違いを知るうちに、「人の家と自分が育ってきた環境って違うもんなんだな」って、受け入れていくものだと思うんだけど、お父さんはそうじゃなかったってことだよね。未だにびっくりしてるってことは。
母:
そう。「本当にびっくりした」って‥‥なんでそんなにびっくりするんだ? みたいな感じ。私からすると。
未だにびっくり‥‥。あのびっくりの言い方を聞いてて、あんまりいい感じしないなって思うね。
わたし:
なんかもうお父さんの価値観とか、世間一般の「世間」のベースがすべて、「自分の育った環境」なのかなって、印象を受けるよね。
母:
だってさ、岩手の田舎で一生暮らしてきた人じゃないじゃん。転勤でいろんなとこ行ってるわけでしょ?
わたし:
そうだね。視野は広まるはずだよね。だけど、広められなかった? そんだけいろいろ行きながらも。
母:
あと、今ちょっと思ったけど、私にだからかな? 私にだから、そう言いたくなるのかなって。ちょっと今、思った。
わたし:
あー。
母:
いろいろ、普段から腹立つ私だから
わたし:
腹いせ?
母:
うん。私もよくやるけど。それもあんのかなって。
わたし:
昨日、これまでの家族会議の録音聞いてて、そこでも腹いせの話が出てきてた。
お父さんが小さいころ、父親から受けてきたものの腹いせを、子供に対してとか、妻に対してやったってことでもあるよねって。そんな話もしてたんだけど。
母:
うん。
わたし:
その辺でも、とんちんかんなことをお父さんが言ってて、録音を聞きなおせば聞き直すほどドン引きする感じだったけど。笑
まあでも、そのお椀の話とかもさ、話してみると、「私だからそうなのかな」とかいろいろな視点が出てくるわけだから、そのエピソードをお父さんと話すか話さないかは別にして、ちょっとそれを検証するとか。
母:
検証ね。2人でね。
わたし:
うん。
お椀の話はまあ、そうだね、わたしがお父さんのあの感じを聞いてて思うのは、あれは、当時びっくりした
母:
ことを再現したのかな?
わたし:
ことを再現してるような印象だったなって思うけど。でも、お母さんとしては嫌な感じがするかもなって。
母:
未だに。そんなびっくりしなくていいじゃん。みたいな感じ。私的にはね。
わたし:
うんうん。そうだね。
母:
あとね、茶碗を使っていたことで、後からちょっと思ったことがあったの。おじいちゃん(父親)が結核になった後、食器を煮沸消毒してた。そういうことと関係あるのかなって。おばあちゃん(母親)に聞いてみようと思いながら、まだ聞いてないんだけど。もしかしたらその辺りだったのかなって、ふと思ったの。
わたし:
うん。そっか。お茶碗のほうが煮沸できるもんね。そうか、なるほどね。
母:
で、それをそのまま、ずっと使ってたとか。煮沸消毒してたのはそんなに長い間ではない感じはするけども。
― 今日はここまで ―
夫婦喧嘩のきっかけなんて、些細なことなんだと思う。
そして、最初の内は、無条件の信頼やら愛やらで、モヤッとしても我慢することができる。
だけど、信頼や愛情を築いていくことが出来なければ、歯止めになるものがなくなる。
我慢が出来なくなり、些細なことが蓄積していき、今まで見えなかった本質があらわになる。
夫婦関係なんて、生涯騙し合いをするか、お互い真実をさらして信頼を積み重ねていくか、どちらかでしか続かないと思う。
結婚当初、愛を美化し、信頼に足る人物かどうかも知らないのに、盲目的に信頼してしまっている時点で詰んでる。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
いいなと思ったら応援しよう!
