【連載】家族会議『噛み合わない④』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議27回目#7|噛み合わない④
――この日の家族会議のここまでの話し合いは以下の通り。
わたし:
ごめん、なんか本当、本当に何なんだろう、まるで、まるでさ、考え方が違いすぎちゃってお父さんとわたし。
どうしても何か、お父さんのほとんどの言葉に納得ができない‥‥。「おかしいでしょ?」って思うことしかないっていう感じで。だからどうしても指摘になっちゃうんだよね、したくないんだけど。指摘みたいになっちゃう。その分お父さんも反発してきてくれていいんだけどさ。
反発っていうか、議論ができればいいんだけど、こういうことも。議論にならないしね。
父:
じゃ泉としてはあれ?ある一定期間置いてまた立ち上げて、やってみようかって感じかな。
わたし:
うーん、なんか、その方がいいのかな。やるんだったらお母さんと、これはお母さんと2人でやる?
母:
これ?
わたし:
うんこの話。これはこれで、止めていいものでもないとは思うから。
ひとまずさあ、お父さんは今、わたしが言ってることがわからないよね?わからないわけだよね?納得いかないっていうか、そういうことだよね?
父:
いや納得‥‥あ納得か。
わたし:
うん。
父:
検証したいところあるから納得してないんだろうな。
わたし:
うん。納得できないわけじゃん?その状態でできないよね?家族会議。
父:
いや、納得いかなくたってやってて、そのうち納得するってこともあんじゃないの?ないのかな。
――父の場合、一旦自分を省みることをじっくりやってみないと納得することもなさそうだから言っている。
それに、納得しよう、わかろうとしているというよりは、「あそこは違う」「ここは違う」と、人の意見をジャッジするばかりで理解しようとしないし。
わたし:
でも、お父さんどんどんどんどん言われて、もういっぱいいっぱいだから「一旦やめて」って言ったよね?っていう状態だよね?今。
父:
あの、やめようって言ったのは、いっぱいいっぱいになったからじゃなくって、「考えても出てこないから時間くれ」と。もう少し時間かけて考えたらば、何か出てくるのかなっていう感じなのよ。
わたし:
でもその間に、どんどんどんどん言われたくないみたいなことも言ってたよね?言ってなかったっけ?
どんどんどんどん、次へ次へ結論出されるから、ついていけない。みたいなさ、そんな雰囲気のこと言ってたよねお父さん。
――実際には、結論出したわけじゃないけど。
父:
いや、どんどんどんどん、この間は結論出されたから、ちょっとそれは検証してみなきゃいかんと。
要するに、親父がね、愛のある人間だとは思えないと。つまり、奥さんにも子供にも、愛というものを表現できなかったんじゃないかと。ということを言ってたんで、それ本当かなと。ちょっとそれ事例をもっと探して、本当に親父が愛のない人間なのかどうかっていうのを検証して、やっぱりそうだなと思ったら、「泉そうだったよ」と。その時間をくれっつってたのよ。
――祖父が愛のない人間かどうか、その結論を出すことが目的になっている時点でずれている。
愛があったのかなかったのか、というより、父親から父自身が愛を感じていたのかを聞いているのだし、その先で、「自分が子供に愛情をもって接してこなかった事実」に向き合わなければならない。
わたしが、祖父も「愛情のない人だったのではないか」と聞いたのは、そんな父への歩み寄りであって、「しかたなかった部分もあるんじゃないかな」と寄り添っているだけだ。
だけど父は、無意識に自分のしてきたことの事実と向き合うことを避けているから、親父の検証をしてみなければと、先に進むことを拒んでいるのだ。
わたし:
うーん‥‥
父:
いっぱいいっぱいよこされるから云々っていう話じゃないんだよ。
――父は、ここで自分がいっぱいいっぱいであることを認めたほうがいいのに‥‥。
わたし:
そうなんだ。
父:
本当に幼少期の頃のやつがないのよ。
わたし:
うん。だから聞きたいのはエピソードじゃなくて気持ちだからって言ってんだけど。
父:
エピソードがないから気持ちもわかんないし、何かないかなと思って探してんだよ。
――気持ちを感じてみてと言えば、エピソードがもっとないとわからないと言い、エピソードが出てこないからわからないという。ああ言えばこう言う。
わたしが言っていることを理解する気がまるでない。
わたし:
それでわたしがどんどんさ、「このときこういう気持ちだったんじゃない?」「ああいう気持ちだったんじゃない?」って聞いて、出てくるものを出してほしいなって思ってるんだけど、もうそこで「う゛ー」ってなっちゃったじゃん。
父:
う゛ーじゃなくて。なんちゅうんだろう、なーいーんだよ。
わたし:
だから「なーいーんだ」って拒否するじゃんって話なの。わたしからすれば。
父:
拒否‥‥
わたし:
やめちゃうんだよね、そこで。だからもういっぱいいっぱいなんだなっていう印象だったのよわたしは。
父:
あそう。
わたし:
そこで考えないんだなって。「ないもん」って感じで。だから
父:
いっぱいいっぱいじゃなくて、本当にないから困ったなと思って、本当考えてんだ俺。
母:
あの、エピソードじゃないって泉が言ってるんだから、例えば習字のことでも、もっと、もっと考える。そこでもっと、考えるということを言っているんだと思う。
父:
そうなんだけど、幼少期の頃期間があるんだから、いろんな事例があって、その事例ごとに気持ちというものがあるでしょうと。それを出しなさいって俺言ってると思ってるわけよ。
――そうじゃないと言っているのにしつこい。
人の話を聞かずに、自分の思いを話さずに、自分の頭の中だけで考えているから思い込みでどんどんズレていく。
母:
その事例を出しなさいって言ってると思ってんの?
父:
事例に気持ちがついてくるから
母:
うん、いくつかの事例があるわけじゃん?だから事例はとりあえずそれでいいんじゃない?今いくつだったか出て、習字以外にもいくつか出てると思うけど、それでいいと思うの、とりあえずは。
後からもっと出てきたらそれはそれだけど、今あるもので。それらを1個1個、もっと深く深く、思い出してとか。
父:
だから、時間くれって言ったのは、あなたには言ってんだけど、もうこれしかねえならばここで結論出しちゃおうと。
母:
結論?
父:
親父がね、愛のない人間かどうなのかっていう結論を。もし愛のない人間だっていうのを俺が納得すれば、泉が言うように、そういうことなんだよ。俺がそういう親父に育てられたから、俺にもそういうところが大いにあって、今現在があるんだと。いう結論にいたろうと思ってるわけ。
――べつに祖父が愛のないひどい人間だったと結論付けて欲しいわけじゃない。そうだとも思っていない。
父が、父親からの愛を感じられなくて寂しさを抱えていたけど、それを認めずにいたから、結果的に人の気持ちがわからなくなったんじゃないかと、そういう話である。
母:
そのいくつかのあれで、お義父さんが愛のない人かどうかを、それぞれに考えてみようと思ってるわけ?
父:
そう。一番のキーポイントだそこ。俺は論理的に納得したのよ泉の言うことが。
母:
愛のないかどうかを‥‥
父:
親父が愛のない人間だから、俺は愛のない人間に育てられたから、そういう行動、今があるんじゃないのっていうことを泉がこないだ言ってて、論理的には納得してんのよ。ただし本当にそうか?っていうところで、納得はしてない。それを確かめたかったの。
母:
それを確かめるのも、一緒にやればいいんじゃないかなあ?もしそれを確かめたかったら。もしじゃないな、確かめるには。
それは1人でやってみたいよってこと?
父:
1人でっていうよりも、さっきも泉も言ったけども、ある程度自分でやって出さなかったらさ、いちいち細かいところから出したってしゃーねーじゃない。だから1回整理して、自分はここまでやったというものは出しますよと。
ほんで、やっぱり親父は愛のない人間。あなたが今日言った愛の薄い人間だったよと。いう結論になるのかならないのかを確かめたいの。
――さっきは、「あらゆる側面から考えるなんて、そんなことやるのは大変だ。もっと気持ちのコミュニケーションした方がいい。」と父は言った。今度は都合よく、わたしの話を使ってくる。
それに、あらゆる側面から考えつくした方がいいと言ったのは、傷つけた相手にそれ以上痛みを背負わせないため。だから家族会議の中で、あらゆる側面を一緒に考えてみようと提案していたのである。
母:
それこそ、コミュニケーションっていうのは、そこの細かいところをお父さん1人でやるって言ってるけど、その1個1個を話ししていって、こうだねってなるならなる。
父:
うんあの、少しは俺にやらせてくれよここ。事例をポンと出して、「ここの気持ちはどうなの?ああなの?こうなの?」って、そうじゃなくて、少し俺にやらさして。このときの気持ちはこうなんだと。
母:
自分で何かまとめる。
父:
うん。まとめますよ。だからそれのまとめるっていうのは、親父の愛のない人なのかっていうのが一つと、鹿島のときの気持ち、この二つについてまとめたいと。だから時間をくださいと。
――父の場合はとくに、自分の都合のいいようにしか考えないから、ひとりでまとめるのは危険でしかない。
わたし:
なんかちょっと、わたしも勘違いしてたなって思ったけど、お父さんはまとめたいのね。
父:
そう。
わたし:
うん。ただ、そのまとめは別に求めてるものじゃないなって感じだったけど。今聞いてて。だから
父:
いや、俺が納得したいんだよそこ。
わたし:
だから、自分の好きにやれば?って感じかな。とりあえず。お父さんが好きにやる。
とにかくさ、お父さんはお父さんで納得するようにやってみればいいわけなんだけど、そこにコミュニケーションはないわけで、とにかくわたしが求めてることには何も答えてくれないなっていう感じ。
父:
泉からすればね。
わたし:
うん。だから、家族会議やっていったところで。みたいな気持ちになっているのがわたしって感じかな。
なんかそうだね、求めてることはことごとく拒否されてしまう。
父:
なーんか露骨だな。求めているのはことごとく拒否。そんなつもりはないんだけどもそうなってるのね。
――「そんなつもりはない」も父の常套句だ。そうやって、「受け取り方が悪い」と相手に責任を押し付ける。
それに、「露骨だな」と言ってくる時点で、わたしがただ暴言を吐いているとしか思ってないのだろう。ほんとうにそうで、はっきり言わないと分からないから、言うしかなくて言っているのに。
― 今日はここまで ―
父との会話が噛み合うことはない。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!